判例 はずれ馬券の経費性

当たり馬券はどのような税金が課せられるのでしょう?

当たり馬券の賞金から当たり馬券の馬券代を控除して50万円を控除しそれの1/2が課税されます。100円の同じ馬券を100枚買ったら10,000円ですね。これが万馬券で1馬券で10,000円の配当がついたら10,000円×100株で100万円ですね。(1,000,000円-10,000-500,000)×1/2=245,000円に対し税金が課されます。当たり馬券のほかにはずれ馬券が10万円あってもそれは控除されません。これが原則です。今回、はずれ馬券についても経費性を認めた判例がでました。

2005年から2009年までの5年間にその方(以下甲さんと呼ぶことにします)が購入した馬券は35億986万円(うち当たり馬券に係る購入費は1億5,350万円)、5年間で当たり馬券で払い戻しを受けた金額は36億6,493万円、税務署は36億6,493万円から当たり馬券に係る購入費の1億5,350万円を控除した残高から一時所得にかかる特別控除50万円を引いて、その残額の1/2に対して課税するといいました。甲さんは確かに36億円もらったが他の馬券購入費を控除すると1億5,507万円しか利益を受けていないのだから29億 円に課税というのはおかしいと税務訴訟になりました。

結果は納税者の勝利で、一時所得ではなく雑所得として、35億円の必要経費を認め純粋な利益である1億4千万円に課税するということで落ち着きました。

この判例を聞いて、はずれ馬券を保管しておけば必要経費になると勘違いしている人が続出しています。でも真実は違います。この判例の場合、甲さんは40の要素を分析して毎回100通りの馬券を購入していました。予想ソフトをつかってです。これってFX取引に似ていますよね。(FX取引は雑所得です)いわば事業のように頻繁に購入し取引額も尋常ではありません。そう、この事例は競馬取引について業務性が認められこのような結果になったのです。雑所得は収入金額から必要経費を控除してその残高が課税されます。ですから、はずれ馬券についても必要経費に認められたのです。普通は一時所得です。ご用心を・・・

決算後すぐに移転した場合の申告書の提出先

3月決算法人が決算後まもなく移転した場合の税務申告書はどこに提出すればよいのでしょうか?
例えば平成25年3月31日決算法人が平成25年5月2日に移転したとします。移転前の所在地は埼玉県新座市(朝霞税務署、朝霞県税事務所、新座市役所)です。移転後は埼玉県富士見市(川越税務署、川越県税事務所、富士見市役所)だった場合を例に挙げて説明します。

税務申告書の提出期限は通常2か月以内です。5月20日に税務申告書が作成できたとします。5月20日の所在地は埼玉県富士見市なので、法人税・消費税の申告書は川越税務署に提出することになります。

しかし、法人県民税・事業税・法人市民税は現在の所在地ではなく、事業年度終了の日の所在地で判断しますので、法人県民税と事業税は朝霞県税事務所に、法人市民税は新座市役所に提出することになりますので注意が必要です。

住宅ローンと補助金の受取り

4月というと日本ではスタートの月で最近では4月開始のスケジュール帳やカレンダーも売っていますね。ということで今回は心機一転住宅を購入して補助金を受け取った方の注意点についてお話します。

この話は住宅を借入金で購入して住宅ローン減税を受けようとしている方が該当しますので、合計所得金額が3,000万円超の方は住宅ローン減税がそもそも受けれませんので気にしなくても大丈夫です。

最近、太陽光発電システムなどが流行っていて、自宅新築の際に屋根にソーラーパネルをつけたりしています。自治体によっては補助金を助成していたりして、一石二鳥とばかりソーラーパネルを設置する方がいます。その時の税務上の注意点です。

