本日は大安なり


ある結婚式場で大安吉日の日に4つの結婚式が行われます。その4つのカップルがどう結婚することになったのか。そして結婚式の当日の様子が描かれています。

1組のカップルは、双子の女性が男性の真実の愛を確かめるために交換して花嫁になったらその男性は気が付くか?とか・・・
もう1組のカップルは、結婚しているのに結婚していないと言って女性と付き合っていた男性があれよあれよという間にその女性と結婚式を挙げることになってしまい。男性が結婚式を中止にさせるためにトラブルを起こそうとするとか・・・
ほかの1組のカップルは、小さな甥が大好きなおねえちゃんの結婚相手に不信感を持ち心配をするとか・・・
そして最後の1組のカップルは、年の差結婚の花嫁のわがままぶりに振り回されながらも最後には感謝をされるとか・・・

それぞれのカップルもそれは結婚に至るまで様々な葛藤や試練を乗り越え、または乗り越えずに結婚式を迎えます。4つのカップルがあれば4つの物語があり人生それぞれだなぁ~と他人事で覗き見するようなお話しでした。主人公はウェディングプランナーです。ウェディングプランナーの仕事に対する誇りみたいなものも垣間見ることができました。

ホテル・モーリス

かつて華やかで高級リゾートとして栄えたホテル・モーリス・・・支配人の自殺という事件が起こってからそのホテルは以前の華やかさとは裏腹に上得意様はギャングであとはわずかな観光客だけ・・・それでもホテルを復興させようと赴任された新支配人とその仲間たちによって奮闘されるホテル内のトラブルなどを解決していくお話です。

本を読んで思ったのは、木曜日夜9時位のドラマのような物語でした。特に強く引かれるものでもないけれど、回を進めるうちについ気になって見てしまうドラマのよう。1回1回起こるホテル内の事件は、60分ドラマにありがちだし、短編小説の積み重ねのような事件も広い概念でみると長い歴史も見え隠れして家族の在り方や人々の関係性も描かれています。派手で華やかな演出は想像しやすく頭の中がおもちゃ箱のようになりました。読み進めるうちにどんどん気になって読んでしまう不思議な本でした。

カッコウの卵は誰のもの

カッコウという鳥は知っていますよね?そう他の種類の鳥の巣に自分の卵を産み他の鳥に雛を育てさせる鳥です。この場合、卵は誰のものなのでしょうか?卵を産んだカッコウ?育てた鳥?それとも、誰のものでもなく雛そのものの意志?

遺伝ってありますね。例えば素晴らしい身体能力を持った親の遺伝子を継いだ子供がまた、素晴らしい身体能力を持つというもの。もともと、身体能力が高い遺伝子を調べることが出来て、子供のうちからその子にあった教育を受けさせることがあったら、日本からもオリンピックで金メダルを取るような選手が沢山排出できるのでは・・・そんな志のもと遺伝子研究をしている会社があります。すばらしい遺伝子を持った子供を見つけて早期教育をするのです。さて、結果は・・・確かに素晴らしい遺伝子を持った子供はそこそこの記録を出します。でも、それだけじゃダメなのです。要はそれを上回る本人の強い意志と志がなければ、世界レベルでは通用しません。むしろ遺伝子よりもそれを上回る努力や意志の方がよっぽど重要です。そんなことを教えてくれる本です。

また、親子の信頼関係とか愛情ってどんな風に蓄積されるのでしょう。例えば、生まれてからすぐに離れ離れになった親子でもずっと心に残って気にかけている場合もあります。でも、例え血が繋がっていなくとも毎日親子として過ごしているうちに本物の親子以上の愛情を持ち合わせることもありうるのです。この本は、ミステリーながら様々な角度から様々な想い、しかも何種類もの課題を与える本でした。しかも、結論は押し付けないので読む人によって感想は変わると思います。考えさせられる本でした。

不格好経営


マッキンゼーでコンサルタントをしていた著者がある日同じマッキンゼーで働く2人を誘って起業します。散々コンサルタントをして経営とは何かと知っていたはずなのに4年連続で赤字を出します。その後赤字脱却を図り事業拡大をするまで、様々な困難を乗り越え会社を大きくする様子を書いた本です。

女に学問は必要ないという厳格な父のいる家に育ちながらも家を出たいという一心で東京の大学に行き、マッキンゼーに就職するも、仕事もうまくいかず、逃げ出すようにアメリカに留学しMBAを取得します。日本に戻りマッキンゼーに再就職し、コンサルタントとしての腕を上げマッキンゼーのパートナーにまで上り詰めます。ある日突然、起業という熱病にかかりマッキンゼーを辞めて、DeNAを立ち上げます。

