よくがんばりました

幼少期にお酒ばかり飲んであまり働かない父から逃げるように、母と二人で暮らして育った50代の中学教師の男性の元に警察から父が亡くなったという知らせが届きます。もう関係ないからと突っぱねますが他に親族もいないので面倒ながら故郷の愛知県に戻ります。時期的にだんじり祭り(西条祭り)の最中で、否応なしに子供の頃のだんじり祭りを思い出します。父との忘れていた記憶まで思いだします。父に愛された記憶がないという幼少期でしたが、自分が中年になって愛されなかったのではなく父が不器用だったのだと知ります。

父は、昔住んでいた時のままボロボロの家に住み、人が住んでいたとは思えないくらい物が少なく整頓された家の中、あの頃と同じ貸本屋を今も続けていたという現実。父が必要とされる人にある本を受け継いていたこと。自分が知らなかった父の姿を知る事になります。昔の嫌な思い出ばかりの幼少期ですが、だんじり祭りの時だけワクワクして気持ちも高まった事も思いだします。豪快なだんじり祭りの描写にはお祭りが持つパワーのようなものを本を通じて伝わってきました。父が唯一残しただんじりの法被(はっぴ)。そして思い出の本。

主人公は人に迷惑をかけてはダメだと思って生きてきましたが、迷惑をかけたくないと思っていても、家族はそんなことはできなくお互い様で迷惑をかけながら共に生きていくのが家族です。家族とは迷惑をかけるものなのだという言葉にとても深いものを感じました。人にはそれぞれの人生があり、それぞれが頑張って生きています。よくがんばりました。と言って貰えるような生き方がしたいと思いました。

総則6項

相続税の申告は基本的に相続税評価額をもって金額を算定します。でも財産評価基本通達の総則の第6項(いわゆる総則6項)というものもあって、これは取扱通達(法律ではありません)ですが、「相続税評価額で評価することが著しく不適当である場合には、国税庁長官の指示を受けて評価する」というものです。総則6項は伝家の宝刀の規定なのです。

タワーマンション節税対策で有名になりました判例があります。2008年当時90歳だった被相続人が信託銀行に相談して相続対策として2棟のマンションを14億円で購入して信託銀行から10億円借りました。このマンションの相続税評価額は2棟で3億円、つまり、相続税の課税価格は3億円なのに債務控除が14億円できるという節税対策を信託銀行がやったのです。それをこの評価は適当ではないとして3億円の追徴課税を行なったというのが流れです。

この判例は信託銀行が作成した稟議書に相続税対策のためと書かれていたり、節税対策だけのためにやっているというのが明らかだったため負けましたが、全てのタワーマンションでこんなことが行われるわけではありません。通達によって評価するのが著しく不適当かどうかというのは書くのは簡単ですが、判断はとても難しいです。課税の公平性を著しく害することが明らかなどの特別な事情が必要だとされていて、今回の争点となりました。つまり税逃れの意図が強く出る行き過ぎた節税対策が危険だということになります。

私がこの申告をする税理士だとしたらどうしたかというと、やはり相続税基本通達の3億円で評価していたと思います。行き過ぎた節税だと思っても自ら14億円では評価しないです。税理士は皆そうだと思います。ですから総則6項は税理士泣かせの規定でもあります。伝家の宝刀が行き過ぎないように私たち税理士も行き過ぎ総則6項には、反論しなければなりませんし、節税だけの金融機関のアドバイスにも厳しい目を向けなければなりません。

譲渡所得

確定申告をやっていて感じる事はここ2~3年の土地・建物の譲渡所得は税金が出ているという事です。それより前は、家を買って売る場合、最低でも2~3割安く売るのが普通でした。ところがここ2~3年の土地と建物の譲渡所得は軒並み利益が出て税金が発生しているものばかりです。そう考えると不動産バブルは間違いないです。当事務所のマンションもかなり高騰していて、今売ればお金持ち?と言わんばかりですが、売っても新しいところを買わないといけないので売りませんが・・・

お客様が抱えていた負動産(なかなか売れなかった利用目的のない資産)も売れています。おそらく新築物件が資材の価格急騰でとんでもない価格になっているので、みなさん中古物件に手を出すのだと思いますが、それにしてもすごい勢いです。しかも売却益も何千万円と出ています。一時は人口が減っているから不動産は必要なくなるので大暴落するという説が10年前くらいに叫ばれていました。でも今はこんな状態です。この不動産バブルはいつまで続くのでしょうか?

