医療法人の組織

先日、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を聴いてきました。生オーケストラは久々でした。生オケと映画・CDなどと圧倒的に違うところは聴くといっても、耳からだけではなく、全身で、もっと詳しくいうと、内臓や毛穴から聴いているようなそんな感覚でした。全身でメロディを受け入れることを体感しました。

私は人がおこなった素晴らしいものを観ると、ここに至るまでこの人はどんな苦労や試練を乗り越えてきたのだろう・・・と想像してしまう癖があります。そして3年前に観た映画「のだめカンタービレ」で生オケの指揮者が言った一言「いくら苦しくても、気が遠くなるほどの孤独な戦いが待っていようとも、こんな喜びがあるから何度でも立ち向かおうと思えるんだ」というセリフを思い出し、涙が出そうになりました。。

とここまで読んで、これが何でカテゴリー医療法人に書かれているの?と思った人もいると思います。何が言いたかったのかというと、オーケストラの組織と医療法人の組織は似ていると思ったのです。病院はそれぞれ医師、看護師、技師、理学療法士、作業療法士、助産師、放射線技師、管理栄養士、薬剤師、介護福祉士など多くの国家資格者、つまり様々な専門家がそれぞれプライドを持って専門分野に特化して仕事をしています。オーケストラに似ていると思いませんか?

個での技術の向上もさることながら全体の和を大事にしているのがオーケストラです。一瞬音がなくなり、指揮者の指揮棒がふわっと丸い円を描いた瞬間、音がふわっと鳴り響くのを見たときは、まるで魔法を見ているようでした。

そう。個々の技術はとても大事です。でもそのような人々が全体でまとまって和を醸し出せたら、おそらく見ている人に感動が生まれるのです。医療法人もそう。一人一人の専門家が全体で和になったら、患者に感動が生まれるのです。

医療法人の判例 債務免除

大阪地裁平成24年2月28日判決(平21[行ウ]201)(全部取消し)(確定)Z888-1636の判例です。

これは、個人事業で病院を営む原告がA機構とB事業団から約24億円の債務免除を受けて、その債務免除益を事業所得の収入金額に入れないで申告したところ、そのうちの約10億円について、債務免除益として事業所得に算入するよう更正処分を受けました。

原告側はこの債務免除は合理的なA機構企業再生スキームに準じたスキームに基づいて行われ、債務免除を受ける直前において資力を喪失していたとして基本通達36-17が適用されると税務訴訟を行いました。

結論から延べますと原告が全部勝訴です。本件債務免除は合理的なA機構企業再生スキームに基づいていたこと。ちゃんと第三者による監査を受けていたことがポイントとなって勝訴した事例です。

(債務免除益の特例)所得税基本通達 36-17
 債務免除益のうち、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けたものについては、各種所得の金額の計算上収入金額又は総収入金額に算入しないものとする。ただし、次に掲げる場合に該当するときは、それぞれ次に掲げる金額(次のいずれの場合にも該当するときは、その合計額)の部分については、この限りでない。 (1) 当該免除を受けた年において当該債務を生じた業務(以下この項において「関連業務」という。)に係る各種所得の金額の計算上損失の金額(当該免除益がないものとして計算した場合の損失の金額をいう。)がある場合  当該損失の金額 (2) 法第70条《純損失の繰越控除》の規定により当該免除を受けた年において繰越控除すべき純損失の金額(当該免除益を各種所得の金額の計算上収入金額又は総収入金額に算入することとした場合に当該免除を受けた年において繰越控除すべきこととなる純損失の金額をいう。)がある場合で、当該純損失の金額のうちに関連業務に係る各種所得の金額の計算上生じた損失の金額があるとき。 当該繰越控除すべき金額のうち、当該損失の金額に達するまでの部分の金額

医療法人関連税務の行方

医療法人は株式会社と違い特有の税務があります。平成25年1月29日に遅ばせながら、平成25年度税制改正の大綱が閣議決定しました。気になっていた医療法人関連税制ですが、事業承継税制(一定の事業承継をした場合、相続税評価の80%を納税猶予するという制度です)について、適用範囲が広がりましたが、医療法人は相変わらず対象法人ではありませんでした。従って、持分の定めのある社団医療法人は今後も相続税対策を強化しなくてはいけません。

税制改正大綱は3部で構成されています。第一で基本的考え方を示し、第二で具体的内容を説明し、第三で検討事項を示しています。税制改正のセミナーなどは第二の具体的内容を掻い摘んだものですが、実はこの第三の検討事項を読みこなせれば今後の税務の行方も分かってきます。検討事項15項目のうち何と2つも医療法人系の内容が書かれていました。