それからの人生は波乱万丈。まさに一難去ってまた一難という仕事を乗り越えながら、会社を大きくしていきます。女性起業家が書いた本を読んだのは初めてでしたが、率直な感想としては、起業というのは女性も男性も関係ないなと思いました。ただ、びっくりしたのは、判断が潔いという点です。起業をした時も、社長を辞める時も何しろ潔い。その時、自分にとって何が一番大切なのか充分把握し、そのために自分の時間を使うというのが男性にない女性らしさというか潔さなような気がします。

女性で起業を目指す人には是非読んでもらいたい本です。著者は様々な困難が目の前にあらわれたとき、さぁステージに上がったと思って乗り越えたと言います。困難を避けるのではなく、立ち向かって乗り越えていく姿に不覚ながらも泣きそうになりました。起業を目指している人が読む本として、お勧めは、この本と2015.1.9のブログに感想を書いた”生き方”です。”生き方”が聖書なら”不格好経営”は指南書です。両方とも是非読んでおきたい本です。

般若心経入門


般若心経(はんにゃしんぎょう)って知っていますか?日本で一番有名なお経なので名前くらいは聞いたことがあると思います。今年の4月にもダライ・ラマ14世が来日し、般若心経の法話をされて諸外国からも多くの人が訪れたという、世界的にも有名な経典です。

ちょっと興味があって般若心経を唱えてみたものの意味が全く分かりません。そこでこの本を読んでみたのです。本当はブログに書くつもりはありませんでしたが、ちょっと紹介したくなったので書いています。

般若心経の神髄に触れるととても心が楽になります。意味が分かれば分かるほど、この心経の意味深さを知り暗記したくなり、ついに暗記してしまいました(笑)。長文の暗記は税理士試験以来でしたが、なんか懐かしかったです。まぁ税理士試験の暗記の方が意味は分かりますが量は多いですけどね。

山女日記


この本は字の如く、山に登る女性の物語で短編小説の集合体でありながら、短編どおしの主人公が代わりながら実は繋がっている短編小説です。ある女性は結婚に迷い、ある女性は夫から離婚を言い渡され、またある女性は彼と別れ、ある女性は付き合っている男性も居ず一生独身なのかと思う、ある女性は登山で結婚を決める。周りの環境や年齢などが全然違う女性がそれぞれ何かに迷い自己を見つめなおしたい時に山に登っています。共通点は自己を見つめるという点です。

皆、なんかモヤモヤした気持ちを抱え山に登りますが、山を登り終える頃には、気分もすっきりし自分の生き方の方向性が見えてきます。それほど、山は心を浄化し自己を見つめなおす自然の偉大さを持っているのでしょう。

また、山に登る際の便利グッツなどのこともあり為になります。例えば山でコーヒーを湧かす際、砂糖とミルクを持っていくとかさばるしゴミも出ます。その代用品となるのが練乳で、練乳を入れると砂糖とミルクを両方入れたような感じになるみたいです。ゴミが出ないのがいいそうです。

私は、登山と言えば屋久島と高尾山くらいしかありませんが、山に登りたくなる本でした。

医療法人の法務と税務【第三版】


手前味噌ですみません。私も著者になっている”医療法人の法務と税務”の第三版が発売されました。前回同様、持ち運びし辛く、重い・高い・難しいと3拍子揃った本ですが、専門家中心に売れています。医療法人は株式会社と違い医療法という法律を遵守しなければなりません。また、税務も複雑です。それを医療法および税法の改正も踏まえて解説しています。

第一版発売時から医療法も税法もかなり変わりました。月日の移り変わりを私自身も感じています。優秀な先生たちと一緒にあーでもない、こーでもない、と議論しながら本を仕上げていく過程は私にとっても大変有意義な時間です。

ご興味あればご購入して下さい。無理して買わなくてもいいです。なんせ、重くて高くて難しいですから(笑)第一版から表紙の絵が毎回変わっていますが、私的にはどんどん好みの絵になっています。

女のいない男たち


本のタイトルを見た時、男性目線でみた一人でいる選択みたいなものが書かれた本かなと思いました。でも、中身はちょっと違いました。この本は短編小説の詰め合わせの小説です。短編小説が6編詰まっています。本のタイトルと同じタイトルの短編が最後の1つで書き下ろしで1編ありますが、その他の5編は雑誌などに掲載されたものです。全ての小説に共通していたことは、主人公の男性は恋人や妻がいましたが、何らかの形、それは病気や自殺のような死であったり、別れであったりしますが、恋人や妻をある日突然失うというものでした。

そして、全てのパターンに共通していたことは、女性に本命(主人公が本命だとは限りませんが)以外に恋人や夫がいるのです。私は女性として、とても違和感を覚えました。この小説の男性の気持ちに共感できる部分は多少ありましたが、ほとんどの登場人物の女性に共感を覚えませんでした。途中から、もしかして私は性別は女だが、精神は男なのかと思ってしまったほどでした。

