種類別医療法人数

平成24年3月31日現在の種類別医療法人数が6月22日に発表になりました。全体では47,825法人で昨年に比べ879法人の微増です。数年前まで全体の98%を占めていた持ち分の定めのある社団医療法人は、平成19年以後設立できなくなったこともあり、88%に低下しています。

それに比し、平成19年3月には424法人だった持ち分の定めのない社団医療法人は平成24年3月では5,189法人と平成19年の約12倍になっています。

特定医療法人は平成19年には407法人ありましたが、平成24年には375法人に減少していますが、これは平成19年の医療法改正であらたに新設された社会医療法人(平成24年3月現在162法人)への移行が進んだものとみられます。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/houzinsuu03.pdf

医療法人の役員と営利法人の役職員の兼務

株式会社などの営利法人が医療法人を設立することは実質的に株式会社に医療を解禁することになるから、日本の医療では禁止されています。

このことについては賛否両論ありますが、厚生労働省の立場としては、株式会社が参入すると儲け主義にはしりアメリカの医療のように貧乏な人が受診できなくなる可能性がある。(これは社会保険診療報酬制度が崩壊し自由診療でしか受けられなることも示唆しています)日本では医療は社会保険診療報酬で行っているのである程度の規制が必要だというものです。

従って、営利法人の役職員が医療法人の役員(理事など)になることにあまり良い顔はしませんでした。しかし、医療法人に再生が必要な場合など一定の場合には仕方ない事例が続発しました。そこで今まであやふやであった兼任について、平成24年4月17日に3月末日付けで厚生労働省のホームページで明確化されました。詳しくは下記を参照して下さい。 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/dl/midashi_shinkyu120330b.pdf

社会医療法人の認定状況

平成19年に誕生した社会医療法人ですが(社会医療法人については2011年5月12日のブログ カテゴリー医療法人「社会医療法人」参照)2011年1月1日現在に認定された医療法人は全国で161法人です。。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/dl/shakaiiryouhouzinnintei_02.pdf

認定医療要件は救急医療の118件が一番多く、次いで僻地医療の26件、精神救急医療の21件、小児救急17件、災害医療8件、周産期医療5件となります。
合計数が法人数と合わないのは1つの法人で何個かの認定要件を満たしている法人があるからです。

社会医療法人は将来公的病院の受け皿となる医療機関になるであろうから特定医療法人を中心に社会医療法人の認定をとる医療機関が年々多くなっています。

医療法人形態のうち出資額限度法人とは?

出資額限度法人とは持ち分の定めのある社団医療法人のうち定款のおそらく第9条あたりに「社員資格を喪失した者は、その出資額を限度として払い戻しを請求することができる。」という文言と、おそらく第34条あたりに「本社団が解散した場合の残余財産は払込済出資額を限度として分配するものとし、当該払込済出資額を控除してなお残余財産があるときは、社員総会の議決により、○○県知事(厚生労働大臣)の認可を得て、国若しくは地方公共団体又は租税特別措置法第67条の2に定める特定医療法人若しくは医療法第42条第2項に定める特別医療法人に当該残余の額を帰属させるものとする。」という文言が記載された医療法人です。

簡単に言うと、1000万円出資して医療法人を設立して数十年経って、その出資の評価が1億円になっていたとしたら、通常の医療法人であれば、社員(民法上の社員です。従業員ではありません)を辞めるときは1億円の払戻請求権が生じるのだけれど、敢えて1000万円しか払い戻せないことを定款で定めて、残りの9000万円は国やそれに準ずる医療法人に帰属させるということを定款に定めた法人なのです。

なぜ、そのようなことを定款に定めたのか?自分が不利になるのに?と思われた方もいたことと思います。

これは以前大きな精神科病院などを中心として広まった定款変更で、こうすることによって、相続税の評価が出資額となるのではないか?と考えられたからです。平成19年までこのことについては、はっきりしなかったのですが、出資額限度法人であっても、特定医療法人並みの公益要件を備えていないと、通常の医療法人社団とおなじ時価評価となるということが明らかにされました。

