100円のコーラを1000円で売る方法



主人公は会計ソフトウェア会社で10年間営業をしてきて数々の武勇伝を残してきた女性です。セールスはもう十分で今度は商品企画をやりたいと本人が希望して異動します。商品開発は初めてでした。自信あるコンペで自分が提案したものは100%顧客の要望を満たし、価格でも一番低く抑えたのに、ライバル社(そこでの提案者も女性)は顧客の要望を一部満たしていなくて価額も高いのに負けてしまいます。そこがスタートです。

100%要望に応え価額も安いのに何故??卑怯な手を使った?と疑いますが、何故顧客がそちらを選んだかの理由を知り愕然とします。ライバル社は顧客の要望で間違っているものは間違っていると否定し、それの上をいく提案をしていたのです。

主人公はライバル社に勝つために価額を半額に下げて一気に売上を伸ばして会計ソフトの世界を変えるという提案をします。それを聞いた与田(マーケティングのプロである上司)は、やる前から負けることが確実な最悪な勝負だと言い放ちます。ライバル社の市場シェアは32%、自社は10%なのです。つまりライバル社はマーケットリーダーで自社はマーケットチャレンジャーなのです。低価額戦略が取れるのはマーケットリーダーだけで、チャレンジャーがそれをすると自社が苦しむだけでなく、そのマーケット全体も低迷するのです。チャレンジャーが低価額戦略を取る場合、初めは多少チャレンジャーの方に顧客は流れ込みます。ただ、リーダーが低価額に合わせたらおしまいなのです。コストリーダーシップ戦略が使えるのは市場シェアが1番大きいライバル社だけだということを上司の与田から学びます。成熟市場においてチャレンジャーがコストリーダーシップ戦略を取れば確実に薄利多売になり業界全体を衰退させます。(コストリーダーシップ戦略については2010.3.9のカテゴリーMBAの戦略 ブログ参照)

そこから市場志向と製品志向を学び、ブルーオーシャン戦略、チャネル戦略、Win-Winの関係、値引きの怖さやバリューセリングを学びます。

この本は「ザ・ゴール」(2010.4.22のカテゴリー本のザ・ゴール参照)に似ています。ザ・ゴールは物語形式でTOC(制約条件の理論)を教えるものですが、この本は物語形式でマーケティングの基礎を教えるものです。主人公が女性というのもいまどきで引き込まれるように読むことができます。

本とは関係ないですが、ここに書いてあることは殆んどビジネススクールでU教授から教えて貰いました。当時の授業を思い出し授業を聞いてワクワクした気持ちさえ再現できました。マーケティングの基礎を学ぶにはとても良い本だと思います。