診療報酬の時効

診療報酬の時効をご存じですか?「3年」です。
弁護士の報酬の時効は2年、飲み屋のツケは1年、その他の債権は10年(税理士報酬や公認会計士報酬なども)ですが、これを来年改正する動きがあります。実現すれば120年ぶりの大改正です。原則10年の時効が5年に統一されそうです。診療報酬の時効は今まで通り3年です。

医療法人は脳外科や産婦人科を中心に医療未収金が溜まりやすい診療科目があります。診療報酬の時効は一般債権よりさらに短いので必ず管理するとともに請求することを忘れないよう注意することが大事です。しばらく請求していなくて久々に請求したら、当人は亡くなっていたりして取りっぱぐれとなるケースも多いので医療未収金の管理は重要です。

医療系税制改正要望

平成27年度の税制改正で厚生労働省と日本医師会から提出された要望について、お話ししたいと思います。

厚生労働省
①医療器械(高額医療機器や医療安全機器)を購入した場合の特別償却制度の延長
②非営利ホールディングカンパニー型医療法人制度(地域連携型医療法人制度)の創設等に税制措置の検討
③消費税率引上げに伴う医療に係る消費税課税のあり方(医療法人損税問題)の検討
④社会医療法人認定制度の見直しおよび非課税措置の継続
⑤社会保険診療報酬の事業税非課税の存続
⑥医療法人の社会保険診療報酬以外部分に係る軽減措置の存続
⑦サービス付高齢者住宅の供給促進税制の延長

日本医師会
①社会保診療報酬制度等に対する消費税の非課税制度、医療保険制度における補填の仕組み
②社会保険診療報酬等に対する事業税非課税および事業税の特別法人としての軽減税率の存続
③医療承継時の相続税・贈与税制度の改善
④医療機関が取得した耐震構造建物、防災構造施設等に係る特例措置創設
⑤医療法人の法人税率引下げ、特定医療法人の法人税非課税化の実施

共通しているとことは、消費税損税問題の解決、社会保険診療の事業税非課税・軽減税率の存続、減価償却資産の優遇といったところです。どこまで認められるか注目ですね。

認定医療法人移行手引き

厚生労働省より認定医療法人への移行のための手引書が発表されました。名称は[「持分なし医療法人」への移行に関する手引書]です。

持分なし手引き.pdf
44ページもあるので上記添付しておきます。この手引書に従って処理すれば認定医療法人に移行して最終形として持分なし医療法人に移行することになります。
「移行計画認定申請書(附則様式第1)」「移行計画(附則様式第2)」「出資者名簿(附則様式第3)」「事務担当者連絡先(別紙1)」「移行計画変更認定申請書(附則様式第4)」「実施状況報告書(附則様式第5)」「出資持分の状況報告書(附則様式第6)」「定款例」「出資持分の放棄申出書(附則様式第7)」などの様式および記載例も載っています。そんなに難しい感じではありません。41ページに質疑応答集が載っていますが、ここは熟読しておくことをお勧めします。ただ、Q4,Q5については、何となく同族1/3要件を満たせば医療法人のみなし贈与が課税されないような誤解を与えるQ&Aだと思います。同族1/3要件を満たしても規模要件を満たさなければ、医療法人に対してみなし贈与税はかかりますので要注意です。

非営利ホールディングカンパニー(統括医療法人)

先日9月10日に昨年末から議論されていた「医療法人の事業展開等に関する検討会」の第6回目が行われました。当初展開については2014.1.7の「株式会社参入のおそれ」に添付されている新聞記事をお読みください。

9月10日の会議でやはり、出資に応じて議決権を付すというのは、株式会社と同様になり医療法人にはなじまないという観点から否決されました。いままで通り1人1票の議決権です。ただ、いままでは社員は自然人でしたが、今後は非営利ホールディングカンパニーの傘下にある、医療法人や社会福祉法人などの法人に社員格を与え1票の議決権にするようです。

また、今までは医療法人は金銭の貸付業務を行ってはならなかったのですが、資金の貸付を認め、非営利ホールでキングカンパニー間での資金貸し付けについては、医療法人が行ってよい付帯業務として認めていくようです。

