レ・ミゼラブル

ミュージカル仕立ての映画です。ミュージカル仕立ての映画は初めて観ましたが、何しろ分かりやすい。表情や微妙なしぐさで物事を判断する要素は全くなく、かなりオーバー目な表現の歌で展開されます。テンポも早く通常の映画でしたら、3部作に分かれるくらいの内容を2時間半位で終わらせます。逃げているときにいきなり大きな声で歌いだした時には、思わず「おいおい、見つかっちゃうよ」と突っ込みを入れたくなりました。細かい微妙な表現がない分、分かりやすくかつ、ダイナミックです。

キリスト教を意識した考え方もかなり取り入れられていて、善か悪かもはっきりしています。世の中実際には善か悪かはっきりしないことも多いのに、ここでは善は善、悪は悪です。善の中、悪の中に大小はなく、悪であれば少しの悪も大きな悪も悪というカテゴリーに入れられます。例えば、妹の子供が飢えで死にそうだったのでパンを盗んだ主人公のジャンバルジャンは、理由はどうであれパンを盗んだという悪のため19年間も牢獄に入れられます。

内容を少しだけお話しすると19年間牢獄に入っていたジャンバルジャンは服役後、司教の深い慈悲にふれ改心する。徳を積み市長になるがフォンティーヌという自分の工場で働く女性を間接的に解雇してしまい彼女の死間際に彼女の一人娘であるコゼットを自分が育てると約束します。コゼットを引き取り自分の本当の子供の様に育てます。コゼットもジャンバルジャンを本当の父のように慕います。コゼットが大人になり、一人の青年に恋し、その青年もコゼットを愛していると知ったジャンバルジャンは、本当の父のように愛娘を手離す寂しさを覚えますが、それでもコゼットの意思を尊重し、青年が革命で命を落としそうになったとき、命がけで青年を助けます。

ジャンバルジャンがコゼットに注いだ愛情は男女の愛情ではなく、もっと大きな無償の愛でした。コゼットの幸せだけを考え行動します。これこそ究極の愛です。

この映画は観たときに号泣したという人が続出した映画ですが、私は観ているときは全く泣けませんでした。多分展開が早すぎてかつ、大胆すぎて圧倒されていたのだと思います。でも、観終った後、ジワジワと良さを実感するそんな映画でした。