「5医療にかかる税制のあり方については、消費税が10%に引きあげられることが予定される中、医療機関の仕入れ税額の負担及び患者等の負担に十分に考慮し、関係者の負担の公平性、透明性を確保しつつ適切な措置を講ずることができるよう、医療保険制度における手当のあり方の検討等と併せて、医療関係者、保険者等の意見も踏まえ、総合的に検討し、結論を得る。」
こちらについては医師会の努力が実ったのか消費税10%引き上げ時に医療法人の損税問題を検討してもらえることになりました。ただ、このまま非課税なのか、課税なのか、免税なのか、全く見えていません。

「14事業税における社会保険診療報酬に係る実質的非課税措置及び医療法人に対する軽減税率については、税負担の公平性を図る観点や、地域医療の確保を図る観点から、そのあり方について検討する。」
こちらは社会保険診療報酬について事業税の非課税項目から外そうとする動きです。ただ、個人的意見ですが、そこまでする必要があるのかということです。現在、東京都内ではクリニック経営はできても病院経営は赤字で経営できない状態です。それは、日本中収入は社会保険診療報酬で決まっているのに、人件費や土地使用料が高いからです。つまり、都内で病院を経営すると、経費がかさむのです。今、東京都内で繁盛している病院は大学病院や公的病院など税金を払っていない病院ばかりです。無税病院が競合となっている医療法人にこれ以上の税負担をさせるのは酷ではないでしょうか?病院は地域医療のために必要なものなのです。

社会医療法人認定状況

平成25年1月18日に本年1月1日現在の社会医療法人認定状況が発表されました。それによると認定数は全国で191法人になります。

平成19年の医療法改正時に創設された社会医療法人ですが、平成21年3月31日には36法人、平成22年3月31日には85法人、平成23年3月31日には 120法人、平成24年3月31日には162法人、そして平成25年1月1日には191法人と創設から6年で200法人になる勢いです。

社会医療法人と通常の医療法人との違いは2011.5.12のカテゴリー医療で「社会医療法人」として載せてありますのでご覧ください。

社会医療法人は僻地医療や救急医療、そして周産期医療など不採算医療を担うことが要件となっている代わりに税金がかからないので、今後は赤字の公立病院の担い手となっていくでしょう。

医療法人の法務と税務(第2版)



私事で申し訳ございませんが昨日法令出版から「医療法人の法務と税務(第2版 )」が発売になりました。第1版は厚い、高い、重いと三拍子揃った本でしたが、今回もその路線は守っています。表紙カバーは1版も障害者の作った作品を購入し採用するという社会貢献型の選択をしていますが、2版も同じ選択をしています。個人的にはこちら(第2版)の方が好きですね。

表紙の穏やかさと裏腹に中身は濃く、お固く、専門的です。医療法人は法務(医療法)や税務(特有税務 )でもかなり特徴があります。詳しく勉強されたい方にお勧めです。

社会保険診療報酬の非課税

医療法人の収入の大部分を占める社会保険診療報酬(社会保険や国民健康保険)は、窓口負担分(自己負担分)についても振込分(支払基金等からの振込)についても、事業税は非課税になります。消費税も非課税です。しかし、法人税や所得税は課税となります。

労働災害収入や自賠責収入は、事業税と法人税は課税ですが、消費税は非課税となります。

従って、医療法人の税務は通常の株式会社より複雑になりますので、日頃の会計入力の時点で収入を科目別に分け税目別に枝番(補助科目)を振るなどしておく必要があります。

期末の医療未収金の計上は期末前2か月の請求分を計上することになりますが、返戻分で再請求するものについても、医療未収金として計上する必要があります。

医療法人の合併

合併には新設合併と吸収合併というものがあります。
新設合併はA社とB社がそれぞれなくなってC社という新しい法人を設立します。A社が創業50年B社が創業20年だとしてもC社は設立第1期ということになります。
吸収合併はA社の中にB社が吸収されるという合併の仕方です。A社は存続会社となりB社はなくなってC社が誕生します。A社が創業50年、B社が創業20年であれば、、C社は51期目を迎えることになります。

それでは本題です。医療法人は合併できるのか?
答えはできます。ただし、制限があります。医療法人社団ですと総社員の同意があればできますし、医療法人財団であれば寄付行為(社団でいう定款のようなもの)に合併することができる旨の記載があり、かつ、理事の2/3以上の同意があればできます。

では、医療法人の組織形態の差異を考えてみます。財団医療法人同士の合併であればできます。社団法人の場合、持分の定めのない社団と持分の定めのない社団の合併は、新設合併でも吸収合併でもできますが、存続法人(設立法人)上記の例でいうとC社は持分の定めのない社団になります。

片方が持分の定めのある社団で片方が持分の定めのない社団の場合、存続法人(設立法人)上記の例でいうとC社は持分の定めのない社団になります。
持分の定めのある社団同士はちょっと複雑です。原則、存続法人(設立法人)は持分のある社団でも持分のない社団でもどちらでも選択できますが、持分の定めのある社団同士であっても新設合併の場合は持分の定めのない社団にしかなれません(吸収合併の場合は持分の定めのある社団になることもできます)その点は要注意ですね。

