彼女の家計簿

主人公のシングルマザーの元に祖母のものと思われる家計簿が送られてきます。家計簿といっても米〇〇銭などと書かれている右側にその日に起こった一言日記のようなものが記載されてあります。それを読むと昭和初期の時代背景が分かったり母と祖母との関係なども次第に分かっています。女性三世代の生き様などが描かれています。また、縦の繋がりだけでなく、女性を助けるNPO法人の代表を通じて横の繋がりである様々な女性の生き方というのが垣間見れます。

この本を読んで昭和初期の女性は自宅以外で働くという事が一般的でなかったという事。祖母は祖父が戦争から帰ってきても職がなかったため、小学校の教師として働き続けましたが、よく考えてみるとお金の為ではなく、職を通して生き甲斐のようなものを感じています。祖母が駆け落ちしようとした男性に最後に言われた一言「僕だったら君を働かせたりしない。一生守る」この言葉で駆け落ちを止めたのです。当時駆け落ちしようとしていた男性は自分の事を理解していると思っていましたが、自分は働きたくて働いているのであって無理して働いているわけではなかったというのが理解されていませんでした。当時は女性は守るもので家に居るものだったのです。

祖母はいつか女性が自分らしく働きたいなら働ける世の中が来てほしいという希望を持って生きていました。また、残してきた子供への愛情を持ったまま亡くなっています。何とも切ない気持ちになる小説でした。現在では女性が様々な職業について働いています。働く女性も珍しくなくなりました。でもジェンダーギャップ指数などを見ると日本での女性の地位は低く、諸外国に比べるとまだまだです。この小説に出てくる様々な立場の女性を見てどう生きるのが良いか色々考える機会ができました。多くの女性に読んでもらいたい本です。