年末調整(定額減税)

当事務所では顧問先様から続々と年末調整の書類が届いています。チェックしていると9割くらいが定額減税のチェック欄を理解していないような気がします。一番難しいのは妻の給与収入が103万円を超えて130万円未満のケースです。パートさんで意外と多いこのパターン。社会保険がかからないギリギリのラインで働くケースです。会社側も当初103万円以下の所得と見込んで妻の分も入れて定額減税をしていました。でも年末調整の書類をみたら妻の年収が103万円~130万円の間になっているケースです。その場合、配偶者控除ではなく配偶者特別控除になり所得控除は受けられます。ところが妻の所得金額が48万円を超えて、夫の給与からは定額減税が受けられなくなり、妻の分は妻本人の働いている会社で定額減税を受けることになります。

妻の分も多く引いてしまった夫の会社では年末調整で妻の分は控除しなかったものとして年末調整を行います。面倒ですね。給与収入と給与所得の違いも分かりづらく難しいのだと思います。給与収入は額面金額です。税金や社会保険など給与から天引きされる前の純粋な給与額のことです。給与所得は、給与収入から給与所得控除額を引いた残額になります。給与所得控除額は下記になります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
これによると1,625,000円以下の給与収入の場合、給与所得控除額が550,000円になりますね。例えば妻の給与収入が125万円の場合、125万円-55万円=70万円です。この70万円が給与所得です。定額減税では配偶者の所得が48万円以下でないと夫の定額減税にならないのです。

その場合、妻は妻の会社で定額減税してもらいます。税務では配偶者特別控除を受けられるのに、定額減税は受けられないというのが理解を複雑化しているのだと思います。今は主たる給与取得者を夫、従たる給与を妻としましたが、逆の場合は上記を逆に読み替えて読んでください。

相続土地国家帰属制度

相続などによって土地(宅地、田畑、山林など)の所有権を得た相続人が、一定の要件を満たした場合、土地を手放して国に引き渡すことができる制度を、相続土地国家帰属制度といいます。建物が建っていてはダメで申請の際の審査手数料や引き渡す際の負担金を支払う必要があります。申請しても引き取ってもらえないこともあります。この制度は2023年からできましたが、2024年7月までに2,481件が申請しましたが、実際に国に帰属することになった土地は667件です。これは全体の約27%にしか過ぎないので、申請しても通りにくい事が分かります。

申請が通った種目としては宅地が全体の41%、農用地が30%をしめますが、山林に限っては全体の3%しかありません。却下になる理由としては、既に通路になっている土地や境界線が明らかでない土地などがあります。不承認となった事例としては、国が引き取った後に管理に要する費用以外の金銭債務を負担することになる土地や土地の上に有体物が存在する土地、追加整備が必要な森林、民法上の通行権利が妨げられている土地、所有権に基づく使用または収益が妨害されている土地などです。申請前にご確認下さい。

伝家の宝刀敗れる

税務には税理士を不安にさせる総則6項という規定があります。これは、通常のルールでは実態とかけ離れた評価になる場合などに適用される特別規定で、タワーマンション事件をきっかけに国税当局がこの総則6項を使い、納税者の評価を否認するという、いわゆる「伝家の宝刀」を使って無理やり課税するという恐ろしい規定です。タワーマンション事件は仕方ないとしても、今回の判決は非上場株の相続の評価を巡ったものです。税理士はもちろん非上場株式の通常の評価を適用して相続税の申告をしました。ところがS税務署はこの評価は著しく低いとして総則6項を使い追加の相続税を4億円課してきたのです。

もうやりたい放題です。相続税基本通達通りの評価をして1株8,186円で評価して申告しましたが、国税は専門会社に価格算定をして1株80,373円としたのです。10倍近い額です。これは国税側がディスカウントキャッシュフロー法で評価したもので、通常M&Aなどに使われる評価方法です。M&Aと相続では全然違うので、これをやられたら税理士側としてはひとたまりもありません。もちろん納税者側は控訴して今回、国税側の敗訴確定となりました。

相続税評価通達というのがあるのに、それに則って評価したら否認されるとなれば税理士はどうしたら良いのでしょうか?そもそも時価というのは曖昧で不確実性があるからこそ、この評価基準があり、相対的に相続税評価通達は一般の時価より2割~3割安くなっています。それが時価が半分以下だからと言って伝家の宝刀を使いまくったら国としてどうなのだろう?と思っていました。今回、裁判官が適切な判定をしてくれて良かったです。こんなことをしょっちゅうやられていたら税理士としては相続税の申告は受けることさえリスクがあると感じてしまいます。とりあえずほっとした判決でした。

