広大地評価の見直し

今回は相続税の財産評価のお話です。まず、広大地とは、著しく地積が広大な宅地で開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められる、面積が1,000㎡(三大都市圏では500㎡)以上の宅地をいいます。ただし、大規模工業用地・中高層集合住宅等の敷地用地に適しているものは除かれます。

実務では、マンション敷地用地に適しているか、公共公益的用地の負担が認められる用地かなど、広大地に該当するか否かの判断は不明確であり、税務訴訟や審査請求・損害賠償請求などトラブルが多発しました。そこで、平成30年1月1日以後の相続等からは、現在の広大地は廃止し新たに「地積規模の大きな宅地の評価」として規定されることになりました。旧広大地評価では、最大65%の評価減になりましたが、新広大地評価では、相続税評価額と取引価額(時価)との乖離を是正した制度となります。

改正により従来判断に迷うことが多かった要件が明確化され実務上の評価方法をより明確に行えるようになるのは税理士からするとメリットですが、形状や奥行を考慮した補正率によって形状が良い広大地は相続税評価額が上がる可能性が高まります。ご注意を・・・

異動届出書

事業所を移転して所轄税務署が変わった場合、異動前の所轄税務署と異動後の所轄税務署に異動届出書を提出します。以前からこの件については煩わしいな。税務署同士で何とかしてくれないかと思っていました。

平成29年4月1日より異動前の納税地の所轄税務署長へ提出すれば手続きが完了するようになりました。所得税や消費税についても同様の取り扱いになっており、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書についても異動前の所轄税務署長への提出で完了となるワンストップ化がスタートしました。

また、法人設立届出書等には「登記事項証明書」の提出が義務付けられていましたが、4月1日以降は不要となりました。この簡素化は国税のみなので都道府県や市町村に提出する届出書は今まで通り異動後の都道府県・市町村へ提出しなければなりませんし、登記事項証明書の添付なども必要です。

退職金と弔慰金の税務上の取り扱い

退職金はご存知の通り退職に起因して会社などから支払われる金品です。退職金に関する税金については知っている人も多いと思いますが、もらった金額から退職所得控除額というのを控除することができます。退職所得控除額は勤続年数によって控除できる額が変わっていき、勤続20年までは1年につき40万円、20年を超えると1年につき70万円控除できます。ですから勤続18年ですと40万円×18年=720万円となり、勤続25年ですと40万円×20年+70万円×5年=1150万円となり、それ以下の退職金の場合、税金はかからないということになります。もしそれを超えてしまってもさらに2分の1をした金額のみ課税対象となりますので、退職所得は他の所得に比べかなり優遇された所得となります。これは生きたまま退職金をもらう場合です。

では、死亡による退職金の場合はどうなのでしょうか?死亡による退職金は上記による税金とはかなり違います。上記は本人が退職金を受け取りますが、死亡してしまったら受け取れませんので、退職所得(所得税)の範疇ではなく、相続税の範疇となります。相続税の場合、もらった退職金は遺族に渡されますが、それが丸々相続税の課税対象となるわけではなく、非課税限度額というのが設けられています。それは勤続年数などにかかわらず、法定相続人の数によって決まっています。500万円×法定相続人の数が非課税限度額です。ですから法定相続人が、妻と子供2人の場合、合計すると3人になりますから500万円×3=1500万円までは相続税の課税対象となりません。それを超える金額のみ相続税の課税対象になります。

そのほかに弔慰金というのがあります。これは遺族に対して会社などが支払いますが、こちらについても非課税限度額があって500万円×法定相続人の数となります。退職金と弔慰金はそれぞれが別に非課税限度額を設定できますので規程等を整備してうまく活用していですね。

結婚資金贈与特例

6月の結婚といえばジューンブライドで結婚式場では特別プランを打ち出すところもあるようです。以前からあった2000万円教育資金贈与ですが、2015年から結婚や育児資金の贈与について非課税制度ができました。

これは結婚・妊娠・出産・育児に関する費用の贈与を受けた20歳以上50歳未満の子や孫が最大1000万円(結婚資金に限っては300万円まで)贈与税を課税されない特例です。結婚資金で非課税になるのは、挙式費用・結婚披露宴費用・新居家賃や敷金・転居費用などです。

