温度差

今回のテーマは温度差ですが、気温のことではありません。これは税務署と税理士との感覚の温度差のお話です。先日、税理士会豊島支部の幹部と豊島税務署との意見交換会が行われました。豊島税務署側の説明では、法人税の電子申告はとうとう82%になりました。これは多くの税理士が電子申告を進めることによって寄与されたものであるとの事でした。でも電子納付は13%です。税務署は令和7年までに40%のキャッシュレス納付を目指していて、e-taxで申告した納税者にはプレプリント納付書を令和6年5月から送らなくなるということでした。税務署側は電子申告ができるのだから、あとは国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書を提出して、電子納付をしてくれというのが希望のようです。

ちょっと待って!私も思いましたが、多くの税理士がこれに反対しています。税務申告は税理士の特権ですが、電子納付まで税理士が手続きをするのですか?という話です。税務署側はそれは税理士がやっても納税者がやっても構わないというでしょうが、納税者がやるわけないので結局税理士がやることになります。税理士の中では申告は税理士で、納税は納税者という意識があります。それが税理士がやってしまうと税理士はまるで税務署の下請けのような立場になり、嫌なのです。なぜ、税理士が税務署に代わって納税のことまでやらなきゃいけないのだ。多くの税理士にはそんな意識があります。

100歩譲って、確定申告のみ電子納付の手続きをするとします。決算報告はするのでその時にいくら口座振替されますので口座にお金を用意しておいてくださいと言ったとします。でも予定納税はどうでしょうか?予定納税は決算から半年後に来ます。それをいちいち税理士がすべて覚えておいて管理して、わざわざ納税のためにe-tax処理をする。これはいくら何でも違うんじゃないかと思います。今は予定納税の納付書が納税者に郵送されるから納税者も気が付くという顧問先もあります。もし、納税を忘れてしまったら誰の責任なのでしょうか?納税の管理まで税理士に押し付けるのはちょっとというか、かなり見当違いな話になります。その点を国側も理解してほしいです。

インボイス制度注意点その5

インボイス制度については底なし沼のように問題点が出てきて、もう実務家としてどうしたら良いものかと悩むようにまでなっています。実務にはインボイス交付を受ける事が困難な取引があります。次のような場合には、インボイス交付ではなく、帳簿の保存で良いとされています。それは下記の取引です。
①税込価額3万円未満の公共交通機関(船舶、バス、鉄道)による旅客の運送
②税込価額3万円未満の自動販売機又は自動サービス機による商品の販売等
③郵便切手を対価とする郵便サービス(ポストに投函されたもの)
④簡易インボイスの必要事項が記載された入場券等が、その使用の際に回収されてしまう取引
⑤古物営業、質屋営業又は宅地建物取引業を営む事業者が、適格請求書発行事業者でない者から、古物、質物又は建物を棚卸資産として取得する取引
⑥事業者が、適格請求書発行事業者でない者から、再生資源又は再生部品を棚卸資産として購入する取引
⑦従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当等及び通勤手当

帳簿の記載方法ですが、例えば①に該当する時は「3万円未満の鉄道料金」、②に該当する場合には「〇〇市 自販機」、「××銀行△△支店ATM」などと記載します。④に該当する場合には、「入場券等」などと記載します。⑤の取引のうち古物台帳などについては相手方の氏名及び住所を記載します。⑥の取引を事業者から購入する場合、その事業者名を記載します。書いて説明しているだけでクラクラきます。こちらは全ての事業者が対象となります。

そてとは別に基準期間(2年前)における課税売上高が1億円以下又は特例期間(前期6カ月)における課税売上高が5,000万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に行った課税仕入れについて、その課税仕入れが税込み1万円に満たなかった場合は、一定事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められることになります。これは「少額特例」といいますが、小規模事業者だけに認められた制度です。3万円未満切符は全員対象で、1万円未満領収書は小規模事業者のみです。ご注意ください。

インボイス制度注意点その4

免税事業者が適格請求書発行事業者となったことにより課税事業者になった場合には、課税売上にかかる消費税から控除する金額を売上税額の8割とすることができる(2割特例)というものがありますが、事前の届出が不要です。ここで注意したいのは、この「2割特例」は、その適用期間(令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間)において、課税期間ごとにその適用の有無を判断しなければならないという点です。

例えば、9月決算法人で本来免税事業者なのに、適格請求書発行事業者になったとします。令和5年10月1日~令和6年9月30日までの申告は売上は1,000万円を超えていましたが基準期間の課税売上高が950万円であったため、2割特例を使って80%仕入税額控除をしました。令和6年10月1日~令和7年9月30日は基準期間(2年前)の課税売上高が980万円であったため、再び2割特例を使いました。令和7年10月1日~令和8年9月30日はまだ適用期間ですが、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円を超えていたため2割特例は使えません。

