2025年 読書感想

昨年より12月の「カテゴリー:本」は、今年読んだ印象に残った良い本BEST3を発表しています。今年はオーディブルで読んだので過去最大の82冊の本を読みました(実務書除く)また、今年自宅を引っ越したのですが、今までの下り通勤が、上り通勤になり、もう満員電車は乗れないということで、各駅停車の始発駅から乗って本を読みながら(聴きながら)通勤したのも大きかったです。家でも掃除などをするときは聴きながらやっていました。やはり本は良いと実感した1年でした。それでは発表します。

1位:神の子(上・下)
薬丸岳氏の作品です。この感想は2025年8月29日のブログで述べています。薬丸氏の作品の舞台は池袋をはじめ私の知っている場所ばかりなので、てっきり近所に住んでいると思っていましたが兵庫県明石市の出身でした。その他にも薬丸氏の作品であるブレークニュース、最後の祈りも読みました。やはり私の縄張り内の舞台が多くとても親近感をもって読めました。ただ、小説の内容は重く、社会問題になっているようなことがテーマです。多くの闇に一筋の光のような小説が多かったです。

2位:これは経費で落ちません1~12
主人公の森若沙名子に共感する物語で1巻から12巻まで読んでしまいました。お仕事本ですが、プライベートの事も書かれていていつの間にか森若さんの応援団になっていた本です。森若さんは会社の経理課に所属しているので森若さんの仕事が忙しいときなどは分かるよ!分かるよ!と心の中で叫んでいました。登場人物が多く、それぞれ実現する人のような個性があるのでとてもリアリティがあり面白い小説でした。

3位:国宝(上・下)
ご存じ爆発的なヒットとなった映画国宝の小説版です。小説の感想は2025年7月4日に、映画の感想は2025年7月9日にブログに書いています。小説と映画とどちらが良かったかと聞かれたら小説です。人の一生が書かれているので主人公の喜久雄だけではなくその周りの人たちについても1つの小説になりそうなくらいの人生があります。小さな本に壮大な物語が詰め込んである本でした。

こんなに本を読んだ年はなかったので多くの本を読むことについての弊害も述べておきます。今回選んだ1位~3位はすべて物語である小説ですが、小説は読んだ後に心の中に滞在する時間が長いです。ですから小説を立て続けに読むと続き物の場合は良いのですが、似たような違う本を読むと中身が混乱することが分かりました。ですから続き物以外の小説を読むときは小説と小説の間に違うジャンルの本を入れないと内容が混乱しやすいのです。だから小説でない本も多く読んだのですが、やはり心に残るのは小説ですね。来年も通勤時間や移動時間を中心に本を読みたいと思います。

金環日蝕

近所のおばあさんがひったくりに合い、一緒に犯人を追いかけた2人(大学生の春風と高校生の錬)の物語と、母子家庭の子供で母が病気で働けなくなり一家を助けるために特殊詐欺に加担してしまう大学生理緒とそのボスである加賀谷に恋心を抱いている物語。その2つの物語が同時並行で描かれています。それが1つになるとき、様々な謎が解かれていきます。

この本を読んで思ったのは、悪人と善人はきっちり二分化されているものではなく、その人の中にも悪人と善人の部分があって全体的にもグラデーションのかかったものなのだということ。人はちょっとしたきっかけですぐ悪人と呼ばれる行為に及んでしまう危うさがあるのだと知りました。人は守りたい人がいると知らないうちにそちらに足を踏み入れてしまう。それが悪の道だと薄々気付いていても、守るという事を言い訳にして・・・本当に簡単に起こりそうな事でぞっとしました。

善人だと思っていた人が善人とは言えない裏の顔を持っていたり、底抜けに明るく何も悩みがないような子が陰の部分を持っていたり、人間の底知れぬ人格がそれでもこうありたいと願う感情など色々感じることができる面白い本でした。秋の夜長に最適な本です。

