匠の技

8月1日、東京国際フォーラムで開催された「ものづくり・匠の技の祭典」に足を運びました。もともとは顧問先の奥様がステージで発表されるとのことで応援に伺ったのですが、会場には想像以上に多彩な催しが用意されており、一日を通して大いに楽しむことができました。会場は伝統工芸、伝統文化、職業訓練、食、衣、住、工業といったテーマごとにエリア分けされており、それぞれでさまざまな体験プログラムが実施されていました。多くは無料または手頃な料金で参加でき、子どもから大人まで楽しめる内容となっていました。

私自身もいくつかの体験に参加しました。きんちゃく袋づくりでは手仕事の奥深さを感じ、消防栓の使い方講習では普段触れることのない設備について学ぶことができました。また、苔玉づくりに挑戦したり、プロから「絶対に取れにくいボタンの付け方」を教わったりと、実生活に役立つ知識も数多く得ることができました。どのブースでも職人や技術者の方々が丁寧に説明してくださり、その確かな技術と長年培われた経験に驚かされるばかりでした。

近年は機械化やデジタル化が進んでいますが、人の手によって受け継がれてきた技術や知恵には大きな価値があります。こうした祭典は、普段触れる機会の少ない匠の技を身近に感じられる貴重な場だと感じました。日本が誇る伝統や技術を次の世代へ語り継ぎ、未来へつないでいくことの大切さを改めて実感した一日でした。

ブテック

久々の池井戸潤氏の作品です。主人公の雨宮秋都は、大手銀行に勤務する優秀なバンカーです。しかし、顧客の利益よりも銀行の利益を優先する組織の方針に疑問を抱くようになります。本来、企業の成長や存続を支えるべき金融機関が、自らの利益を優先してしまう。その現実に納得できなかった雨宮は、銀行を退職し、自分の理念に共感できる小規模なM&Aブティックへ転職します。

そこから物語は大きく動き出します。雨宮たちは、後継者不足や経営難などさまざまな問題を抱える企業と向き合いながら、M&Aを単なる「会社の売買」ではなく、「会社を未来へつなぐ手段」として活用していきます。企業を救うために奔走する姿は非常に熱く、読み進める手が止まりませんでした。一般的にM&Aというと、「会社を売る」「買収される」といったネガティブなイメージを持つ方も少なくありません。しかし本作では、M&Aが従業員の雇用を守り、技術やブランドを次世代へ引き継ぐための有効な選択肢であることが丁寧に描かれています。もちろん池井戸作品らしく、組織の論理と個人の信念の対立も見どころです。大手銀行時代のしがらみや企業間の駆け引き、そして「誰のために仕事をするのか」という問いが物語の根底に流れています。

私自身、仕事柄、事業承継やM&Aに触れる機会がありますが、本作を読んで改めて感じたのは、M&Aの本質は数字や契約書ではなく「人」だということです。どれほど優れたスキームを作っても、その先にいる経営者や従業員の思いを無視しては成功しません。企業を救うとは何か。仕事の理念とは何か。そんなことを考えさせられる一冊でした。事業承継やM&Aに興味がある方はもちろん、池井戸潤作品が好きな方にもおすすめです。

有料老人ホームのルール見直し

厚生労働省では現在、「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」を開催し、有料老人ホームの運営ルールの見直しを進めています。背景には、高齢化の進展に伴う有料老人ホームの増加と、それに伴うさまざまな課題があります。特に議論されているのが、入居者保護の強化です。契約内容や費用体系が分かりにくいケース、介護サービスの利用実態が十分に説明されていないケースなどが指摘されており、今後は重要事項説明や情報開示の充実が求められる見込みです。

また、「囲い込み」と呼ばれる問題も大きなテーマとなっています。これは、有料老人ホームが特定の訪問介護や訪問看護事業所の利用を事実上誘導し、利用者の選択肢が狭められてしまう状況を指します。検討会では、利用者が自らサービスを選択できる環境づくりや、ケアプランの適正化についても議論されています。今回の見直しは、単なる規制強化ではなく、「利用者本位の介護サービス」を実現することが目的です。

医療法人や介護事業者にとっては、サービス内容の透明性や説明責任がこれまで以上に求められる時代になるでしょう。今後の制度改正の動向は、高齢者施設の運営のみならず、医療・介護業界全体に大きな影響を与える可能性があります。引き続き注目していきたいテーマです。