税法もその時期の政策的背景を考慮して税制改正がされることがあります。それをいち早くキャッチして顧客にお伝えするというのも税理士の使命だと思いました。先日まで寒かったのにいきなり暖かくなり、桜ももうすぐ咲くとか言われています。もうすぐ春ですね。うちのスタッフの花粉症も凄い事になっています。

年金繰り下げ受給

年金制度改正法では昨年4月より繰り下げ受給が従来の70歳から75歳に延長されました。これは原則65歳で受け取れる年金を繰り下げることにより(つまり支給を遅らせることにより)1カ月あたり0.7%が上乗せされるので、3年遅らせて68歳より支給することにすれば0.7%×36ヶ月の25.2%の増額となります。これまでの繰り下げる年齢の上限は70歳だったため42%の増額がマックスでしたが、75歳になったことにより最大で84%の増額となります。

つまり長生きする人は75歳まで繰り下げ受給した方が得しますが、短命な場合、例えば70歳まで繰り下げたが実際には68歳で亡くなったりすると1円も貰えずに亡くなるという事になります。その場合でも増額なしの金額が遺族に一括支給されます(遺族の一時所得になります)最終的に何歳まで生き続ければ繰り下げ受給が得になるのか?については、何と厚生労働省が目安を示しています。65歳で支給するよりも受給総額が多くなるタイミングとして70歳開始なら81歳まで生きれば多くなり、75歳開始なら86歳まで生きれば多くなります。長生き家系の人は考えてみてはどうでしょうか?

それ以外の注意点としては、厚生年金の家族手当と呼ばれる加給年金というものがあります。これは厚生年金に20年以上加入している人が65歳になった時に高校生までの子供がいたり65歳未満の配偶者(扶養されている配偶者のみ)がいると、1人当たり223,800円が支給されます。つまり受給年齢を遅らせて子供が高校を卒業してしまったりしていたら上乗せ支給も受け取れなくなります。ですから働いていない自分より若い妻がいたり、子供が遅い年齢で生まれた人などは計算が複雑になります。相談する士業は社会保険労務士ですが、年金事務所なども相談に乗ってくれます。是非ご活用下さい。

シャイロックの子供たち

池井戸潤氏の小説を映画化したものです。池井戸氏の作品は映画を観る前に読んでしまっている作品が多かったのですが、この小説は読んでいなかったのでラッキーでした。最初に小説を読んでいると内容も分かるし自分自身が作った人物像のイメージがあるので、そのイメージとかなりかけ離れていたりするとちょっとがっかりしたりします。小説も映画も観ると二度おいしいという利点もありますが、映画を観る時、新鮮でないという欠点もあります。こちらは小説を読んでいない分新鮮でした。

池井戸氏の作品は銀行員が登場する小説が多いですが、これは銀行内部の事を描いているので作者的にはドストライクなのでしょうか。それにしても銀行内部は善人少数派でほぼ悪人の塊のような内容でした。銀行勤務時代何かあったのかと思わせるほど、悪人だらけでちょっと笑ってしまいました。また、銀行からお金が無くなった謎を探るというミステリーかと思いきや全て映画を観る側は分かっていて、登場人物だけが分からないという通常とは逆な攻め方をした映画でその点も斬新でした。

謎を解きながら観るというのがミステリーの醍醐味ですが、この映画は、裏は始めから明かしていて、お金を無くしたとされる営業マンと盗んだとされる窓口係だけが善人であとは悪人という一見悪人が実は善人で、善人とみられる人が悪人という、その部分が逆にミステリーなんだと思いました。ミステリーの見方を変えてくれた映画でした。小説もこのような作りになっているのかしら?と気になってしまい小説も読んでみたくなりました。

経理的センス

ビジネススクールで学んだ時に学生たちの実力の差が感じられたのが語学力と経理力です。この二つはできる人とできない人の差が激しかったです。ちなみに私は語学力は落ちこぼれで、経理力は成績優秀者です。普段会話をしていてお金の話になると、その人が経理的知識があるのかないのかが分かるときがあります。

例えば、お金を得る時のパターンは収入(売上や給与)の時と負債(借入金)の時があります。同じお金を得る事でも収入を得るのと負債を追うのでは天と地くらい違います。また、お金を支払う時のパターンは費用(消費)の時と資産(投資や財産)だったりします。これも使って無くなる費用といざという時に現金化できる資産とでは雲泥の差です。

このセンスがないと、つまり違いが曖昧だと、お金を借りられるだけ借りたり、財産を残さずにパーッと使ってしまったりします。常にお金を貰う時、支払う時にこれはどういう性質のお金なのかを意識するだけで生活が変わってくると思います。是非お試しあれ!

外国人患者受入マニュアル

この度、厚生労働省が「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」を発行しました。外国人旅行客が増え外国人患者も増えています。外国人が当医療機関に来た場合どのように対応したら良いかが詳しく載っているマニュアルです。全部で130ページもあります。詳しくはこちら↓
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000795505.pdf
PDFでアップしようとしましたが、容量が大きすぎて圧縮しても無理でしたのでURLを載せます。

医療滞在ビザと短期滞在ビザ(所謂観光ビザ)との違いや、保険診療ができないので医療費の設定方法、宗教上の対応や無料通訳アプリの紹介、来院時チェックリスト、優しい日本語研修ガイドなどとても充実したマニュアルになっております。一部印刷して保管しておいても良いくらいです。うちは外国人は来ないからと思っている医療機関もいざという時のために目を通しておくと良いかと思います。少し見ましたが、ちゃんと作っているという印象でした。