幸せジャンクション・思いをつなぐハイウェイ

幸せジャンクションは退職金代わりにもらったキャンピングカーで人助けをする良い人の物語。思いをつなぐハイウェイはその続編です。周りに不平不満を言う人がいると心が疲れてくると思います。常に文句を言っている人っていますよね。でもこの主人公は常に良い人です。しかも誰かの役に立つお節介を常に行動に移します。ちょっと自己犠牲の部分もありますのでそこまでやらなくてもと感じることもありますが、様々な人を助けることによってつながりができ、将来自分がピンチになった時に、過去に親切にした人に助けられる。そんな物語です。

その良い人に触発されて心が荒れていた周りの人も少しづつ変わってきます。小説なのでピンチの時に過去に手助けした人が助けてくれるタイミングが絶妙すぎてやはり物語だなと思ってしまいますが、もっと長いスパンで考えると人生はそんなものなのかもしれません。物語のような話は所詮物語だから現実とは違うと思いがちですが、ドジャースVSブルージェイズとの2戦目、3戦目は本当に物語のようでした。ホームラン3回とか、9回連続出塁とか現実では考えられないことが実際に起こっています。そう考えるとこの物語の方がまだ現実味があるような気がします。

やはり、人は安らぐ人、良い人の周りに集まってきます。その場所が居心地が良いからです。読んでいる途中で内容が想像できてしまいますが、多幸感を求めてつい続編まで読んでしまいました。癒しを求める人にお勧めの本です。

夜明けより静かな場所

本を読むというのがいかに素晴らしい事かを再確認できる作品です。リアル生活が整っていなくても本を読むことによって何が正しくて何が正しくないのかが自然に分かってきます。それが本の魅力です。また、同じ本でも人によって感想はそれぞれで自分の感想は過去の経験や出来事、また思考などで変わってきますから、様々な感想を知ることによるメリットもあります。私も本を多く読みますが、色々共感できる部分があり、読んでいて楽しかったです。

正直、期待しないで読み始めた本ですが、どんどんのめり込んでいる自分がいました。改めて本のすばらしさが分かる本でした。読書について今まで深く考えた事ありませんでしたが、この本を読むと小さな本に無限の可能性を秘めていて自分の生活にプラスにしかならないのが本だというのを改めて感じました。本を読まない人はそれだけで人生を損しているとさえ思います。この本を読んで本当に良かったです。

神の子

神の子上下巻を読みました。この本は先月感想を書いたブレイクニュースを書いた薬丸岳氏が著者です。ブレイクニュースの時もそうでしたが、神の子も戸籍のない子供や、捨てられた子供、虐待を受けた子供という社会問題が根柢にあります。そしてブレイクニュース同様に池袋をはじめ私に馴染みのある町が沢山出てくるところからも親近感を持って読むことができました。主人公は戸籍を与えられなかった知能指数が高い子供の半生を描いています。

子供は生まれた場所や環境を選べないですが、なかなか劣悪な環境で育ち14歳にして一人で生きていくことを決めた少年、町田博史。彼は生きるために何でもやってきました。人殺し以外は・・・感情がなく無表情で何を考えているか分からない少年。そんな少年が徐々に人間らしい感情を取り戻していく物語。それでも人はなかなか変われないから表面的には愛想もない冷淡な印象は変わらないまでも彼の芯の部分が徐々に、そう北極から持ち込まれた長い間固まっていた氷が徐々に溶けるようなそんな本でした。

表面的には不愛想で冷淡ですがその中身は周りの人を救おうと奮闘しています。しかも助けようとしている周りの人にばれないように・・・なぜ良心を隠すのか。それは貸しを作りたくないから。彼は芯の部分では善良です。最後の章で半年前まで見ていた夢と今の夢は違うと言っていたのが印象的でした。今まで見ていた夢は悪夢の事で、今の夢は未来を思う夢なのだと思います。そして町田の最後の言葉を聞いた瞬間、涙が出ました。そこで終わるのかよ。ずるいと思いました。良本です。

