生き方


今回は年始に相応しい”生き方”を読みました。
著者の稲盛和夫氏は京セラの創立者であり、JALの再建者でもあります。その稲盛氏が、人生の真理は懸命に働くことで体得できるし努力を積み重ねれば平凡は非凡に変わると言っています。人生の方程式についても述べていて、人生や仕事の結果は、考え方×熱意×能力という方程式で成り立ちます。もともとの能力が高くて頭脳明晰で90点の能力を持つ人がその能力を鼻にかけて努力を怠り30点の熱意しか発揮できなかったとしたら、その積は2700点になります。一方頭の回転は人並みで60点くらいの能力の人が自分には才能がないからその分努力でカバーしようと90点を超えるような熱意で仕事に取り組めばその積は5400点にもなります。さらにそこに考え方を乗じるのですが、この考え方という要素だけにはプラスもあればマイナスもあり、考え方がマイナスであったら、掛け算の答え(人生や仕事の結果)もマイナスになってしまうのです。

つまり、考え方が一番重要だと言っています。例えば優れた能力を持ち、強い熱意を抱こうとも考え方が間違っていれば、それは宝の持ち腐れどころかかえって社会に害をもたらすことにもなります。不祥事を起こしたエリートたちは皆優れた能力と熱い情熱を持っていたはずなのに、考え方が誤っていたため、誤った行為を犯し、社会に害をなしたばかりか自分の首も絞めることになってしまいました。

考え方とは、生きる姿勢、つまり哲学や思想、倫理観などのことであり、それらを全て包括した「人格」のことでもあります。

働く喜びはこの世に生きる最上の喜びとし、飴玉のように口に入れたらすぐ甘いといった単純なものではないけれど、労働は苦い根と甘い果実を持っていて、つらさや苦しさを超えて何かを成し遂げたときの達成感は遊びや趣味ではけっして代替できない喜びだと言っています。

正月早々襟が正される本でした。与えられた仕事に感謝し初心を忘れず、誠実に仕事をこなそうと改めて思いました。関係ないですが、京セラのセラミック包丁使ったことありますか?見た目おもちゃみたいですが私は愛用しています。玉ねぎを切ってみて下さい。涙が出ませんから・・・是非おためしあれ

人生相談


日経新聞にはありませんが、よく新聞に「人生相談」の欄があって読者が悩みを相談し見識者が回答するというコーナーありますよね。それを題材にしています。ご近所トラブルや職場トラブルの悩みが最初に載っていて、それについての現実の描写が描かれて最後に回答が載っているのですが、適切な回答に感じますが現実に照らし合わせるとこの回答で良かったのか??という不気味さが漂ってきます。
また、何個かの人生相談があり、読み進めていると、これ前回の質問で出てきたあの人じゃないか?というのが出てきて、本人と他人とでは同じ事実がこうも違って感じるんだということを知ります。双方が感じている事実を知ると当事者でもない第3者である見識者の回答が妙に違和感を感じるのです。

それでも読み進めてみると、色んな人が様々な部分で接点があり過去の殺人事件にまで及んできます。あれ?この人ってあの人?あれ?あれ?と過去のページを読み直したくなる衝動に駆られます。どんどん深みに嵌っていくイメージです。こんな風にかかれた小説は初めてでとても新鮮でした。

アップルソング


この本は茉莉江という一人の女性の出生から終わりまでを綴っていますが、茉莉江の周りにいた様々な人を通して描かれています。その中で一番初めに描かれる美和子と茉莉江の関係が全く分からずにいました。何となく雰囲気からして茉莉江の生き別れた子供かなとも思いましたが、途中で茉莉江が流産した事を知り、えっじゃあ誰?と益々気になりました。茉莉江と美和子は血が繋がっていませんでした。それなのに何故美和子は渡米してまで茉莉江の足跡を辿ったのか・・・最終数ページでその謎が解けました。

茉莉江はB29の戦火の中から拾われた赤ん坊で、成長して戦争などを扱う報道カメラマンになりました。その茉莉江の一生を様々な視点から描かれていくのですが、これ本当にフィクションなの?というのを超えて、これは本当に経験しなければこんな風には描けないのでは?と思う位リアリティに溢れ、ぞくぞくする小説です。生まれたばかりの赤ん坊から50代後半位までの茉莉江が描かれていますが、それは私が理想とする女性の成長でした。茉莉江という女性は成長するたびに魅力的になっていくのです。30代の茉莉江より50代の茉莉江の方が明らかに魅力的です。

最後に美和子が渡米先で聞いた茉莉江のボストン大学での講演のテープに録音されていた茉莉江の言葉が特に印象的でした。「この会場にいる人たち全員が、望むと望まざるとにかかわらず、戦争にかかわっている、~省略~ 人の本質は、悪なんだと、私は思っています。それは歴史が証明しています。人類の歴史は、戦争の歴史なのです。・・・・・悪を持たないのは、動物だけです。しかし、私は信じています。悪を包み込む善があれば、悪を塗り替えてしまえるほどの美があれば、人は悪を孕みながらも、平和に幸せに、生きていけるはずなのだと。私は信じたいのです。必要なのは善と美です。これは、私たちが努力していけば創造していけるものなのです。そうなんです。創り出していけるのです。意識して、努力をすれば、平和も幸福も実現できるし、得られるのです。人として為すべきことは、悪を包み込む善と美を、それぞれの人間が、それぞれの能力を使って、日々、創造することではないかと私は思っています。・・・・・」