彼女の家計簿

主人公のシングルマザーの元に祖母のものと思われる家計簿が送られてきます。家計簿といっても米〇〇銭などと書かれている右側にその日に起こった一言日記のようなものが記載されてあります。それを読むと昭和初期の時代背景が分かったり母と祖母との関係なども次第に分かっています。女性三世代の生き様などが描かれています。また、縦の繋がりだけでなく、女性を助けるNPO法人の代表を通じて横の繋がりである様々な女性の生き方というのが垣間見れます。

この本を読んで昭和初期の女性は自宅以外で働くという事が一般的でなかったという事。祖母は祖父が戦争から帰ってきても職がなかったため、小学校の教師として働き続けましたが、よく考えてみるとお金の為ではなく、職を通して生き甲斐のようなものを感じています。祖母が駆け落ちしようとした男性に最後に言われた一言「僕だったら君を働かせたりしない。一生守る」この言葉で駆け落ちを止めたのです。当時駆け落ちしようとしていた男性は自分の事を理解していると思っていましたが、自分は働きたくて働いているのであって無理して働いているわけではなかったというのが理解されていませんでした。当時は女性は守るもので家に居るものだったのです。

祖母はいつか女性が自分らしく働きたいなら働ける世の中が来てほしいという希望を持って生きていました。また、残してきた子供への愛情を持ったまま亡くなっています。何とも切ない気持ちになる小説でした。現在では女性が様々な職業について働いています。働く女性も珍しくなくなりました。でもジェンダーギャップ指数などを見ると日本での女性の地位は低く、諸外国に比べるとまだまだです。この小説に出てくる様々な立場の女性を見てどう生きるのが良いか色々考える機会ができました。多くの女性に読んでもらいたい本です。

ふるさと納税って税金かかる?

先日顧客から問い合わせが着ました。「ふるさと納税ってやり過ぎると税金がかかるって聞いたのだけれど・・・」という質問です。50万円以上だと一時所得がかかるとか。その方は80万円位ふるさと納税をやっていたので焦っていました。寄付をした金額が50万円以上ではなく、返礼品(貰ったもの)が50万円以上です。貰ったものって物なのでいくらなのかよく分かりません。そのような時どうしたら良いかです。

ふるさと納税の返礼品は寄付した金額の30%までと制度で決まっています。地方自治体から見ると10,000円の寄附をもらったら3,000円までの返礼品しか送ることができません。ですから、寄付した金額の30%が貰った金額として試算すると良いと思います。これを逆算する166万円位までの寄附ならギリギリいけそうです。でも注意しなければならないことがあります。これは一時所得がふるさと納税だけだった場合です。

一時所得はふるさと納税だけではないので、それを合わせて50万円以下にする必要があります。大きな金額として影響してくるのは保険の解約返戻金です。保険の解約返戻金は一時所得になるので大きな保険を解約すると単体でも税金がかかるケースが多いです。ですから保険を解約する年は特に注意しなければなりません。その他としては、細かいですが、全国旅行支援も得した分の金額は一時所得です。イベント割で割引かれた金額も一時所得。最近の事例としてはマイナンバーカードに保険証や銀行口座を紐づけると貰えるマイナカードのポイント分も一時所得です。住まい給付金や地域振興券も一時所得です。こう見ると一時所得はふるさと納税だけではなく色々該当するのが分かります。

なお、一時所得ではなく非課税なものもあります。失業保険や生活保護手当、児童手当、被災者生活再建支援金、臨時福祉給付金、子育て世帯臨時特例給付金、年金生活者等支援臨時福祉給付金、東京都認証保育所の保育料助成金などは非課税です。生活困窮者や生活支援にかかるものは非課税ですが、その他に得してしまったものは一時所得となる可能性が高いので、そのようなものと合わせて50万円を超えないようにしなければ追徴課税の可能性が出てきます。ご用心を・・・

遺言書の保管制度

遺言は公正証書遺言が一番おすすめですが、公正証書にするほどではないけど、残しておいた方が良いかもという人のために、自筆証書遺言書の保管を法務局に申請することができます。自筆証書遺言は手軽ですが、紛失リスクや改ざんなどのリスクがありますし、遺言書が見つかった場合、裁判所の検認手続きが必要となります。例えば自宅から遺言書と書かれた封筒が見つかった場合、勝手に開封したりすると5万円以下の過料に処されます。ですからそのような封筒が見つかった場合、裁判所に検認の申立てをします。

検認の手続きは意外と面倒です。しかも相続人が行わなくてはならないため相続人に迷惑をかけたくない場合は、自筆証書遺言保管制度を利用しましょう。この制度は法務局が自筆証書遺言を死後50年間預かってくれるものです。画像データであれば死後150年間預かってくれます。自筆証書保管制度には通知制度があり、遺言者があらかじめ死亡時通知を希望している場合は、その通知対象とされた方に対して、遺言書保管所に保管されている旨のお知らせが届きます。また、相続人等の誰かが遺言書保管所において遺言書を閲覧したりすると、その他の相続人等全員に対して遺言書が遺言書保管所に保管されている旨のお知らせが届きます。

注意点としては、公正証書遺言と違って遺言書の有効性を保証するものではないため、できれば専門家に見てもらった上で保管することをお勧めします。遺言書保管制度についてはこちらの資料が詳しく載っています。⇒自筆証書遺言保管制度