遺伝子的に見て男は浮気するもの。女は1つの愛を大事に育んでいくもの。と思っていましたが、どうやらこの本では真逆な感じです。要するに遺伝子を超えた何かが人間には存在するんだと思いました。男も女も浮気者は浮気者だし、色々な人が居て、決めつけはいけない。と改めて実感した本でした。

シャーロック・ホームズの思考術


シャーロック・ホームズはみんなが知っていると思います。私はシャーロック・ホームズシリーズの映画も良く観ています。ホームズのイメージとしては、日本版で言うと、古畑任三郎や相棒シリーズの右京さんや名探偵コナンといったところでしょう。通常の人には気が付かないような些細なことから事件を解決するのです。

通常人は物を見ていても、それはただ見ているだけで、脳の中の記憶としてはあまり残っていません。ホームズは何かを見るとき、見るのではなく観察するのです。見るのと観察するのでは注意力という観点から雲泥の差があります。通常の人の行動・観察を〈ワトスン・システム〉と呼び、ホームズの行動・観察を〈ホームズ・システム〉と呼んで両者の違いをシャーロック・ホームズの過去の出典の場面に照らし合わせて、考察しています。凡人と天才の物の見方みたいなものが分かって面白かったです。

注意力が違うんだろうなぁということは薄々気が付いていましたが参考になったのは、いわゆる第一印象を敢えて除外して物を考えるという考え方です。多かれ少なかれ人は第一印象というものを無意識のうちに、脳で判別していて、第一印象が良い。もしくは、話してみて良い印象を持った人というのは、そうでない人に比べ同じ行為や行動をしても高評価なのです。それは、そうですね。好意を持つ人から頻繁にメールがあれば嬉しいですし、そうでない場合、迷惑だと感じることもあると思います。当たり前の事ですが、ホームズはその点を理解しながらも完全に除外して物を見るのです。やはり、凡人には出来ない域に達しています。

友人などと過去の話をしたりすると、自分が覚えていることと友人が覚えていることが違っていたりします。それは自分の感じる印象と友人が感じる印象が違うからで、同じものを見ていても違った印象を受けるため記憶としてもその感情を加味して記憶として残るのです。ですから、同じ出来事でも同じ場所に居ても、人の記憶は個々でバラバラになります。時には嘘をついている訳ではないのですが、記憶が脳によってすり替えられる事実も起こってくるのです。面白い観点を解説してもらった本でした。

虚ろな十字架


皆さんは死刑についてどう考えますか?
人を殺したら死刑にすべきですか?
それとも死刑は廃止すべきと考えますか?

「人を殺すことは法律で禁止されている。死刑という制度は国家が人を殺すということだ。だが、国家を運営しているのは人である。だから死刑制度は矛盾している。しかも、冤罪で人を死刑にしてしまう可能性もある。」というとそうかもしれない。と思います。しかし「遺族にとって、もし犯人が生きていれば、なぜ生きているのか?生きる権利が与えられているのか?という疑問が遺族たちの心を蝕む。それは遺族にとって死ぬほど苦しいのだ。しかも、その犯人が出所後に再び殺人を犯したら、あの時死刑にしておけば良かったということにならないだろうか。」というとそれも、そうかもしれない。と思いませんか?死刑制度を完全に廃止してしまったら、人を何人も殺しても自分は死なないからと猟奇的な殺人犯が現れるかもしれません。

ある夫婦の一人娘が留守中に入った強盗に殺されます。その強盗は過去に殺人を犯し仮出所中にお金がなくて強盗に入り、そこにたまたま一人で留守番をしていた子供に出くわし、顔を見られたという理由で殺しました。夫婦は極刑を望みます。もし、かなわなかったら抗議の為二人で焼身自殺をするつもりでした。裁判の結果は死刑です。夫婦は自殺せずにすみました。でも、お互いの顔を見るのが辛くなり離婚しました。

それから数年経ち妻が殺されました。老人が出頭してきました。。なぜ、老人は妻を殺したのか?なにかしっくりこない殺人です。妻と老人は面識すらありません。それから、謎が徐々に明らかになってきます。ここからはネタバレすると面白くないのでお話ししませんが・・・

同じ殺人を犯しても、捕まっても何も反省しない虚ろな十字架を背負った人もいれば、捕まらなかったとしてもその事で重い十字架を背負って生きている人も居ます。全体の2/3についてが、死刑という社会問題に焦点を当てていて、得意のミステリーは最後残りの1/3くらいで明らかになります。死刑という重いテーマに焦点を当てたことで単なるミステリーではなく、様々な問題を提起する本でした。