また、医療法人間の合併というスキームは以前からありましたが、分割というものはなかったのが、今後は分割も認めていくようです。 その点の具体的スキームは10月上旬、11月上旬に行われる第7回・第8回の検討会で詰めていくようです。

第5次医療法改正は大改正でしたが、第6次医療法改正も大改正になりそうです。

医療法人制度セミナー



8月5日と19日にMBA intensive2014という講座のセミナー講師をさせていただきました。5日は「医療法人制度と医療法の沿革」というテーマで2時間、19日は「医療業界における株式会社参入の是非」というテーマで2時間、5日の内容は医療法人と株式会社の違いなどを考慮した医療法人制度、医療法の沿革、医療法人の経営承継などのお話しをしました。19日は医療法人の消費税損税問題、医療業界における株式会社参入の是非などをディスカッションを含めお話ししました。

私は医療法にどっぷりと浸かって医療法人にもどっぷり使っているので制度を知りすぎて、なかなかそれ(例えば制度の規制や実務への落とし込みを考えると思考が制限されるということ)を超えた発想ができないのですが、多くのアグレッシブな意見や考えが聞けて楽しめました。例えば、消費税10%時に医療についての消費税はどうあるべきか。というディスカッションでは、幼児医療は非課税のままで老人医療などは10%消費税をかけてもいいのではないか。とか、3割窓口負担だけに消費税をかけるとか、へき地医療がなくならないように地域の医療には優遇を与えるとか、消費税ではなく法人税などで医療法人の損税を解決するとか、そもそも損なのか、など面白い意見が聞けました。

どうしても実務家は実務に落とし込むとこれは大変な事になるぞという制限が無意識のうちに働き思考に知らないうちに制限がかけられてしまうのだと思いました。私にとっても有意義なセミナーでした。

認定医療法人へのプロセス

2014.3.31の医療法人カテゴリーのブログは「厚生労働省から発表されました。」です。そして2014.4.1の医療法人のカテゴリーのブログは「認定医療法人」でした。

認定医療法人制度は平成26年度の税制改正に盛り込まれた医療法人版事業承継税制です。平成21年度に中小企業の事業承継税制が創設されました。簡単にいうと同族会社である中小企業の株(出資金)に相続税をかけてしまうと事業承継が難しくなるのでそのまま事業を引きついてくれれば80%引きで評価しますよという制度です。その時、医療法人も対象になるのか。と注目されましたが、医療法人は会社法上の法人でないため対象外でした。

平成26年度に医療法人のための事業承継税制が創設されましたが、その内容は中小企業の事業承継税制と全く違う内容になっています。同族のまま事業承継をすると、医療法人が相続人に代り相続税相当額のみなし贈与税を支払うことになるため、一部の医療法人からは、80%引きでいいから、中小企業の事業承継税制に組み入れて欲しかったという意見が出ています。

それは置いておいて、施行日はH26.10.1です。まず、社員総会で持分の定めのない社団への移行を決議しなければいけません。これは財産権の侵害にもあたるため1/2以上とか2/3以上ではなく、全員の同意が必要です。
次に移行計画書の作成をします。移行計画書には、持分の定めのない法人のうち、どの形態の法人に移行するのか。3年以内の移行の期限などを記載します。そして、3年以内に移行を行う旨の定款変更を行います。

次に厚生労働省の認定を受けます。認定を受けた日から3年以内にいずれかの形態の持分の定めのない法人に移行して終了です。

厚生労働省としては、この3年間で現在最も多い持分の定めのある医療法人から持分の定めのない医療法人への移行を促進していますが、税務という現実的なハードルはかなり高いです。さて、どうなることやら・・・
参考:厚生労働省持分なしへの移行.pdf

医療法人推移

医療法人推移.pdf
厚生労働省から平成26年3月31日時点での医療法人推移が発表になりました。
総数は49,889法人となり過去最多です。50,000法人に迫る勢いで、昭和45年からの44年間で約20倍になりました。日本の殆どの産業は成熟期に入り淘汰され法人は減っています。それなのに医療法人は増え続けています。

種類別に見ますと、持分あり社団医療法人は平成19年の医療法改正で新たな設立が認められなくなったため、平成19年の駆け込み設立時の43,638法人をピークに減っていて、現在41,476法人です。それでも全体の83%を占めています。それに比し、新たな設立形態である持分なし社団医療法人は増え続け、平成45年の約100倍の8,022法人になりました。その他に平成19年医療法改正で特別医療法人制度が廃止になり、現在0法人、それに比し、平成19年医療法改正で新たな設立形態である社会医療法人が215法人と増えています。