例えば4,500万円の住宅を借入金4,000万円自己資金500万円で購入したとします。住宅価格に含まれる太陽光発電システムの価格が500万円以内であれば、自己資金以下なのでソーラーパネルを自己資金を優先的に使って取得したものとみなされ住宅ローン減税は全額使えることとなりますが、太陽光発電システムの価格が600万円だったら、500万円は自己資金で100万円は借入金で支払ったことになり、住宅ローン減税と補助金対象額とが二重受益を受けることになります。

国税はそこまで優しくなく、その場合、住宅ローン減税対象住宅借入金は4,000万円-100万円=3,900万円ということになります。要注意ですね。

判例 養老保険契約の満期保険金にかかる税務

この判例は平成24年1月13日最高裁(平成21年(行ヒ)404号)(一部破棄自判)(一部破棄差戻し)Z888-1625

養老保険契約の契約者はB個人が役員をするA法人、保険料支払者はA法人とB個人で半々(1/2ずつ)で満期保険料はB個人が受け取った。B個人は確定申告でこの満期保険金について一時所得で申告した。一時所得の収入金額は満期保険金、そこから収入を得るために支出した金額を控除するのであるが、その金額をA法人とB個人が支払った保険料の合計額としたところ、収入を得るために支出した金額はB個人が負担した金額のみであると指摘を受けた。裁判の結果、納税者敗訴であったという判例です。

この判例をみれば当たり前じゃないかと思うと思います。私もそう思います。納税者の主張は、所得税法34条2項の条文では一時所得から控除できる金額はその収入を得るために支出した金額の合計額としている点。そして基本通達34-4では保険料又は掛金の総額には、その一時金又は満期返戻金等の支払を受ける者以外の者が負担した保険料又は掛金の額としている点を主張している。つまり、税法の欠陥部分をついた合法的なやり方であった。ただ、今回は税法の欠陥部分の合法的なやり方は負け、常識が勝訴しました。法が欠陥な場合は常識が勝つというのがよく分かった判例です。この判例がでて、所得税法基本通達34-4そのものも改正になりました。

(一時所得)第34条
 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。
2 一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。

所得税法基本通達34-4(旧)
必要経費にできる「保険料又は掛金の総額には、その一時金又は満期返戻金等の支払を受ける者以外の者が負担した保険料又は掛金の額(かっこ内略)も含まれる」

所得税法基本通達34-4(新)
34-4 令第183条第2項第2号又は第184条第2項第2号に規定する保険料又は掛金の総額(令第183条第4項又は第184条第3項の規定の適用後のもの。)には、以下の保険料又は掛金の額が含まれる。(平11課所4-1、平24課個2-11、課審4-8改正)
(1) その一時金又は満期返戻金等の支払を受ける者が自ら支出した保険料又は掛金
(2) 当該支払を受ける者以外の者が支出した保険料又は掛金であって、当該支払を受ける者が自ら負担して支出したものと認められるもの
(注) 1 使用者が支出した保険料又は掛金で36―32により給与等として課税されなかったものの額は、上記(2)に含まれる。
 2 相続税法の規定により相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなされる一時金又は満期返戻金等に係る部分の金額は、上記(2)に含まれない。

給与所得者の特定支出の控除の特例

平成25年1月より給与所得にかかる特定支出の控除の特例が改正されました。特定支出とは①通勤費②転居費③研修費④資格取得費⑤帰宅旅費⑥通勤必要経費をいいます。

本年より特定支出の範囲が拡大され、従来の特定支出の範囲に、④と⑥が追加されたのが特徴となっています。④は、職務の遂行に直接必要な弁護士、公認会計士、税理士、弁理士などの資格取得費で、⑥は、職務と関連のある図書の購入費、職場で着用する衣服の衣服費、職務に必要な交際費などの勤務必要経費(年間合計65万円が限度)です。

特定支出が給与所得控除額を超える場合、その超える部分を給与所得控除額に加算することができます。改正後の判定は、特定支出が給与所得控除額の1/2を超える場合(給与等の収入金額が1,500万円を超える場合は125万円)になります。