平成24年度 診療報酬改定

診療報酬は国民健康保険・健康保険組合などが支払う医療サービスの単価で2年に1度改正され4月から適用になります。平成24年4月からの新しい公定価格が決まりました。

俯瞰してみると、薬価改正で6%下げて総額5,500億円の減額、救急医療に1,200億円増額、在宅医療に1,500億円増額、がん・認知症治療などに2,000億円増額、在宅歯科医療に500億円増額でほぼ入りと出が横ばいになり(実際は0.004%の増額)内訳の改正となりました。

主な改正点は次のとおり
①小児科救急・・・特定集中治療室(PICU)に新たな報酬として1日当たり15万5000円
②再診料・・・同じ日に同一病院で違う診療科を受診する場合、2科目の受診にも340円の再診料をとる
③在宅療養支援病院・診療所・・・緊急時・夜間の往診料を引き上げる
④在宅患者への訪問看護・・・緩和ケアなどの専門の研修を受けた看護師による訪問看護に新たな報酬を適用する
⑤がん手術・・・約1200の手術料を最大5割引き上げる
⑥土日入院・・・報酬一部引下げ
⑦全面禁煙・・・病院では原則屋内全面禁煙とします
⑦在宅歯科医療・・・通院困難患者の歯科訪問診察料の引き上げ
⑧後発医薬品・・・薬局窓口での後発医薬品の情報提供に報酬

医療法人の推移

平成23年の種類別医療法人数の年間推移が発表されました。医療法人総数は平成23年3月31日現在で46,946法人(前年比+957)です。内訳は財団医療法人が390法人(前年比-3)、持分あり社団医療法人が42,586法人(前年比-316)、持分なし社団医療法人が3,970法人(前年比+1,276)です。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/houzinsuu03.pdf

未だ全体の90%以上を持分あり社団医療法人が占めていますが、平成19年以降は持分あり社団医療法人の新規設立はできなくなったこともあり徐々に減っています。

持分なし医療法人は1,276法人増えていますが、内訳は75%が新規設立で25%が持分有り社団からの移行ということになります。

厚生労働省税制改正要望(医療法人関係)

平成24年度の税制改正において厚生労働省は様々な要望(医療、年金、たばこ、雇用、子供等)を出しています。その中で特に医療法人に重要な要望は以下5つです。①社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置の存続 ②医療継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の創設 ③社会医療法人に対する寄付に係る寄付金控除等の創設 ④研究開発税制(増加型・高水準型)の恒久化 ⑤社会保険診療等に係る消費税のあり方の研究

①は医療法人は株式会社等に比べ事業税が少ないです。なぜならば社会保険診療報酬は事業税法上非課税となっているからです(法人税法上は課税です)。また、医療法人は特別法人なので普通法人(株式会社等)より400万円を超える所得については税率が少し優遇されています。これを廃止する動きが一部でありますが、存続させるべきという意見です。私の意見も同様です。ただでさえ民間医療法人は公的医療機関に比べ税金の負担が多く同じ土俵で戦っていないのです。これ以上公的医療機関に差をつけるのは不遇すぎます。

②については、持分あり社団医療法人の出資者に相続が起こった時に3年以内に持分なし社団医療法人に移行すれば、出資にかかる相続税が猶予されることを要望するものですが、これが通ったところで相続税法第66条4項のみなし贈与の問題は消えません。医療法人は事業承継税制の対象外なので、今後も相続に関しては問題が山積みです。