平成19年を境に法人形態も少しずつ移行していますね。

消費税と診療報酬改定について

医療業のほとんどの収入である診療報酬には消費税は課税されません。ですが、薬や診療材料については、仕入れる時に消費税がかかります。つまり、医療法人から見て薬などは購入時に消費税を払っているのに、売却時には消費税をもらえないのです。ですから、医療法人は消費税が少し上がるだけで経営が圧迫します。2014年4月から消費税が5%から8%に上がりました。その分、医療法人の経営は圧迫されます。それについて厚生労働省は消費税分は診療報酬に上乗せしたということです。詳しくは以下をご覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/140401.pdf

これについては、充分でないという指摘もありますが、その議論は置いておいて、10%になったとき、どうなるのでしょうか?

診療報酬の財源は限られています。これ以上、個人から徴収する健康保険料を増やすのは問題です。今、食料品をはじめ複数税率を使う案も新聞などに書かれていますが、これには専門家であるほど反対します。例えば食料品だけ8%のまま据え置くとした場合、どこまでを食料品とするのかということです。野菜をスーパーで買ったら8%だけど、レストランで野菜(サラダ)を食べたら10%、じゃ、お惣菜は?キャビアは?などと線引きが難しいのです。これは事務手数が煩雑になるだけでなく、様々なトラブルが考えられます。

診療報酬についてもそうです。今までは非課税でした。10%になるときそのまま非課税でいくと医療法人がつぶれる法人も現る。じゃあ、診療報酬を今回のようにあげるとすると、財源はどうなるのか?個人の保険料を上げるのか?医療法人が泣き寝入りか?非課税のまま、医療法人を救う措置が施されるのか?問題は山積みです。

消費税が8%に上がったばかりなのに、10%になる時にどうなるのかが気になって仕方がない今日この頃です。

認定医療法人

認定医療法人.pdf

平成26年度税制改正で医療法人についても事業承継税制が使えることになりました。その要件として認定医療法人として厚生労働省の認定を取ることでしたが、そちらが発表になりました。詳しくは上記のPDFをご覧ください。

認定の条件はそれほど厳しくなく、現在の持分の定めのある社団医療法人(専門用語では、経過措置型医療法人といいます)が、持分の定めのない社団医療法人に移行すればよく、移行計画を作成し、厚生労働大臣に提出すればよいということです。ただし、移行計画に記載する移行の期限までに持分の定めのない医療法人にならなかったときは、認定が取り消されるようです。また、1度取り消されたら再度認定を受けることができないようです。

前月のカテゴリー医療法人のブログ(2014.3.12「厚生労働省から発表されました」を参照)でも言いましたが、厚生労働省は認定はしてもみなし贈与の担保はしないということです。認定医療法人のハードルは高くありませんが、みなし贈与の検討は各自の医療法人でする必要がありますね。

厚生労働省から発表されました。

参考HP→http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000035428.pdf
持分ありから持分なしへの課税関係.pdf

医療法人でも事業承継税制が認められるようになったことは平成25年12月のブログ(2013.12.18 平成26年度税制改正大綱 参照)でお伝えして、認定医療法人の要件は厚生労働省から別途発表になるという旨をお話しました。その法律はまだ作られていませんが、とりあえず厚生労働省から持分なし医療法人への移行に関する課税関係についてのQ&Aが発表になりました。実物は上記pdfになります。これを読みますと、相続税法66条4項(2010.3.13 相続税法66条4項の考え方 ブログ参照)および相続税法施行令33条3項(2010.4.12 相続税施行規則33条3項 ブログ参照)は、認定要件とは関係なくなりそうです。

つまり、認定医療法人の認定要件は厚生労働省が決めるけど、認定要件が通ったとしても、税務までは面倒みませんよ。それは独自で考えてね。というものです。それじゃ不親切なのでとりあえず、課税についてのQ&Aは出しておくね。と言って出したものが上記です。

これで認定要件は厳しくなさそうだと予測できます。しかし、税務は厚生労働省の管轄じゃないから医療法人独自で考えてねということです。