税理士試験の受験資格緩和

令和5年度(第73回)税理士試験から、受験資格が大きく見直されました。最も大きな変更点は、簿記論と財務諸表論の受験資格が撤廃され、年齢や学歴、職歴を問わず誰でも受験できるようになったことです。これにより、高校生や大学生、異業種で働く社会人など、これまで税理士試験を受験できなかった人にも門戸が開かれました。また、税法科目の受験資格についても緩和が行われました。従来は大学等で法律学または経済学を履修していることが求められていましたが、現在は「社会科学に属する科目」を履修していれば受験資格を満たすことができます。これにより、法学部や経済学部以外の出身者でも受験しやすくなりました。

この改正の背景には、税理士業界の人材不足や受験者数の減少があります。資格取得へのハードルを下げることで、若い世代や他業種からの挑戦を促し、将来の税務専門家を育成する狙いがあります。もっとも、受験資格が緩和されたからといって試験が簡単になったわけではありません。税理士試験は依然として難関国家試験であり、合格には高度な専門知識と継続的な学習が必要です。

私は以前から税理士試験の内容をどうすれば良いかというアンケートでは受験資格を撤廃すべきと言っていました。「挑戦する権利」が広がった意義は大きいと言えると思います。会計や税務に興味を持つ人が早い段階から学習を始められるようになったことは、業界全体にとっても歓迎すべき変化ではないでしょうか。

インボイス制度経過措置の見直し

令和5年10月にスタートしたインボイス制度では、免税事業者等からの仕入れについても一定割合の仕入税額控除を認める経過措置が設けられています。現在は令和8年9月30日まで、仕入税額相当額の80%を控除することが可能です。従来の制度では、令和8年10月以降は控除割合が50%に引き下げられ、令和11年10月以降は控除が認められなくなる予定でした。しかし、令和8年度税制改正により、この経過措置が見直されることになりました。

改正後は、令和8年10月から令和10年9月まで70%、令和10年10月から令和12年9月まで50%、令和12年10月から令和13年9月まで30%の控除が認められます。つまり、事業者への影響を緩和するため、経過措置の期間が2年間延長されることになります。一方で、経過措置の適用には新たな制限も設けられます。免税事業者1者当たりの年間仕入額について、1億円を超える部分は経過措置の対象外となります。これまでの基準は10億円であったため、大幅な引下げとなります。

インボイス制度開始から約3年が経過し、多くの事業者が制度に対応してきました。しかし、依然として免税事業者との取引は少なくありません。今回の改正は、制度への円滑な移行を図る一方で、将来的には適格請求書発行事業者との取引を基本とする方向性を維持するものといえるでしょう。免税事業者との取引が多い企業は、令和8年10月以降の控除割合の変更について早めに確認しておきたいところです。

急に具合が悪くなる

映画『急に具合が悪くなる』を観ました。この作品は、主演の岡本多緒さんが日本人として初めてカンヌ国際映画祭の女優賞を受賞したことで大きな話題となりました。さらに、高市首相がXで祝福のメッセージを投稿したこともあり、多くの人の知るところとなったのではないでしょうか。物語は、フランスの介護施設長であるマリーと、がん闘病中の日本人演出家・真理との交流を軸に進んでいきます。しかし私は職業柄、二人の交流だけでなく、介護施設経営の難しさや中間管理職としてのマリーの葛藤に強く引き込まれました。

印象的だったのは、介護職員の待遇改善を目指して給与を4%引き上げたいと考えるマリーと、役員たちとの会議の場面です。マリーは職員のために賃上げを訴えますが、役員側は「利益が減れば投資家が納得しない」と反論します。福祉の理想と経営の現実が真正面からぶつかり合う場面でした。また、マリーが推進する「ユマニチュード」という介護手法も重要なテーマとして描かれています。ユマニチュードは、人間らしさや尊厳を尊重するケアの考え方で、「①見る」「②話す」「③触れる」「④立つ」を基本としています。しかし現場では、「時間がかかりすぎる」「人手が足りない」という理由から反発するスタッフも少なくありません。改革には必ず賛成派と反対派が生まれます。介護の質を高めたいという理想と、限られた人員や予算の中で運営しなければならない現実。その対立は、介護業界に限らずあらゆる組織に共通する課題でしょう。