ここ、間違えそうですよね。まだ2割特例適用期間だし、2年連続2割特例使ってきているので、使えると思い込んでいると大きな誤りになります。2割特例はあくまでも、もし、適格請求書発行事業者じゃなかったら免税事業者である。ということを前提としています。毎年使ってきていても、適用期間内であっても毎年、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下かどうかを確認する必要があります。

インボイス制度注意点その3

前回(2023年5月2日のブログ参照)インボイス制度注意点その2で請求書作成の際の端数処理の仕方についてお話しました。今回自己システムを利用している消費税原則課税の顧問先から質問が着て、ハッとしたことがございます。前回の添付資料をご覧ください。請求書を発行する側は、8%と10%に分けた合計額に消費税を加算するやり方で請求書を発行することは前回述べた通りです。でも請求書を受け取る側はどう会計処理をするのでしょうか?

例えば添付書類を例に取ると、同じ10%消費税に花と肥料があります。花が交際費で肥料が雑費の場合、どういった会計処理をするのか?この場合、交際費(税込)4,827円(消費税438円)と雑費(税込)26,145円(消費税2,376円)と仕訳するしかないと思います。この仕訳の消費税の合計額は、インボイス請求書の消費税の合計額2,815円と1円の差が出てしまいます。インボイスはそもそも売り手と買い手の消費税額の一致を目指しているはずなのに勘定科目が違うと別に入力しなければならず、結局一致しなくなります。

その顧問先の優秀な経理担当者が国税庁に聞いても、ソフト会社に聞いてもその点ははっきりしない回答だったそうです。ソフト会社はどちらでも良いと答えたそうです。なんじゃそりゃ!だから紙でのインボイスは無理があるのです。ちゃんとやりたくてもちゃんと出来なくなっています。結局手作業のインボイスはどこかで不都合が生じます。デジタルインボイスに移行するしかないのではないでしょうか。

インボイス制度注意点その2

インボイス制度が始まるに当たって早めに解決すべき注意点として下記が挙げられます。パソコン作成や手書きの請求書を出すところなら早急に対応できますが、スーパーなどのシステムを使っている場合は、改修等も必要になってくることから早めに対策する必要があります。下部の添付資料をご覧ください↓
インボイス端数処理
今現在は区分記載請求書方式なので、添付資料の左側のようなシステムを使っている事業者も多いと思います。これは個体の取引ごとに消費税の端数処理をして、その合算額が一番下の合計額に反映されています。ところがインボイス請求書ですと、添付資料の右側のように個体の取引ごとではなく、税率別に合算して端数処理します。ですから個別で端数処理する(左側)のと合計額で端数処理する(右側)では自ずと消費税額が違ってきます。

スーパーなどでは左側のシステムが多いと聞いたことがあります。自社のシステムを確認し早急に対応しなければなりません。インボイスをする事によって事務作業が増えるのは情報社会にとって時代に逆行しています。税理士業界では未だインボイス制度そのものに反対する税理士も多いですが、デジタル化は国際的にみても避けられないので、もっと税理士が積極的にこの制度に関わり使いやすいデジタルインボイス制度にしていくしかないと思います。インボイスといい、電子帳簿保存法といい、中途半端なデジタル化がかえって現場を混乱させて事務手数を増やしているという現実に向き合う必要があると思うのです。

インボイス制度注意点その1

とうとうインボイス制度開始まで半年となりました。インボイスを発行できる事業者を適格請求書発行事業者といいますが、10月1日スタートで開始するためには当初R5.3.31までに申し込みすれば良いとのことですが、税制改正によりR5.9.30までということで期限延長になりました。そこで迷っていた事業者様はもう少し考えられるということでホッとしていた事と思います。でも注意点があります。

2月末時点での適格請求書発行事業者は240万件でこれは消費税課税事業者の75%に当たります。適格請求書発行事業者になるか否かで迷うのは免税事業者か消費税課税事業者でも売上が1,000万円を前後して課税になったり免税になったりする事業者様だと思われます。9月まで延びたから安心と考えるのは安易で、今、適格請求書発行事業者の登録番号が与えられる登録通知書の発行に約3ヶ月かかっています。

法人の場合、法人番号にTが付くだけなので登録通知書が届かなくても登録番号は把握できますが、個人事業の場合はマイナンバーと違う登録番号が別に与えられます。従って3ヶ月もかかるのでしたら遅くとも6月くらいまでには申請をしていないと10月1日の請求書に登録番号を付すことができなくなります。ですから個人事業者の場合は特に前倒しで検討することが必要です。

総則6項

相続税の申告は基本的に相続税評価額をもって金額を算定します。でも財産評価基本通達の総則の第6項(いわゆる総則6項)というものもあって、これは取扱通達(法律ではありません)ですが、「相続税評価額で評価することが著しく不適当である場合には、国税庁長官の指示を受けて評価する」というものです。総則6項は伝家の宝刀の規定なのです。