<例>
給与収入300万円、旧法の特定支出60万円、上記④の資格所得費20万円、⑥の図書購入費5万円の場合

改正前(H24年以前)
判定   300万円×30%+18万円=108万円>60万円(特定支出控除額なし)
給与所得 300万円-108万円=192万円

改正後(H25年以後)
判定  (300万円×30%+18万円)×1/2=54万円<60万円+20万円+5万円(特定支出控除額あり)
給与所得 300万円-(108万円×1/2+60万円+20万円+5万円)=161万円

上記の改正は、平成25年分以後の所得税および平成26年度分以後の住民税から適用になります。

改正前は特定支出の控除の特例を使う人は全国でも数人程度でしたが、今回の改正で、判定が甘くなり、かつ、範囲も拡大され、しかも特定支出額だけではなく、給与所得控除額の半分も加算して控除できるので、年収300万円台で税理士試験などの勉強をしている人はかなり適用になるかと思います。一度試算してみて下さい。上記の例でも分かるように年収300万円位の人で資格取得費や図書費などが年間25万円程度ある人の場合、31万円も税金が安くなります。

開廃業の場合の均等割の計算の仕方

法人地方税(都道府県民税と市町村民税)は、所得割という所得が出ている場合のみ支払う税金と、均等割という所得が出ているか否かに関わらず支払う税金があります。

均等割の金額は資本金と従業者数によって決まっています。ですから、単年度決算で赤字になったとしてもこの均等割は納付する必要があります。

ただ、この均等割の金額は年額で定まっているので、例えば東京都で資本金等が1000万円以下で従業者数が50人以下の場合は年70,000円ですが、12か月間事業をしていた場合は70,000円となります。

では、年の途中、例えば開業した場合や廃業した場合はどうでしょう?5月2日に開業して12月31日が決算の場合は、7か月と30日ですので1月未満の端数は切り捨てて7か月になります。3月決算法人が10月6日で廃業した場合は4月1日から10月6日の6か月と6日になるので1月未満の端数は切り捨てて6か月です。

ではこの場合7か月ないし6か月の計算方法は70,000円に7/12ないし6/12を乗じることになりますが、割ってから乗じるのか。乗じてから割るのかが問題になります。答えは乗じてから割ります。これは地方税法312(4)、52(4)に定まっていますが、法人税額の分割基準の計算は割ってから乗じるのでやり方が違いますので注意が必要です。乗じてから割った金額に100円未満の端数が出たときは切り捨てます。したがって納税額は何百円という金額はでますが、何十円までは出ないことになります。

参照:地方税法312(4),52(4)
税率を適用して得られた均等額に対して、この事業年度中において事業所等または寮等が存在した月数を乗じて得た額を12を除して計算する。

復興特別法人税

先月のカテゴリー税務のテーマは復興特別所得税についてでした。来年から25年間もの間所得税の2.1%が復興特別所得税として課税されるというものです。では、法人税は課税されないかというとそうではありません。法人税は復興特別法人税として、3年間法人税の10%が復興特別法人税として課税されます。

こちらも所得税と同様、法人税額を一度出してから、その額の10%をさらに乗じるということになります。所得税は2.1%で25年間、法人税は10%で3年間です。

復興特別法人税の開始は平成24年4月1日から平成27年3月31日までの期間内に最初に開始する事業年度開始の日から3年を経過する日までの期間内の事業年度に課税されます。ですから最初に課税される法人は平成25年3月31日決算の法人(1年決算法人の場合)ということになります。

法人が普通預金の利子などに復興特別所得税が課されているときは、復興特別法人税から復興特別所得税を控除することができ、控除しきれないときはその復興特別所得税の額は還付を受けることができます。復興特別法人税は通常の法人税や所得税と同様に法人税の計算上、損金不算入(法人税法上の経費にならない)で、還付された復興特別所得税は益金不算入(法人税法上の収入にならない)となります。