③と④については当然の要望です。こちらは要望しないと認められないので自己主張が大切です。

⑤については、消費税創設以来の医療法人消費税損税問題の見直しです。今後税率が上がってくるのでますます重要な問題となります。社会保険診療報酬を課税にすれば損税問題はなくなりますが、おそらく医療法人の不満は増えると思います(消費税の納税額が増えるから)。社会保険診療報酬について、非課税ではなく0%課税か免税にすれば、条件としては1番良いのですが、これも難しいでしょうね。免税は今のところ輸出免税等しかありませんので、そこに医療だけいれるのはどうかと思います。0%課税というのは今のところありませんが、次の消費税改正で入れることができれば医療法人にとっては安泰です。

医療法人の出資の評価

医療法人は医療法によって配当が禁止されているため、含み益が法人内部に蓄積される傾向にあります。従って理事長に相続が発生した場合、多額の相続税が発生する可能性があります。平成19年以降この出資の評価が必要な持分の定めのある社団医療法人の新規設立はできなくなりました。従って将来的には医療法人の出資の評価で相続税に悩む医療法人も減るのでしょうが、平成23年3月31日現在で医療法人の総数は46,946法人、そのうち相続税評価が必要な持分の定めのある社団医療法人は42,586法人です(厚生労働省調べ)そう考えますとまだまだ90.7%の医療法人が相続税の心配が必要であり、私が知っているだけでも、数千万円の出資金が何十億円もの出資評価になっている医療法人が多数あります。

相続は突然やってきます。突然でなくても相続開始前3年以内の贈与は相続税額に加算されますので注意が必要です。医療法人は現在、事業承継税制の対象にはなりませんので逃げ道がありません。

出資の評価が無税になるためには特定医療法人への移行が有効ですが、特定医療法人への移行は多くの要件をクリアしなければなりません。できれば特定医療法人への移行を進めたいところです。しかし、それができない場合、例えば赤字で評価が下がった時に事業承継人に出資持ち分を譲渡することや、課税されるのを覚悟して持ち分の定めのない社団医療法人へ移行するなどが考えられます。どうすればよいのかは、その医療法人を将来的にどうしたいのかという考えによって変わってきます。ただ、無計画に相続の発生を待つのではなく何か準備しておくのは大事だということです。

医療法人の基本財産

医療法人の財産は、大きく基本財産と運用財産に分けられます。基本財産とは、医療法人設立時に土地や建物とすることが多いです。医療法人設立時には、病院の土地や建物は基本財産とすることが望ましいと県などが言っていることから、意味も分からず、病院の土地や建物を基本財産に設定している医療法人もあります。

基本財産以外の財産は運用財産となります。何が違うのかというと、基本財産は処分したり、借入金の担保にするときは、理事会(評議委員会があれば評議委員会)の決議が必要です。また、理事会の決議を経た後、所轄庁の承認も得る必要があります。定款変更認可申請書の提出も必要なのです。

ここまで書くと、基本財産は処分するのが大変だなと思うと思います。その通りで、理事会の決議を経て所轄庁(県など)の承認を得るためにも理由づけが必要です。そのため処分や担保の設定に時間がかかります。

それでは、基本財産の設定は必ず必要なのでしょうか?答えは必要ありません。所轄庁も土地や病院建物は基本財産とすることが望ましいとしながらも、それを強制することはできません。借入金の担保の設定など、時間が勝負な場合もありますので、医療法人設立時には(その後設定することはないと思いますが)できるだけ、基本財産は設定しない方が後の運用がスムーズになります。

医療法人の会計基準

医療を営む組織はその解説主体によって会計基準が定まっています。

国立病院は、独立行政法人国立病院機構会計規程というものがあります。

地方公共団体立病院は、企業会計原則や地方公営企業法によっています。

社会福祉法人は、社会福祉法人会計基準があります。

公益財団法人・公益社団法人については、公益法人会計基準があります。

では通常の医療法人はというと実は制定されていないのです。
ただ、病院ですと、病院会計準則によりますし、介護老人保健施設ですと、介護老人保健施設会計経理準則があります。また、訪問看護事業所は、指定訪問看護会計経理準則によることとなります。