令和4年度税制改正要望書

各省庁から来年の税制改正についての要望書が提出されました。それが以下となります。https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2022/request/index.htm

これを踏まえて来年の税制改正大綱が完成するわけで、今後秋にもっと細かい団体(例えば税理士会や中小企業庁など)が税制改正要望を出していきます。年末に国としての税制改正大綱が決まり来年3月の国会を経て4月から施行となるのが通常のパターンです。

これをじっくり読むと未来の税務が見えてきます。要望は必ず通るわけではありませんが、各省庁の考えが良く分かります。事業を営む者にとって、経営マネジメント力も大事ですが、こういった未来の税制を読むことで事業転換していくことも重要かと思います。中小企業の方は財務省や経済産業省の要望書だけでも見ておくと参考になります。また、医療法人についてはさらに厚生労働省の要望書を見ることをお勧めします。この国がどういう方向に行こうとしているのか少し分かります。

事業税減免

事業用として、省エネルギー設備や再生可能エネルギー設備を取得した場合、事業税が減免される制度があります。対象資産は、空調設備(エアコン)、照明設備、小型ボイラー設備、太陽光発電システム、太陽熱利用システムなどですが、詳しくは環境局が導入推奨機器としてホームページに随時更新してアップしているのでご覧ください。

減免額は取得価格の1/2(ただし、税額の1/2を限度とする)です。何と太っ腹!税額の1/2という限度額がありますが、その年に減免しきれなかった時は、翌年度の税額から減免できます。ですから実質50%オフで設備を購入できたのと一緒です。うちの事務所に昨年から今年にかけて取り付けたエアコン2台は減免の対象ではありませんでした(残念!)ですが、これから取り付けようとしている事業者様は、減免対象の物を購入するというのも手です。

減免を受ける時は、減免申請書を提出しなければなりません。例えば令和2年中に対象設備を取得して事業の用に供した場合には令和3年度の事業税の納付期限までに申請する必要があります。東京都の個人事業税の納付期限は第1期が8月31日、第2期が11月30日ですが、第1期に間に合わなかったとしても第2期までに申請すれば第2期の納付分の1/2が対象になりますので諦めないでください。
詳しくはこちら↓
事業税減免

法人契約保険の評価の見直し

保険商品と国税庁のイタチごっこは昔から何度も繰り返し行われてきました。保険会社は節税目的の保険を作り、行き過ぎると国税庁が税法や通達を改正するというものです。今回改正になったのは、法人で保険を契約して、当初は受取人が法人だったものの途中で解約返戻金相当額で受取人を役員に名義変更するという保険です。2019年7月8日以降に契約した保険(解約返戻金が資産計上額の70%未満の保険に限る)について、2021年7月1日以降に名義変更を行った場合には、評価が変わります。詳しくはこちら↓
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5364.htm

かいつまんで言うと、契約して数年は解約返戻金がとても少ない保険で、解約返戻金が少ない時期に受取人を法人から役員に名義変更します。役員は少ない解約返戻金相当額を支払い自分を受取人にします。数年すると解約返戻金が膨れ上がるという保険です。例えば資産計上額1,000万円、損金計上額600万円、解約返戻金契約後5年間は200万円だった保険があります。これを解約返戻金が200万円のうちに200万円で役員に買い取ってもらいます(もしくは退職金などにして処理します)ところが名義変更後数年したら解約返戻金が1,500万円位になる保険です。

今までの法人での処理は、退職金(もしくは現金)として200万円計上して保険積立金を1,000万円減少させます。差額は雑損失800万円として処理してきました。これを見ると役員は高い価値のものを安く自分のものに出来て、法人では800万円もの金額を損金処理できます。正に一石二鳥の節税商品です。ところがこのような保険は今年の7月1日以降に名義変更を行った場合には、解約返戻金相当額ではなく、資産計上金額で評価しなくてはいけなくなりました。つまり退職金(もしくは現金)として1,000万円計上して保険積立金を1,000万円減少させます。そうすると役員は高い金額で買い取る必要があり、また法人も雑損失という損金計上ができなくなります。また保険の節税商品封じ込みが行われました。要注意です。

配偶者居住権

昨年4月に配偶者居住権が施行されて1年経ちました。こちらが施行されて税理士として最初に思ったのは、相続が面倒くさくなるな。ということと、上手く使えばもの凄い節税になるな。ということでした。でも実際に1年経つと色々とメリットだけでなくデメリットも出てきました。そう。何でもそうなのですが、税務を複雑にすると、実務に落とし込んだ時様々な問題が吐出してきます。

まず、メリットとしては、自宅の評価が高い時、配偶者が全て相続してしまうと、遺留分の請求から今後の生活費である現金預金を相続できなくなる恐れがありましたが、その可能性が低くなり、配偶者も現金預金を相続できるゆとりができること。自宅の所有権を子供に設定して配偶者は配偶者居住権を設定することによって第二次相続の相続税が安くなること。

デメリットも出てきました。例えば何年かして配偶者が介護施設に入居せざるを得ない状況になった時、配偶者居住権を設定していない自宅を全て相続していたら、自宅を売って入居費用に充てる事ができましたが、配偶者居住権は売却できないので、病気を患って老人ホームに入りたくても自宅を売却して入居金に充てるという選択ができなくなります。配偶者居住権は親子の仲が悪くても配偶者に自宅に居住する権利を与えるという良い面だけでなく、親子の仲が悪ければ勝手に所有権を売られてしまう危険性すらあります。税務って難しいと感じる今日この頃です。

成人が20歳から18歳になります!

