グリーンブック

何気なく時間帯が合ったので観た映画です。時は1962年のアメリカの実話。リンカーンが奴隷解放宣言を発したのが1862年ですから、100年後の出来事です。1962年においてもアメリカ南部では人種差別が色濃く残っていていました。北部で成功した黒人ピアニストのドクターシャーリーが南部においてコンサートの旅に出かけます。そこで用心棒兼ドライバーとして選考の末選ばれたのは、イタリア系白人のトニーリップ。トニーは喧嘩っぱやくて口より先に腕が出るタイプ。それに反してドクターシャーリーは感情をあまり外に出さず冷静沈着なタイプ。

まずびっくりしたのは、奴隷解放宣言から100年後でも白人しか泊まれないホテルがあったり、黒人が入れないレストランや、トイレまでもが白人用と黒人用(外)で違ったり、スーツを買おうと試着しようとしたら買ってくれるならサイズ合わせするが試着だけなら黒人はお断りだったり、どんなに名声や成功を手に入れたドクターシャリーですら差別に合うのです。

そんなトニーも黒人に対して当初差別的感情を有してましたが、黒人だからというだけで差別に合うドクターシャーリーを見ているうちに少しずつ感情が変わってきます。ある時白人の警察に呼び止められ何でこんな夜に車で移動しているのだと聞かれます。警官が言うには黒人は暗くなってから出歩いては行けない。なぜあいつ(黒人)の肩を持つ?さてはイタコ―(白人でもイタリア人)だからだな。と言われカッとして警官を殴ってしまいます。

その時もトニーだけでなくドクターも牢屋に入れられます。その時ドクターシャリーがトニーに言います「なぜ君は、ちょっとしたことを言われるだけで暴力をふるうのだ。私にはそんなことは日常茶飯事。いちいち暴力をふるっていたら生活できない。暴力は負けだ。暴力は敗北を意味する。今日は君のせいで敗北した・・・」深いです。また、車の中で二人が言い争う場面でもトニーがどちらかというと僕の方が黒人だ。君はお城の上で生活している。僕の方が黒人に近いと・・・ドクターシャリーは言います。君が言うように僕は黒人の中では黒人として扱われない。みんな白い目で僕を見る。だからといって白人の中では僕は黒人なんだ。だから僕はどこにも属さないと寂しいことを口にします。とても良い映画。もう一度ちゃんと見たい映画でした。