不動産投資バイブル


明治MBAの友人からいただきました。せっかくなので感想を書きたいと思います。
一般的に不動産と株は景気によって変動します。オリンピックと株の関係図が書かれていて、1996年アトランタと2000年シドニーは開催地に決定してから株価は上がり続け、オリンピックを開催してもなお上がっています。2004年アテネと2008年北京は開催地に決定してから急激に株価が上昇しすぎて開催時には株価は下がっています。それでも決定時よりは開催時の方が上がっています。2012年ロンドンは緩やかに上昇した後3年後に一度開催決定時より下落しながらも徐々に上昇して開催時には決定時より株価は上がっています。過去5回のオリンピックの共通パターンは多少紆余曲折しながらも、オリンピック決定時より開催時の方が株価が高く、また、オリンピック終了後も上昇し続けるという点です。著者はそれらを例に上げ、景気に連動する不動産への投資をしたらどうか。と勧めています。

では、都心と郊外はどちらが良いでしょう?何となく都心かなと思う方も多いと思います。その理由として、都心は土地が余っていないので新しい物件が建つスペースがなく競争力はそれほど落ちません。郊外はまだまだ土地が開発される可能性があるので、そのエリアに1000棟あった建物が2000棟まで増える可能性があります。現在ちょうど真ん中くらいの人気の物件(つまり500番目の人気)だったとしても、新築が多く建てば通常新築の方が人気が高いですから、10年後には2000棟中1500番目の人気まで落ちる。つまり家賃を相場より下げないと借りてもらえなくなります。このような理由から競争力が下がりづらい都心の物件を進めています。

それから購入を4つのセグメントに分けどのカテゴリーの物件を買えば良いのかというのを提案しています。その4つとは①住居系/大型、②住居系/中・小型、③事業系/大型、④事業系/中・小型、です。この中で不動産投資として買っていけないのは②です。一番お勧めなのは④だそうです。その理由もほう。と納得できるものでした。理由は多分この本で一番力を入れている部分だと思いますので、興味のある方は読んでみて下さい。

青い約束


この本はアラフォー世代になった主人公が学生時代の思い出および確執を思い出しながら、当時の回想を織り込み現在を生きるという本です。有名進学高に通う主人公が当時の親友および恋人を同時に失うという経験をします。真相ははっきりしないまま、ただただモヤモヤとした感情を抱えたまま大人になります。当時の親友と偶然再会して当時の記憶を思い出し当時分からなかった何故?何故?と思っていた事実を徐々に知ります。

何故恋人は死んだのか?何故親友は黙っていたのか?不可解な恋人の死に対し沈黙を続ける親友に対し主人公は不信感を持ちます。恋人は何故自分に何も相談してくれなかったのか?親友は何故、暴力事件を起こして退学してしまったのか?実は二人は自分に内緒で付き合っていたのではないか?悪い想像ばかりしてしまいます。

20年位経ち、かつての親友との再会で徐々に真実が明らかになった時、恋人も親友も自分が不信感を抱く前の存在だったのだと知ります。運命のいたずらというか誰も悪くない運命に翻弄された事実を主人公は知ります。恋人が自分ではなく親友に相談したのも、親友が自分に黙っていたのも、全て主人公を大事にしたいからという気持ちであることを知ります。なんて切ない小説なのでしょう。でも、20年かけて親友との確執が解消されて良かったです。

皆さんは親友に対して隠していることありますか?もし、あるとしたら、それは親友の事を思っての事だと思います。親友に寄り添っていたいからだと思います。隠し事=信頼されていない と思うのは早計だとこの本は教えてくれます。全てをぶちまけるのが愛ではなく、黙っていることも愛だということを教えてくれます。

夢幻花



この本は表紙の絵が気に入り、また東野圭吾氏が著者だったので間違いないと思い購入しました。最初の4ページで昭和36年に起こった殺人事件の様子が描写されます。えっこの本そんな昔の事を題材にしていたの?と思っていると現在に戻ります。最初の4ページが何だったのか分からないまま、ページは進んでいきます。

5月の感想に書いた「分身」と違ってなかなか予測が出来ませんが、少しずつ全貌が見えてきます。じわりじわり解けていく感じ、見事です。

黄色の朝顔を見たことありますか?昔はあったみたいですが、今は存在しません。その「黄色いあさがお」がキーワードとなって、様々な角度から沢山の人々がかかわってきます。この本は旅行中の夜などに読みましたが、次の日の夜が待ち遠しくなるほど楽しめました。お勧めのミステリーです。