持分あり社団と持分あり社団の場合、 吸収合併であれば、存続法人があれば旧医療法の適用があり、持分あり社団の既得権が尊重されますが、新設合併の場合、平成19年度以降持分の定めのある社団医療法人の新規設立が医療法上できなくなりました。それに合わせて新設合併の場合のみ(新設合併は新たな法人が設立第1期となるため)持分の定めのある社団にはなることができなくなったのです。
詳しくは下記厚生労働省のHPをご覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/igyou/dl/120531-02.pdf#search=’%E5%8C%BB%E7%99%82%E6%B3%95%E4%BA%BA%E3%81%AE%E5%90%88%E4%BD%B5′

認可外保育施設

医療法人が認定こども園を運営できるようになったのは、知っている方も多いのではないでしょうか?認定こども園については、http://www.youho.go.jp/gaiyo.html

ただ、これより運営要件が緩い認可外保育施設も医療法人の附帯業務(医療法第42条第6号⑲)として運営をすることができるようになりました。

認可外保育施設というと聞き慣れないと思いますが、簡単に言えば無認可保育所のことです。http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/hoiku/nin_kagai_qa/index.htmlそれなら、いままでの職員の福利厚生の一環でやっていたという場合も多いと思います。今までの福利厚生の一環としての院内保育所と今回の附帯業務の1つとしての無認可保育所の最大の違いは、従業員に限らず子供を受け入れることができるという点です。

ですから、その病院で働く従業員の子供だけではなく、近くの病院で働く従業員等の子供も受け入れることができます。

医療法人の承継(2代目の憂鬱)

医療法人のメリットは事業承継が個人経営よりスムーズにいくということです。ところが最近後継者が病院(診療所)を継ぎたくないといったケースを多数実感しています。私の感じるイメージとしては、後継者がいるにも関わらず後継者が継ぎたくないと感じているケースは全体の10%はいるような気がします。

お父様は自分が苦労して発展させた医療法人を引き継いでほしいと深く願っています。ところが息子(あるいは娘)は、引き継ぎたくないと思っているケースがあります。話を聞いてみたりして感じるところは、もともと後継者は医師なので大学で経営学や商学部などを出ている人は殆んどいません。ほぼ医学部一本できています。子供のころから医師になることを前提に教育されているので、人を助けることの奉仕の精神は持ち合わせています。ところが経営者になる教育は全くと言っていいほど受けていないのです。

そして経営者になると医療法人の経営の事を考えたり、雇う人の労務管理をしたり、借入金の連帯保証をさせられたりします。また、最近では財源不足から診療報酬のカットなどもあり、医療法人も生き残りレースのようになってきたのも事実です。

そのような事に疲弊してしまっています。そして、医療のことだけを考えて生きていきたいと思ってしまうパターンが多いような気がします。勤務医の方が気が楽だと・・・特に人と交わることがあまり好きではない医師の場合、病院内の様々な国家資格者(その人たちはその資格にプライドを持って生きていることが多く、こんな不景気な時代でもいくらでも仕事場所はあるのです)の労務管理で疲弊してしまう。

父親からすれば何の苦労もせず(言い過ぎですが、父が一から始めている場合そう思うようです)医療法人を手に入れて、勤務医以上の給料をもらって何の不満があるんだ。ということになります。後継者はそれでも継ぎたくないと言います。最近そのようなケースが増えてきたような気がします。中小企業の後継者であれば経営者になることを前提の教育を受けたりしますが、医師の場合、医師になることへの教育しか受けていない場合が多いのです。子供を後継者にしたいと思っているドクターは今後は、子供に帝王学の勉強もさせないといけないのかもしれません。




7回目8回目の浴衣です。これは両方とも昨年購入したものですが、帯は両方とも今年購入したものです。帯を変えるだけで印象も少し変わりますね。

医療法人の広告規制緩和

以前は医療法人が広告を出す場合は限定列挙でかなり厳しい広告規制がありました。平成19年に医療法が改正された時、医療の選択を支援する観点から広告可能な内容が拡大されました。これにより医療法人はかなり緩和された広告を出せることになりました。どの程度緩和されたのかの具体例は下記を参照して下さい。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/kokokukisei/dl/jikou.pdf

また、広告可能な事項以外の内容を広告に記載した時は以前は直接罰(6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)でしたが、改正後は、広告の中止命令や是正命令になりその命令に従わなかったときに罰則を適用するという間接罰になりました。ただし、虚偽記載(不適切な広告による不当なもの)については、改正前も改正後も直接罰となります。



4回目の浴衣です。なかなかいいペースで浴衣を着れています。これはインターネットで激安で買った浴衣ですが、浴衣もずいぶん安くなりましたね。紺色の浴衣はやはり落ち着きますね。