ふるさと納税ルール変更

ふるさと納税のルールの見直しが10月からされることになりました。顧客にも聞かれるので少しお話ししたいと思います。所得税の寄付金控除や住民税のふるさと納税の控除については変更はありません。返礼品に変更があります。現在返礼品は地場産品基準というその地域で作られた物というのが原則ですが、その作られたというのが製造も販売もその地域内なら大丈夫ですが、製造は他の地域で販売がその地域の場合、全体の価値としてその地域で作られた物の価値が半分以上である場合のみ適用になります。つまり製造が他の地域で1500円でその地域に納められ、その地域で1000円の価値を付して2500円の商品となっている場合、その地域での価値は1,000/2,500の40%ですからその地域での返礼品とすることができなくなります。厳しいですね。返礼品として出す方も大変な計算をする羽目になっています。

また、1人1泊50,000円を超える宿泊施設の利用券の返礼品についても、その施設が同じ都道府県内のみで営業している施設であることが条件となりました。ですから今後は〇〇リゾートの返戻金は廃止になります。ただし、災害等の被災地での宿泊費や1人1泊50,000円以下の宿泊については大丈夫だということです。返礼品事業者について産地偽装が相次いでいるそうで、自治体の定期的な調査や確認も厳格になるようです。ですから上記に該当しそうなら10月からは廃止になりますので9月中に寄付をする必要があります。9月中に寄付したものについては利用が10月以降でも使えるようです。あと10日なのでお気に入りの返礼品が該当する場合はお早めに!

森林環境税

みなさん森林環境税をご存じですか?これは令和6年度から徴収開始になりました。森林環境税とは日本の国土の7割を占める森林の整備等をするめていくための財源として創設された新たな国税です。国税ですが、個人住民税に一人1,000円が徴収されます。つまり個人住民税が今までより1,000円高くなります。これは所得の多寡にかかわらず一律となります。

まず、市町村が住民税の一部として徴収し、国に納めます。国から全国全ての自治体へ森林環境譲与税として配分されることになります。配分方法は、私有林人工林面積、林業就業者数、人口などを加味して配分されます。森林環境譲与税をどう使うかは自治体が決めることになります。全国には十分な手入れができていない森林や、活用するにも規模が小さすぎる森林、所有者不明森林などがあります。これらの森林の整備を進めていくために森林環境贈与税が使われることになりそうです。

脱税は、犯罪

先日、国税庁のHPを見ていたらこんなものを発見ました。それがこれです↓
脱税は犯罪

何と漫画になっています。昔マルサの女という映画がありましたが、それを漫画にした感じです。漫画のパンフレットを作るなんて、国も変わりましたね。確かに脱税はダメです。脱税と節税を混同している方がいますが、脱税は犯罪で節税は有効な法律の下税金が安くなるように実行することです。同じ税金を安くする行為でも、違法と合法では大きく違います。また、脱税の方法が仮想隠蔽行為だと重加算税が科されますし、もっとひどいと懲役10年です。良い事ありません。節税はしても脱税はしないようにお願いします。

定額減税始まりましたが・・・

今月、顧問先様のところに訪問すると必ずと言っていいほど、聞かれるのが、「給与から定額減税はすることができました。給与ソフトが対応してくれたので、摘要欄にも定額減税額の記載があります。でも当社の〇〇さんはお子さんが3人いるので、7月、8月、9月、10月、11月、12月と年末調整をやっても引ききれないのですが、その場合、どうなるのですか?」という質問です。

あぁそれはみんなに聞かれますよ。定額減税しきれない時は、市町村から本人に確認書が届きそれに返信することによって振込されるみたいですよ。と答えます。経理の方はえぇっです。私もそう思います。どれだけ市町村に負担をかけるんだよという感じ。従業員はその書き方が分からないと言って経理に聞いてきそうと言っていました。その可能性はありますね。

経理に聞かれても困るのですが、もし聞かれたら先生にお聞きして良いですか?はい。。経理の方と二人でげんなりしてしまいました。まだまだ先は長そうです。これで市町村毎にフォーマットが違ったら最悪です。経理の方と私・・・ため息しかでない訪問でした。

混乱定額減税

6月から始まる給与所得者の定額減税については2024年1月27日のブログhttps://hy-tax.com/blog/?p=6407と2024年3月27日のブログhttps://hy-tax.com/blog/?p=6526でお話ししてありますが、いよいよ差し迫ってきて、顧問先様から質問が増える状態になっています。最近多いのが扶養人数の把握です。税務とも社会保険とも違いますと言うと混乱します。例えば税務では児童手当をもらっている16歳未満の子供などは税務上扶養控除は受けられません。でも今回の定額減税は受けられます。税務上認められている外国人の扶養も居住者でないならこの制度では対象外になります。また、社会保険では籍を入れていない内縁の配偶者なども社会保険の扶養になれますが、今回の定額減税では扶養にはなれません。