最近話題のあの事にも関わってきます。これ以上言うとネタバレするので言いませんが・・・

主人公は若い女性ですが、最後に彼女が諦めかけていた夢をもう一度挑戦しようとする決意で終わるので、殺人などは起こるものの希望という光も見える。そんな本です。

かもめ食堂


これはDVDも観たのです。DVDで見た時、なぜ3人の女性がここに来たのか?そして、起承転結の結がないまま終わったような気がして、小説もこうなの?と気になり読んでみました。
小説では、3人の日本人女性がなぜフィンランドに来たのか。主人公の女性がどうやってフィンランドにお店を出したのか。など細かく描かれています。
いつか自分のお店を出したいと思っていた彼女がフィンランドという異国の地において単身で食堂を出します。起業の想いとかお店のコンセプトとか本を読んでみないと分からないことも沢山書いてあって、映画だけDVDだけ観た人は是非、小説も観て下さい。映画で??と思っていた謎が全て解けますよ。

日本で起業する人。特に女性で起業する人まだまだは少数派です。私も起業しましたが、外国でしかも単身で起業するなんて・・・主人公の勇気と天真爛漫さに脱帽の小説でした。

イエスマン



昔映画で公開されたので、知っている人もいると思います。私は映画は観ていないので初めて読んだことになります。彼女にフラれてからふさぎがちになり、全てに消極的になってしまった主人公。飲み会の誘いなども特に用事もないのにNOと断っていました。ある日見ず知らずの男性から「もっと、YESというんだ。」と予言のような宣告を受け、このままじゃいけないと思っていた主人公は、全ての選択にYESと言う事を決意します。

同じ日に飲み会があっても全てYESというので掛け持ちでハシゴをします。何か買って下さいと言われてもYES。345㌔あるリバプールでのパーティのお誘いにも滞在時間1時間でもYES。とにかく何事もYESです。詐欺まがいのものに引っ掛かりそうでもYESです。薬物使用も誘われればYES。もうめちゃくちゃです。

仕事で厄介そうで自分には重荷に思われることもYES。彼女でもない女友達からチケットを送ってくれと言われてYES。お金も時間もYES宣言したことにより使われていきます。仕事で何でもYESと言ったおかげで出世していきます。ストーンヘンジに行けという悪意のメールにもYES。日帰りで行ってきます。

主人公は悩みます。このままでいいのだろうか。その時、やって後悔するより、やらなくて後悔する方が数倍辛いということを知ります。そして年末までと決めてYESといいます。最後にはハッピーエンドが待っています。

この本を読んで、犯罪まがいのことはNOという必要があるけれど、例えばちょっとした誘いなど、あまり気が進まなくても、とりあえずYESといえば、道は拓けてくるのだと思いました。そう。やって後悔するより、やらなくて後悔するほうがずっと心に残るのです。

分身


先に裏表紙を読んでしまったせいか数ページ読んだらなんとなく内容が分かってしまいました。ですから、こうなんじゃないか。という仮説の元にやっぱりな。と思いながら読み続けました。分身というタイトルだけあって主な登場人物は2人いるわけです。私の感想は遺伝より経験が優先すると感じた点です。この小説は5人の女性の生き様というか捉え方が描かれています。特に親世代の3人の感じ方は全然違います。自分の遺伝子は全くないが自分で産んだ子供に自分の子供と同様の愛情を注ぐ女性。自分が産んだのだが自分の遺伝子が入っていないと知って子供の顔さえ見るのが辛くなった女性。そして自分の遺伝子を勝手に使われ自分とそっくりな子供に対して気持ち悪いと嫌悪感を示す女性。そんな経験、実際にやってみないと分からないんだろうなと思います。自分がこの立場だったら、どうするんだろう。どう感じるんだろう。でも、それは経験しないときっと分からないと思う。。。考えさせられる小説でした。

どんな仕事も楽しくなる3つの物語



先月読んだ本があまりにもセンセーショナルでした。この世にあれほどまでして仕事をするのが嫌な人が居たなんて・・・多少、怠いなとか面倒だと思っても、ここで仕事をしたら負けだ。とまで言って徹底的に仕事を避けて生きていくなんて・・・仕事大好きの私にはショックが大きく、私はたまたま好きなんじゃないかとか。世の中もしかしたら、仕事も何もしないで生活できたらそれが幸せと心から思っている人が山ほどいるとしたら・・・そんな人たちにお勧めの本です。

税理士って遣り甲斐を感じやすい仕事です。でもこの本の題名にも書いてあるように「どんな仕事も」楽しくなる要素があるのです。4つのお話が紹介されています。題名は3つなのですが何故3つとしたかは不明です。全ての話において共通することは、仕事をしている本人がどんな仕事でも顧客のために、どうすることがBESTかと考え行動しています。お客様に喜んでもらうため、期待以上の何かをしています。ここまでしてもらったらおそらく感動しかないでしょう。つまり、この本は誰でもどんな仕事でもお客様に感動を与えられるのだということを教えてくれます。

ここまで徹底的に仕事をやったら、きっとお客様も幸せですが、やっている自分も幸せな気分になると思います。