悼む人

不思議な映画でした。静人は何年か前から会社を辞め、その時の資金を取り崩しながら全国を旅しています。旅の目的は故人を悼むため・・・新聞などで事故死した人や殺害された人などを調べ現場に行き静人の独特な儀式で故人を悼むのです。できるだけ故人の情報を得ようと時には故人の家族などにも情報を聞きだし、声に出して悼むのです。誰に愛されたのか。誰を愛していたのか。誰かから感謝をされていたのか。など、そして最後に私が生きている限りあなたの生きている姿を覚えておきます。と言います。

印象に残ったのは、いじめで殺された中学生の家族とお話しした時、その家族は新聞記事はデタラメだと憤ります。加害者は警察官僚の子供で事実がすり替わっていると・・・家族は言います。私たちの子供を悼む気持ちがあるなら、一緒に加害者を恨んでくださいと・・・静人は言います。「それはできません。そうすると、故人への想いが薄くなり、加害者への想いだけが大きくなります。私は故人が生きていた姿を覚えておきたいのです。」

静人の姿は時として不審者にも思われ、警察から事情聴取をされることもしばしばで、家族にも連絡が入ったりします。静人の母は、息子の行動は理解できているわけではないけれど、それでも誰にも迷惑をかけているわけではないし、自分だけは、家族だけは味方になっていこうと決意しています。末期がんに侵されても静人の行動を尊重しています。何という母の愛の偉大さでしょう。素敵な家族の物語でもありました。