東京税理士会の調査研究部の先輩からこんな本を頂きましたのでさっそく読んでみました。山本守之税理士の伝記のような本でした。山本守之先生は税理士業界でかなり有名で税理士であれば誰もが知っている人物です。昭和一桁生まれで、かなり大変な幼少期を過ごしていました。親も身体が弱く色々な仕事をしていました。山本先生が高校を卒業した時は不景気で就職先がなく、たまたま新聞に「税務補助職員募集」がありこの試験に合格し初任給4,000円で税務講習所(現在の税務大学校)に入ったのです。そこで1年間勉強し税務職員になります。税務署のOBは簿記3級程度の特別試験を受けると税理士になれるのですが、山本先生は敢えて困難な道を選択し21歳の時から一般国家試験に挑戦して5年間で5科目合格して税理士になっています。
税理士として開業後に税理士試験の受験指導をしたり業務を業務を拡大したりしながら税理士としての道を歩んでいました。税理士になってからの世の中の流れや消費税の変遷などにも触れ、税理士は学者じゃないから理論的な事ばかりでなく、いかに実務というのに理論的思考を当てはめていくかなど学者にはできない実務をやっている税理士だからこそ分かる観点にとても共感しました。特に消費税や税理士法については深い考察をされていてとても参考になります。講師や大学の客員教授などもやっていましたが自分は学者ではなく、実務家だと言っています。
後半には税務の各論にも触れていて、過去に税務に絡んだ裁判になった事例を挙げて、それについても考察しています。租税法律主義ですから正しく法律を理解することも大事ですが、ただ単に法形式によって判断するのではなく、取引の事実や実態をしっかりみて判断することが大事だと言っています。通達という法解釈が必ずしも正しいとは限らなく、税理士は実務家として実務・実態に即した法解釈が大事なのです。これからも正義とは何か。事実とは何かということに向き合って税理士をやっていこうと深く思わせてくれた本でした。