国宝

今、映画でも公開されている国宝ですが、小説国宝を上下巻読みました。上下800ページ超えの大作です。主人公喜久雄は任侠一家に生まれ母は病死、父はお正月の宴で殴り込みに合い亡くなります。その後、梨園の道に入り精進し三代目花井半次郎を襲名して一生を終えるまでを描いています。波乱万丈な一生でした。極道の親分の家の長男(しかも一人っ子)として生まれ、早くに両親を亡くし、梨園の世界に入り、良いときは本当に運と実力が実り開花し、悪いときはどん底までたたきつけられる、そんな人生です。物語が長かったので、何日もかけて読みましたが、悪いときはこちらもプライベートで落ち込むほど落ち込み、良いときは生きることに喜びさえ感じる。それほどに入り込んだ小説でした。

芸を磨いて精一杯生きていても、任侠一家の出だから報道でのいじめにあったり、二代目半次郎が亡くなった後は後ろ盾がなくなり、実力があるのに舞台に出してもらえない。出してもらえても端役しか与えられない。凄惨ないじめに合うなど。それでも生きていくために舞台とは言えないような地方巡業の仕事をしたり。梨園の血を求めてその娘と結婚しても親には許されず苦虫を嚙み潰したような生活。恩人の極道に宴会芸を頼まれ、周りの人の反対にあうも踊りその場に警察が入り週刊誌の格好の餌食。でも、恩がある相手には自分の立場が悪くなると知っていても義理を押し通す。それは梨園で育て上げてくれた花井家の借金を自分が引き継ぐというところにも表れます。人生の半分くらいが悲惨な人生。あとの半分がスポットライトを浴び無形文化財の国宝に認定されるほどの華やかな人生。人の人生とは一生おしなべるとプラスマイナス0なんだと感じるような小説でした。ブレが大きいか小さいか。ブレが非常に大きい人生です。

この小説に出てくる女性の逞しさにも考えるものがあります。早くに亡くなった極道親分の妻の母は次の義母マツに喜久雄は極道にしないでほしいと頼み、義母のマツはそれを守ります。マツは家業が無くなり自分の生活も苦しいのに喜久雄を預かって貰っている花井家に毎月大金を送っています。梨園側の花井半次郎の妻の幸子も自分の子である俊介ではなく、半次郎の代役に喜久雄を選んだ夫に腹を立てながらもそれはそれで納得し喜久雄を世話します。幼馴染の春江は喜久雄の恋人だったはずだったが俊介と駆け落ちし落ちぶれた俊介をささえます。舞妓の市駒はまだ無名の喜久雄に妻にはならなくて良いから2号3号にしてくれと言い実際に喜久雄の子を産み一人で育てます。彰子は喜久雄の妻ですが愛されていないと知っても喜久雄を愛し支えていきます。曽根松子は彰子の親戚ですが後ろ盾のない喜久雄を助けます。何ともこの時代に生きる女性の逞しさをも感じた作品でした。

ブレイクニュース

現在の社会問題や仕組みを描いた小説でした。野依美鈴さんという女性が主人公で、YouTube配信のニュースを提供しています。様々な社会問題をテレビでは取材できないことまで含めて取材し、例えば加害者と被害者がいる場合、どちらにも肩入れせず忠実にに放映しています。ネットニュースなので1つ1つは短いですが、独自の取材力で様々な取材をしながら独自の視点で掘り下げています。

ネット社会の怖さのようなものも映し出されますが、彼女の真の目的はYouTubeでお金を稼ぐことではなくある目的のためでした。それのためにかなりのアクセス数を得るユーチューバーになり、目的を果たしていきます。はじめはドライな目で見ていましたが、次第に彼女の味方になってしまいます。

子供の虐待、シングルマザーの貧困、中高年の引きこもり、冤罪問題、ヘイトスピーチ、ネットの個人情報漏洩、隠された医療過誤問題。現在に蔓延る社会問題に目を背けることなくニュースにする彼女。ネットは便利ですが、怖いなぁと感じる物語も多く出てきます。現在の社会問題に焦点を当てていて自分の中でも色々考えることができて良かったです。