また、納税者本人が高額所得者(給与収入2000万円以上合計所得金額では1805万円超)の場合、定額減税の対象外になりますが、その同一生計の配偶者や子供などはたとえ所得が48万円以下であっても定額減税の対象になりません。対象とならないのに月の定額減税はやります。そして確定申告の時にその分を返します。ある顧問先から月の給与で減税してその分、確定申告で返すのは気分悪いから、役員である確定申告をする自分たちは毎月の定額減税をやらなくてよい?と聞かれます。気持ちは分からなくもありません。

ですからこう答えています。「法律では所得にかかわらず定額減税をやる決まりになっていますが、やらなかったとしても源泉所得税を多く払っているので罰則にはならないと思います。自己責任でそうするなら仕方ありません。でも従業員の分はちゃんとやってください。」そりゃそうですよね。元々2000万円超えて定額減税の対象にならないのに、奥様と子供が3人いたら、所得税だけでも3万円×5=15万円減額されます。でも確定申告の時、返してねってそりゃ嫌だわ。誰でも嫌だわ。税理士のせいにされそうでそれも嫌だわ。まぁ自己責任でお願いします。

その後ある情報を得ました。衆院財務金融委員会で、企業が6月以降の毎月の給与から引く手間を省くため年末調整で一度に差し引いた場合、法律違反になるのかどうかというのを質問したそうです。回答は、6月から減税を反映しない場合、税引き後の給与が本来支払われる額より少なるなるため労基法違反になる可能性があり、悪質なケースは30万円以下の罰金が科されることになるということでした。面倒でも従業員の分はやらなきゃ駄目ですよ。顧問先と会合する度に経理担当からは定額減税制度について不満が漏れています。

3月決算始まりました

3月決算は多分ほとんどの税理士が顧問先で一番多い決算月だと思います。そして3月決算から様式等が変わることが多いです、今3月決算をやっていて覚悟をしたものの、やはりかなり面倒になってきています。面倒その1:科目内訳書に相手先の適格請求書の登録番号(なければ法人番号)を記載した欄が出来たこと。今回からですからその分かなりの手間になります。面倒その2:消費税の申告書にも同様の記載が必要です。これも面倒ですが、還付なら仕方ないかと思います。面倒その3:消費税原則課税の申告が免税事業者からの仕入れがあるためチェックが大変です。

電子申告が進み通常は楽になるのではないですか?面倒になってどうするのよ。これが税理士の本音です。読者の中には自分で申告している人もいるかと思います。今回の申告からインボイスも入ったことからかなり面倒なので余裕をもって早めに取り掛かった方が良さそうですよ。以上つぶやきでした。

定額減税 嫌な予感

定額減税のパンフレットが納税者に届き、顧問先から質問を受けることが多くなってきました。定額減税の制度については2024年1月27日の「定額減税」のブログhttps://hy-tax.com/blog/?p=6407
で解説しております。それはそうと、給与所得者については6月の給与から実際の減税が始まります。1人4万円の内訳は所得税3万円住民税1万円なので、6月の源泉所得税から3万円に達するまで給与の所得税が引かれなくなります。1回の給与で充当できない場合は賞与や翌月の給与、翌々月の給与からも引かれます。12月まで控除しきれなかったら年末調整で控除される仕組みです。

それはそうと、嫌な予感しかしないことが1つあります。これは甲欄源泉の人で6月1日以前に入社している人が対象になるのですが、合計所得金額が1805万円(給与収入でしたら2,000万円)以下でないと対象になりません(つまり定額減税の恩恵は受けられません)ところが、あきらかに給与だけでもそれを超える人でもとりあえず、定額減税をするというのです。ええぇぇぇぇ!です。とりあえず定額減税をして確定申告などで定額減税なしで申告しなおすという何ともいえない処理をするということです。

社長などの場合、合計所得金額が1,805万円を超える人は結構います。その方たちの確定申告をするのは私たち税理士です。いつもは還付なのに今回は何で納付なの?と言われそうです。一度引くけど確定申告で返してねというお話です。本当に嫌な予感しかしません。納税者に送られてきたパンフレットには載っていませんが、国税庁が公開した定額減税定額減税Q&AQ&A(下記参照)にはしっかりと載っています。P4の(注3)及びP8の2-2参照。下記参考までに・・・
定額減税Q&A