来年になりますが、2022年4月1日より、成人の年齢が20歳から18歳に引き下げられます。日本では成人は20歳ですが、他国での主流は18歳であることや、選挙権を18歳から与える事によって若者の意見も反映させようという狙いもあります。未成年者のローン契約等は親の承諾がないとできませんが、来年以降は18歳でも成人となりますので単独契約することができます。

税務ではどのような変更があるでしょうか。まず本人にとってのメリットは、相続時精算課税の適用者になれる。事業承継税制の受贈者になれる。贈与税の税率の特例が使えるようになる。直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の1,000万円までの贈与税の非課税を受ける事ができる。これらは全て20歳以上でないと適用できませんでしたが、来年4月からは18歳以上であれば適用できることになります。

では、デメリットはなんでしょうか。相続税の未成年者控除が受けられなくなる。住民税の非課税措置(未成年者は前年の合計所得金額が135万円以下であれば住民税非課税)が受けられなくなる。これらは未成年者の特権です。今まで18歳・19歳でしたら受けられていましたが、来年4月から18歳・19歳は成年になるので受けられないくなります。税務だけでも沢山ありますね。民法の契約事項を含めるともっと多くの事に影響します。今から備えておきたいですね。

令和3年度税制改正の傾向

最近の月次報告では令和3年度の税制改正の決定事項について顧問先様にお話しする機会が多くなっていますが、そこで感じるのはコロナ対応税制ですね。コロナによって経済が悪化するのを防ぐため(実際には悪化しているのですが)例えば、コロナ禍においても未来を見据え投資をする企業においては税制優遇(投資促進税制・税額控除や特別償却)をしたり、経営が悪化しているから従業員の給与を下げたりしないように、昇給したり新しい人材を雇い入れた企業に税制優遇(所得拡大促進税制や人材確保等促進税制)をしたり、と忙しい感じです。

租税は課税の公平や政策的配慮から決まりますが、今年の税制改正は思い切り政策的配慮がされています。国も応援するから投資や人件費を削らないでーと言っている感じです。税理士にとって早く税制改正を理解することは間接的に顧問先を助けることになります。どうせなら税制優遇を受けられるように指導したり、助成金のが対象になるなら早めに要件を教えたり、何だか私たちの仕事もコロナ禍でちょっとずつ変わってきています。先を見越してアドバイスしなければなりません。

↓こちらが令和3年度の税制改正をまとめたものです
令和3年度税制改正 詳細版
これを見ると今後の税制まで垣間見ることができます。

テレワークに係る税金

1年前にはこんな働き方になるとは思っていませんでした。当事務所も旅費交通費が大幅に減り通信費が上がっています。WEB会議が浸透して直接訪問する顧客の数がかなり減りました。今では私が出かける訪問より来ていただく訪問の方が多くなりました。企業様ではテレワークに係る費用についての質問も来るようになりました。例えば在宅勤務をするためにパソコンを支給したケースですが、所有権が会社にある場合(つまり辞めたりしたら返してもらう場合)は貸与に過ぎないので給与課税されません。ただ、従業員にあげてしまう場合は現物給与として課税されます。

また、在宅勤務手当を支払うケースですが、これは全て給与課税となります。在宅勤務を行うにあたり発生した通信費や電気代については業務に係る部分を合理的に計算して精算した場合には給与として課税されません。この計算方法については、国税庁のホームページ「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」に詳しく載っているので参考にして下さい。レンタルオフィスについても実費負担分は給与課税されないと書いてあります。ご参考までに→https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf
つまり、単なる在宅勤務手当のような感じで支給すると給与課税になり、厳密に業務に係る経費を計算して領収書などを提示した場合は給与課税されないということになります。

コロナ後の税金

東日本大震災の時、国は復興のために多額の資金を使いました。そして復興後の2013年1月1日から2037年12月31日までの25年間復興特別所得税という新しい税金が所得税の2.1%割増しで課税されることになったのです。今回のコロナ関連は東日本大震災の影響区域だけではなく日本全国に及ぶのでそのための助成金や補助金など多くの資金が使われています。するとコロナ後どうなるのでしょう?国家財源は御存じのように国債と税収です。ということはコロナ後は税金が上がると考えて間違いありません。復興特別所得税のように地味に2.1%(だけど25年間)だけでは済まないような気がします。