復興特別所得税額

平成25年1月1日から平成49年12月31日までの25年間、復興特別所得税額(所得税額の2.1%)が課税されます。これは全ての国内源泉所得(居住者は全ての所得)に課税されるので、確定申告をしている事業者だけではなく、給与所得者や定期預金などの利子にも課税されます。12月分の給与を1月10日に支払っている場合についてもあくまでも支払いベースとなりますので、1月10日に支払った給与から通常の源泉所得税に復興特別所得税額も合わせて源泉徴収されます。従って手取り給与が減ることになります。

定期預金などに付く利息についても課税されます。例えば今まで受取利息が1,000円だった場合、15%の所得税150円と5%の地方税50円が控除され、手取りは800円でした。平成25年から受け取る利息から、15.315%(今までの15%と15%×2.1%=0.315%の復興特別所得税額)の153円(1円未満切り捨て)が控除されますので、手取りは797円(1,000円-153円-50円)になります。

個人に支払う報酬料金も対象になってきます。例えば、報酬が10万円だった場合、今までは100,000円+5,000円(消費税)-10,000円(源泉所得税)=95,000円を個人に支払い、10,000円を源泉所得税として納付していましたが、この場合、94,790円を(100,000円+5,000円-10,000円-210円)個人に支払い、10,210円を源泉所得税として納付することになります。

やっかいなのは、報酬を33,333円源泉所得税を3,333円で手取りを30,000円で支払っていた場合、平成25年からは33,333円-3,333円-69円=29,931円となってしまいます。本来は復興特別所得税は所得を受ける人(もらう人)が支払うべきなので、29,931円の支払いとなりますが、手取り契約としていた場合などは契約書の変更が必要になってきます。

2012年 年末調整

そろそろ生命保険の控除証明書や住宅借入金等の残高証明書が送られてきていると思います。これが送られてくるともうすぐ年末だなぁと感じてしまいます。少し早いですが今回は年末調整のことについてお話します。年末調整は会社員を経験したことがあればだれでも経験があることだと思います。そう、会社から紙を2枚渡されて記入してくるように言われるあれです。

今回は昨年と比べて変わった点をお話します。まず、生命保険控除が変わりました。昨年までは一般生命保険料で年間10万円以上の支払いで5万円控除され、個人年金保険料で年間10万円以上の支払いで5万円控除されました。2つ合わせてマックスで10万円の生命保険料控除が受けられました。

今年は一般生命保険料と個人年金生命保険料のほかに介護医療保険料が所得控除できることになりました。この場合の控除額は8万円以上保険料の支払いで4万円控除されます。一般生命保険料と個人年金保険料も介護医療保険料の支払いがある場合はそれぞれ4万円が控除限度額となってしまいますので、4万円×3=12万円が生命保険料控除のマックスとなります。昨年までの契約のみしかない場合(新たな介護医療保険料の支払いがない場合)は以前のままの5万円と5万円のマックス10万円のままになります。

不服申立てと税務訴訟

個人事業の方も法人化された方も税務調査の経験がある人は多いと思います。納税者の申告書と税務署との間で間違いや見解の相違が見つかったらどうなるでしょう?

納税者が納得して、申告書を修正する場合は修正申告書というものを提出します。では、その逆だった場合、つまり税務署の言い分に納得できない場合はどうなるでしょう?

①まず、税務署長に対して異議申立てをします。通常、納税者がごねた場合などは、あらかじめ税務署長と税務調査官が事前相談しているので、異議申立てが通るのは稀でしょう。

②次に、国税不服審判所長に対して審査請求を行います。審査請求を行って納税者の主張が一部でも認められたのは平成23年度で13.6%です。異議申立てより外部機関である審査請求の方が割合が高くなっています。

③それでも駄目なら、司法上の救済制度として税務訴訟があります。税務訴訟の場合、通常弁護士が弁護人として、税理士が補佐人として訴訟に臨みます。平成23年度ですと、13.4%が納税者の主張が通っています。