この映画を観ていて強く感じたのは、「効率と尊厳のどちらを優先するのか」という問いです。もちろん経営効率は大切です。しかし、人を支える仕事においては、それだけでは測れない価値があります。本作は、その難しいテーマを観る者に静かに問いかけてきます。さらに、真理自身がいつ容体が急変してもおかしくない状況にありながら創作活動を続けていること、そして真理が演出する舞台に関わる俳優の孫が自閉症であることなど、生きることや支えることに関するさまざまな問題が織り込まれています。一つの映画の中に、介護、医療、経営、終末期、障害者支援、家族関係、そして人間の尊厳という多くのテーマが詰め込まれており、どの視点から観るかによって全く異なる感想が生まれる作品だと思います。観終わった後に誰かと語り合いたくなる、そして「自分ならどう考えるだろう」と問い直したくなる、そんな奥行きのある映画でした。

ヴィックスヴェポラップ

アニメ『ちいかわ』にも登場することで知られる「ヴイックス ヴェポラッブ」ですが、大正製薬による販売が2025年9月30日で終了すると発表されたときは、「もう二度と買えなくなるのではないか」と心配になりました。ところが、その後、製造販売業務はイワキ株式会社が引き継ぎ、販売総代理店としてマルマンH&Bが担当することとなり、2026年4月頃から再び出荷されることが分かりました。今回の販売終了は、商品そのものがなくなるわけではなく、日本国内で販売を行っていた大正製薬と「ヴイックス」ブランドを保有するP&Gとのライセンス契約が満了したことによるものでした。大正製薬は販売を終了しますが、新たなパートナーのもとで国内販売が継続されることになったのです。発表を聞いたときは、「これはバーバリーが日本のライセンス契約終了によって三陽商会から離れたときと同じ流れなのか」と少し寂しい気持ちになりました。しかし結果的には販売が継続されることになり、長年の愛用者としては本当に安心しました。

ヴイックス ヴェポラッブは、胸や喉に塗ることで鼻づまりやくしゃみなどの風邪症状を和らげる商品です。幼い頃に親に塗ってもらった記憶がある方も多いのではないでしょうか。私にとっても代わりのきかない存在であり、これからも店頭で購入できることを素直にうれしく思います。それにしても、ライセンス契約というものは本当に怖いものです。税理士という仕事柄、会社の価値というと売上や利益に目が向きがちですが、実際には「ブランド」という目に見えない資産が非常に大きな価値を持っています。どれほど有名な商品であっても、自社でブランドを保有していなければ、契約が終了した瞬間に販売できなくなってしまうことがあります。

消費者から見れば「ずっとそこにある商品」でも、企業側から見れば契約によって成り立っている商品は少なくありません。今回のヴイックス ヴェポラッブの件は、ブランドやライセンスといった無形資産の価値の大きさを改めて感じさせる出来事でした。商品が残るかどうかは、工場や設備ではなく、一枚の契約書で決まることがある――。そう考えると、ライセンス契約の世界はなかなか奥が深く、そして少し怖いものだと思いました。

ソフトクリームの進化

当事務所が入っているビルの1階にはミニストップがあります。ミニストップといえば、昔からソフトクリームが美味しいことで有名です。定番の「北海道ミルクソフト」は今でも人気ですが、それとは別に季節限定の商品も定期的に発売されています。一昔前までは、「北海道ミルクソフトは美味しいけれど、期間限定商品はそこまでではない」という印象を持っていました。ところが最近、その考えを覆される出来事がありました。

まず食べたのは、現在販売されている「岡山白桃ソフト」の前に発売されていたバナナフレーバーのソフトクリームです。産地は忘れてしまいましたが、「どうせ定番のミルクソフトの方が美味しいだろう」と半信半疑で食べてみました。ところが、一口食べて驚きました。「なんだこれは!」想像していたような大味なバナナ風味ではなく、香りも味も非常に上品で、まるで本物のバナナ以上に“バナナらしい”と感じるほどの完成度だったのです。正直、ここまで美味しいとは思っていませんでした。