では何の税金取るの?と考えた時、法人税はないかなと思います。なぜなら法人税を上げてしまうと日本の企業が国際間競争に耐えられなくなり、日本の国力自体を脆弱化させるからです。では、所得税か?うーん。これも難しいのではないのでしょうか?東日本大震災後、復興特別所得税を課しましたがその税率をもう少し上げるということは有り得ますが、その他の制度については今回年末調整や確定申告を行う人には分かると思いますが、だいぶ変わりました。いわゆるお金持ち不利税制になっています。そこでこれ以上やるか?という感じです。消費税については本来国際比較をすると20%くらいまでならやれるのですが、最近10%にしたばかりでしかも消費税は国民全ての人に影響する税金です。これを更に上げるとなると国民の批判は必須です。これに政府が耐えられるか?

そう考えると相続税及び贈与税しかありません。近年相続税・贈与税の税務調査が多くなっています。また、マイナンバーやCRSの普及により個人の財産が把握しやすくなっています。相続税は何年か前に大増税が行われましたが、それでも相続税の対象になった人は9%に届かないくらいです。つまり相続税は国民の1割弱しか関係ないので相続税の増税は(人数的に)国民の理解を得られやすいのです。そこで相続税・贈与税の一体課税が吟味されています。現在相続開始前3年以内の贈与を相続税の課税価格に入れないといけないという制度がありますが、その年数を3年ではなく、もっと伸ばすかもしれません。教育資金贈与や住宅取得資金贈与も出来た頃より要件が厳しくなっています。ここ数年が暦年贈与のチャンスかもしれません。税理士は毎年税制改正があり、また、早く入手して検討しなければならない大変な仕事だと最近つくずく思います。

海外取引・海外資産にご用心

海外投資等をした富裕層に対する調査が急増しています。調査件数も前年比9%増加して、申告漏れ等の指摘は10%以上増加しました。申告漏れの所得も25%増加して、追徴税額は何と86%増加です。特に共通報告基準(CRS)を活用した調査が盛んになっています。CRSとは銀行口座や証券などの金融資産に関する情報を複数の国の間で共用する共通報告基準です。海外だからバレないだろうと言った甘い考えで追徴課税や重加算税が取られたりしています。現在コロナ禍で税務調査も減少していますが、1件当たりの追徴税額が高額になるため海外取引が狙われています。コロナが収まった後には更に加速しそうです。

国外にある財産を親族などに贈与して徴収を免れる方法も国際的な徴収逃れとして政府税制調査会は捉えていて、更に厳しく監視されることになります。明らかな脱税行為ではなく節税の範疇であるスキームも今後の改正などではリスクが伴っている感じです。ちなみに昨年、国税庁がCRSを通じて入手した日本人の海外資産に関する情報は189万件です。これは2018年に比べて2.6倍になっています。また、相続の際も相続人が知らない海外資産をCRSを通じて入手して追徴税を取られるケースも多くなっています。相続人が知らなかったケースも多々あるのですが、それでも何かしらの方法で伝えておかないと相続税の申告漏れで指摘されるならまだしも、その財産を知らぬまま海外で処分されてしまう可能性すらあるわけです。大変な世の中になってきました。税理士も説明義務が多くなって大変です。

消費税コロナ納付期限延長申請

私の顧問先にもコロナの影響により売上が激減して中間申告からコロナの納付期限延長申請をしている顧客がいます。そのような時は大抵確定決算時に還付になるのですが、先日中間申告3回の顧問先(約600万円×3回)の顧問先で確定分も1000万円以上納付になったお客様がいました。昨年設備投資が多く今年は設備投資が無い場合そういったことが起こります。中間納付は1回目だけ行っていて、あと2回はコロナ延長申請をしています。こちらですが、今回私が確定分でコロナ延長申請ができるのは1,000万円の確定納付分だけで中間納付分はさらに延納の申請をしなくてはならないということが判明しました。コロナ特例の延納は1年と思っていましたが、中間申告の予定納税分は確定申告書の提出期限までだからです。ここ注意ですね!なんでも1年じゃないのです。そして中間申告の分はさらにコロナ延長ができず、通常の租税猶予(もしくは換価の猶予)になるそうです。えーそりゃないよと思いました。

確定分はコロナ延長をするとして中間分はどうなるのかというと、中間分はそもそも確定申告書の提出期限が納期限ですから、さらに延納する場合には、換価の猶予(担保あり)又は、租税の猶予(国税通則法46条)しかないようです。どちらの方が納税者にとって有利かというと租税の猶予(国税通則法46条)を使った方が有利になります。換価の猶予は期限までに納税がされないとすぐに担保の処分になりますが、租税の猶予はそうならないのと、コロナの影響が認められた場合は延滞税が0%になるかもしれないからです。この件に関しては初体験だったので色々調べて税務署に電話したり、国税庁に電話したりしましたが、全員言っていることが違ってかなり疲れてしまいました。。