カフネ

2025年の本屋大賞受賞作品です。この本の題名になっている「カフネ」はポルトガル語で「愛する人の髪にそっと指を通すしぐさ」の事だそうです。ある男性が亡くなってその姉である生真面目な薫子と、相続人の一人に指名されていた不愛想な元恋人のせつなが中心となった物語。そんな二人が家事代行サービス会社「カフネ」での様々な人との出会いを通じて過ごす時間を描いています。

今世の中にある社会の問題、例えば、不妊治療や離婚、育児放棄、ジェンダー、社会格差、教育の不平等、など山盛りに盛り込まれています。二人は育ってきた環境が違う事から考え方も違く衝突もしますが、次第に心通わせてきます。多分世の中的に言うとせつなは嫌われそうな性格です。でも私はせつなにとても惹かれました。どんな環境にいても、どんな生活であっても美味しいご飯を食べると嬉しくなり、一時でも幸せな気分になります。そんな魔法のような料理を作ってくれるせつな。そして生真面目な性格から掃除をやらせたら天下一品な薫子は良い相棒になっていきます。

読み終わってから思ったのですが、亡くなった弟は姉と元恋人にプレゼントを送っていました。しかも元恋人には直接ではなく、真面目な姉に送って元恋人にも渡してほしいという手紙を添えて・・・もしかしたら弟はこの二人にはお互い性格は違うけど出会ったらよい相乗効果を生みそうだと感じ、敢えて出会わせるようなきっかけを作ったのかとも思ってしまいました。生活の基本は食事です。大事にしないとと感じられた作品でもありました。

人魚が逃げた

この本は銀座を舞台に、1章1章主人公が変わります。はじめ短編小説だと思って読み進めていましたが、実は目線(主人公)が変わる事で物語が違って見えるだけで最後の方になるとこれがそれぞれくっついてきます。全貌が明らかになってくるやつです。

あの時あの人が言ったこのセリフは自分側からみたらこう感じてしまったが言った方からすればこういう意味だったというような事が度々書かれます。人は同じ空間を過ごし同じ体験をしてもそれぞれが思う事は別で不思議な世界にいざなわれます。

自分が思っていたマイナスイメージが相手からしたらそういう意味ではなかったというケースが度々出てきて、ほっとします。最後にはそれぞれの登場人物がハッピーエンドになる予感で終わります。余韻が残り後味が良い小説でした。

いただきます

出たばかりの新書「いただきます」をaudubleで聞きました。19歳の何もやる気のない青年が割の良い仕事をお金のためだけに働き、仕事を転々としていましたが、ある日守衛室に勤務することになり、そこで一緒に働くおじいさんやおじさん達を通じて、成長していく姿が描かれています。最近ありがちなコスパが良い仕事を求める若者が人生の経験者たちにふれ考え方が次第に変わっていきます。

この本、今の若者に読んでほしいなと強く思いました。若者でなくても人生に迷っている人たちに読んでもらえたら目の前がパッと明るくなる本だと思います。特に仕事に対するくだりの部分で、本当に人生をかける仕事なんてぱっと現れるものではなく、なんでも誰でも出来る仕事から始まります。何の仕事でも始めは雑用です。守衛室などは誰でもできると考えられていますが、誰でも出来る仕事ほどやった人によって結果の違いがでてきます。その平均よりはみ出て出っ張ったところがその人の能力であり、それが溜まってくると凄い力になるということ。こんな考え方あるんだと感心しました。

また、人は成長するとき他の人や物から見えない何かをいただいていて、それで成長しています。魚一つ食べるにしても魚の命をもらって生かしてもらっています。魚だってどうしようもない人に食べられるより、立派な人の血や肉になった方が命を落とした甲斐があるというものです。私たちは魚の命をいただいて生きている。いただきますという言葉には深い意味があるということ。そして年配になったら自分が経験したためになる教えを誰かにあげるようにして人とのつながりが循環していくのかと壮大な考えも教えてもらえます。良本です。