この制度の贈与を受けた者が50歳になる時点で使い切っていないと残額に贈与税が課税されます。また、贈与を受けた側が50歳未満であっても贈与をした人が死亡した場合、使い切っていない残額が残余財産に加算され、相続財産になってしまいます。教育資金贈与ではそれはないので、その点は注意点となります。ただ、通常の相続では孫やひ孫はその親が生きている場合、相続税の2割加算の対象になりますが、この特例を使って受け取った財産は2割加算にはなりません。

ですから贈与を受ける人が孫の場合、相続税において一定の節税効果があります。ただ、贈与を受ける子が50歳に近い場合や贈与をした人が高齢な時は、やっても意味がない場合もあるので注意が必要です。

法定相続情報証明制度

平成29年5月29日から法定相続情報証明制度が始まります。相続税の手続きをしたことがある方ならご存じだと思いますが、相続税の申告には被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本が必要になります。結婚や転籍をしている場合などは、本籍の市町村毎に戸籍謄本と取り寄せなくてはなりません。出生から死亡までちゃんと繋がっているかもポイントです。

戸籍謄本を収集する相続人の負担だけではなく、戸籍謄本を受け取る法務局などでも相続人の特定作業に時間がかかることから、被相続人の不動産を登記しないまま放置されてしまっている不動産が増加して所有者不明土地問題が起こっています。そのためこの作業を簡素化するため、戸除籍謄本等を収集し法定相続情報一覧表を作成して登記官に確認をしてもらい、法定相続情報一覧図を登記所に保管してもらう制度ができました。

これは無料で何通も交付してもらえるので銀行や証券会社などの名義変更の際にも利用できます。これから始まる制度なので不動産や銀行預金・証券を多数お持ちの方は是非活用すると便利だと思います。参考資料を添付しますのでご覧ください。法定相続情報証明制度(概要)
法定相続情報証明制度(詳細)

タワーマンション課税の見直し

居住用町構想建築物(いわゆるタワーマンション)に対する固定資産税が改正されます。タワーマンションの固定資産税や相続税は床面積に応じて課税負担が決まっていました。つまり同じ物件の2階で70㎡のマンションと50階で70㎡のマンションでは、購入した時の価格は倍以上違ったとしても固定資産税や相続税評価額は同じだったのです。ですから、いわゆるお金持ちは高層階の高いマンションを購入し、相続税評価額は安くして相続税の節税を図っていたのです。ところが平成30年度からあらたに課税されることとなるタワーマンションについて、高層階の住居は課税を増額し、低層階の住居は課税を減額することとなりました。

現行では、建物全体の税額×各住戸の専有床面積/専有床面積の合計で計算されていますが、改正後は、建物全体の税額×各住戸の専有床面積×階層別専有床面積補正率※/専有床面積補正後の合計となります。
階層別専有床面積補正率は、最近の取引価格の傾向を踏まえて、1階を100として1階増すごとに、10を39で除した数を加えた数値です。この計算をすると低層階ほど金額が低くなり、高層階ほど金額が高くなります。また、この対象となる建物は高さが60メートルを超える建築物とされていておおむね20階以上くらいの物件が対象となります。

こちらは固定資産税・都市計画税の改正ですが、固定資産税評価額を課税標準とする相続税や、不動産取得税も同じように連動して改正が影響することになります。

不動産取引が非居住者である場合の注意点

「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています(国税庁のHPより)例えば、A株式会社がBさん(非居住者)から1億円で土地を購入した場合、A株式会社はBさんに1億円を支払う義務を負うわけですが、Bさんが非居住者なら20,420千円(1億円の20.42%)は税務署に源泉徴収として納税し、残りの79,580千円をBさんに支払います。ところがA株式会社がBさんに1億円支払ってしまうと、税務署はA株式会社に源泉徴収の義務を怠ったとして、20,420千円の支払いを命じます。

ここまでなら、そうか外国人と土地取引をしている場合に注意すれば良いのかと思います。ところがこういう事例があります。Bさんが以前は日本に住んでいましたが、渡米して米国籍を取得して日本には米国発給の旅券で入国して、たまに日本に来るものの日本の滞在期間は数か月というものです。契約書には日本の旧住所などを記載している場合などがありますので、注意が必要です。例えば、売買取引口座が外国口座だった場合などは、まず非居住者であると考えて良いでしょう。なお、これはA株式会社が会社だったから源泉徴収義務者になるのであって、Aさんというサラリーマンの個人でしたら、源泉徴収の義務はありません。