そして、そのバナナソフトがあまりにも美味しかったので、今回発売された「岡山白桃ソフト」も試してみました。これがまた美味しいのです。桃特有の甘い香りやみずみずしさがしっかり再現されており、本物の白桃にかなり近い味わいに仕上がっています。もちろん本物の桃そのものではありませんが、「白桃をソフトクリームで表現する」という点では見事な完成度だと思いました。

定番の北海道ミルクソフトの美味しさは今も健在ですが、最近の期間限定商品はそれに匹敵する、あるいは種類によってはそれ以上の満足感を与えてくれます。ミニストップの商品開発力と技術力には、ただただ脱帽です。

さよならドビッシー

『さよならドビュッシー』を読みました。『このミステリーがすごい!』大賞受賞作です。ジャンルとしてはミステリーに分類されますが、トリックや謎解きが前面に出た作品というより、小説としての魅力が強い作品だと感じました。もちろん最後の最後には驚くような真相が待っています。読み返してみると「あの場面は伏線だったのか」と思う箇所はいくつかありますが、そこから真相にたどり着くのは非常に難しく、おそらく多くの読者が見抜けないのではないでしょうか。

そのため、「犯人や真相を当ててやろう」という気持ちで読むと、見事にやられてしまいます。むしろ、瀕死の重傷を負いながらもピアニストを目指す少女が、岬先生という師匠と出会い、困難を乗り越えながら成長していく物語として読むと、とても楽しめる作品です。また、ピアノ演奏の描写が実に秀逸でした。文章を読んでいるだけなのに、まるで実際に音楽が流れているかのような高揚感があります。音の強弱や響き、演奏者の感情までもが伝わってくるようで、音楽小説としても高い完成度を感じました。

すっかりこの世界観に魅了されてしまい、続けて『さよならドビュッシー前奏曲』、『おやすみラフマニノフ』、そして『いつまでもショパン』まで一気に読んでしまいました。ミステリーとしても、音楽小説としても楽しめる一冊です。シリーズの入口としてもおすすめできる作品だと思います。

PayForexとWise

近年、海外送金に関する相談が増えてきました。特に「会社で利用している金融機関から海外送金ができないが、どうすればよいか」というご相談を受けることがあります。調べてみると、海外送金サービスとして「PayForex(ペイフォレックス)」と「Wise(ワイズ)」が有力な選択肢として挙げられます。それぞれ特徴が異なるため、送金先や利用目的に応じて使い分けるとよいでしょう。

【PayForex(ペイフォレックス)の特徴】
・アジア圏への送金に強い
中国、韓国、フィリピンなど、アジア諸国・地域への送金に特化しています。
・送金スピードが速い
現地の提携ネットワークやEウォレットを活用しており、最短で即時、または数時間程度で着金するケースもあります。
・手数料体系
送金額や送金先によって所定の送金手数料が発生します。また、為替レートには独自のスプレッド(為替手数料)が含まれています。
・多様な入金方法
銀行振込だけでなく、コンビニ入金やセブン銀行ATMからの現金入金にも対応しています。

【Wise(ワイズ)の特徴】
・実際の為替レートを採用
Googleなどで確認できるミッドマーケットレート(実勢為替レート)を利用しているため、為替差益による隠れコストがありません。
・手数料が比較的安い
各国の国内送金ネットワークを活用する仕組みにより、従来の銀行送金と比べて大幅にコストを抑えられる場合があります。
・対応通貨・送金先が豊富
50種類以上の通貨に対応し、世界170以上の国・地域への送金が可能です。
・マルチカレンシー口座機能
複数の通貨を一つのアカウントで保有・管理できるため、海外取引や外貨受取の機会が多い方には便利な機能です。

【どちらを選ぶべきか】
PayForexは、中国や台湾、韓国、フィリピンなどアジア圏への送金が中心の方や、銀行振込以外の方法で日本円を入金したい方に向いています。一方、Wiseは、実勢為替レートによる透明性を重視する方、ヨーロッパやアメリカなど幅広い国へ送金する方、複数通貨を管理したい方に適しています。海外送金では、送金手数料だけでなく為替レートに含まれるコストも重要です。利用する国や送金頻度、金額によって有利なサービスは変わりますので、事前に比較検討してから利用することをおすすめします。