老人ホームの駐車場の固定資産税

住宅や併用住宅(居住部分の割合が1/4以上である家屋に限る)の敷地としての土地は固定資産税が軽減されています。住むための住宅の土地の固定資産税を軽減するというのは理解しやすいと思います。ですから有料老人ホームの建物の敷地とされている土地は固定資産税が軽減されています。では有料老人ホームの駐車場はどうでしょうか?この度、都税事務所は駐車場として使用されている部分に関しては軽減対象にならないとして、固定資産税を賦課決定してきて裁判になり、東京地裁で判決がでました。

敷地の用に供されている土地であるかどうかは、土地と専用住宅又は併用住宅としての家屋と一体のものとして利用されているかどうかということで、本件の土地は供用住宅である家屋を維持し又はその効用を果たすために使用されている一画地の土地に含まれることから、敷地の用に供されている土地と認められ減額の対象となるという判決がでました。(平成28年11月30日東京地裁)

セルフメディケーション税制

平成29年1月からセルフメディケーション税制が始まります。

今まで確定申告で医療費控除をするというのは聞いたことがあると思います。この医療費控除は、実際に医療費が多額にかかった人に対して税金を返してくれるというものです。では、もともと大きな病気にならないように健康診断をしたり、予防接種をしたり、健康維持に心掛けている人に対しては今まで何の恩恵もありませんでした。(予防にかけたお金は医療費でないため)でも、それでは、努力した人が報われません。そこで新しい制度として導入されたのがセルフメディケーション税制です。医療費控除はほとんどの人が100,000円を超えないとできませんでしたが、セルフメディケーション税制は12,000円を超えれば適用(上限は88,000円です)になります。

セルフメディケーション対象の支払いは、健康診断、予防接種、インフルエンザ予防接種、健康診査、特定健康診査、特定保健指導、がん検診を受けた人が対象になります。そしてその人と生計を一にする家族のために薬局などで購入した医薬品が対象です。医薬品はアリナミンEXゴールドや大正胃腸薬SやバファリンEXなどなじみのある薬が対象になります。これらの検診の領収書とOTC医薬品を購入したときの領収書やレシートをとっておけばセルフメディケーションにかかる医療費控除の特例を受けることができます。

ただ、この制度は従来の医療費控除と選択適用のため、通常の医療費に係る領収書とセルフメディケーションに係る領収書の両方をとっておき、12月31日時点でどちらの税制が有利か判定し控除を受ける必要があります。セルフメディケーション対象医薬品については、下記をご覧ください。
セルフメディケーション対象品.pdf

医療費の領収書は分かると思いますが、薬局などで買ったOTC医薬品については、レシートの商品名の前に☆や※などのマークを付すとともにセルフメディケーション税制対象商品であるという旨が記載されます。今月からはレシート捨てないでくださいね。

平成29年度税制改正大綱 配偶者控除

配偶者控除をなくすとかなくさないとか数か月前から新聞やテレビで報道されていました。配偶者控除があるから、働く女性の年収の足かせになっている。女性が伸び伸びと働けるように配偶者控除は廃止すべきである。という意見や、子供が小さいし保育園も充分に手当されていないのに配偶者控除をなくされたらそれこそ家計が悪化するので存続させるべきである。と様々な意見が飛び交いどうなることやらと思っていました。

顧問先、特に女性のパートさんを抱える顧問先からは、テレビなどで、あぁだこうだ言っているけど、結論的にはいくらまで働けるようになるの?という質問です。結論だけ言うのであれば、130万円かしらというところ・・・世間では150万円という声が聞かれますが、150万円というのは所得税だけの話です。所得税より恐ろしい社会保険は130万円までなら、扶養で保険が付きますが、130万円以上になると夫の保険を外れて自分で社会保険に入らなければいけません。(従業員500人以上の大企業でのパートさんは既に10月から強制加入になっている場合もあります。→この点については、2016.2.22のカテゴリーFP「社会保険加入者の拡大」のブログをお読みください)ですから、150万円までとは言えないのです。その前に130万円の社会保険の壁があるからです。

社会保険は財源確保のために保険料率も年々アップし、加入者の範囲の拡大も行っているので、その部分の負担しなくても良いという方向性の改正については、かなり厳しいと思います。ですから、当分130万円の壁がそびえ立ちそうです。なお、この改正は平成30年からの適用となります。また、配偶者控除については、扶養する側の年収は制限ありませんでした。配偶者特別控除は、扶養する側の合計所得金額が1,000万円以上だと適用なしでしたが、平成30年より扶養する側の合計所得金額が1,000万円以上であるときは配偶者控除も配偶者特別控除も適用なしとなります。