タワーマンション節税対策で有名になりました判例があります。2008年当時90歳だった被相続人が信託銀行に相談して相続対策として2棟のマンションを14億円で購入して信託銀行から10億円借りました。このマンションの相続税評価額は2棟で3億円、つまり、相続税の課税価格は3億円なのに債務控除が14億円できるという節税対策を信託銀行がやったのです。それをこの評価は適当ではないとして3億円の追徴課税を行なったというのが流れです。

この判例は信託銀行が作成した稟議書に相続税対策のためと書かれていたり、節税対策だけのためにやっているというのが明らかだったため負けましたが、全てのタワーマンションでこんなことが行われるわけではありません。通達によって評価するのが著しく不適当かどうかというのは書くのは簡単ですが、判断はとても難しいです。課税の公平性を著しく害することが明らかなどの特別な事情が必要だとされていて、今回の争点となりました。つまり税逃れの意図が強く出る行き過ぎた節税対策が危険だということになります。

私がこの申告をする税理士だとしたらどうしたかというと、やはり相続税基本通達の3億円で評価していたと思います。行き過ぎた節税だと思っても自ら14億円では評価しないです。税理士は皆そうだと思います。ですから総則6項は税理士泣かせの規定でもあります。伝家の宝刀が行き過ぎないように私たち税理士も行き過ぎ総則6項には、反論しなければなりませんし、節税だけの金融機関のアドバイスにも厳しい目を向けなければなりません。

ふるさと納税って税金かかる?

先日顧客から問い合わせが着ました。「ふるさと納税ってやり過ぎると税金がかかるって聞いたのだけれど・・・」という質問です。50万円以上だと一時所得がかかるとか。その方は80万円位ふるさと納税をやっていたので焦っていました。寄付をした金額が50万円以上ではなく、返礼品(貰ったもの)が50万円以上です。貰ったものって物なのでいくらなのかよく分かりません。そのような時どうしたら良いかです。

ふるさと納税の返礼品は寄付した金額の30%までと制度で決まっています。地方自治体から見ると10,000円の寄附をもらったら3,000円までの返礼品しか送ることができません。ですから、寄付した金額の30%が貰った金額として試算すると良いと思います。これを逆算する166万円位までの寄附ならギリギリいけそうです。でも注意しなければならないことがあります。これは一時所得がふるさと納税だけだった場合です。

一時所得はふるさと納税だけではないので、それを合わせて50万円以下にする必要があります。大きな金額として影響してくるのは保険の解約返戻金です。保険の解約返戻金は一時所得になるので大きな保険を解約すると単体でも税金がかかるケースが多いです。ですから保険を解約する年は特に注意しなければなりません。その他としては、細かいですが、全国旅行支援も得した分の金額は一時所得です。イベント割で割引かれた金額も一時所得。最近の事例としてはマイナンバーカードに保険証や銀行口座を紐づけると貰えるマイナカードのポイント分も一時所得です。住まい給付金や地域振興券も一時所得です。こう見ると一時所得はふるさと納税だけではなく色々該当するのが分かります。

なお、一時所得ではなく非課税なものもあります。失業保険や生活保護手当、児童手当、被災者生活再建支援金、臨時福祉給付金、子育て世帯臨時特例給付金、年金生活者等支援臨時福祉給付金、東京都認証保育所の保育料助成金などは非課税です。生活困窮者や生活支援にかかるものは非課税ですが、その他に得してしまったものは一時所得となる可能性が高いので、そのようなものと合わせて50万円を超えないようにしなければ追徴課税の可能性が出てきます。ご用心を・・・

税金をPayPayで納付できるようになります

税金の納付の仕方は銀行の窓口や税務署の窓口で直接行うか。口座振替手続きを行うのが主流でした。クレジットカード納付も何年か前にできましたが、クレジット手数料がかかるということで浸透はしていません。令和4年12月1日より国税納付がスマホアプリ納付できるようになりました。決済できるスマホアプリは次の6つです。①PayPay ②d払い ③auPAY ④LINEPay ⑤メルペイ ⑥AmazonPay

注意点としては一度の納付の限度額が30万円以下であることです。それと領収書は発行されません。手続きは、国税庁サイトから「スマホアプリ納付の手続」ページに表示されている「国税スマートフォン決済専用サイト」からアクセスして手続きします。e-taxを利用している場合はメッセージボックスに格納される受信通知からアクセスします。スマホアプリ納付手続き(国税庁)

クレジットカード払いと違って決済手数料が不要な点、口座振替手続きと違って事前の手続きが不要な点、などから今後普及するのではないでしょうか?領収書が発行されない点が唯一の問題かもしれません。令和5年4月1日から給与もデジタル払い(〇〇ペイで支払)が出来るようになります。これは急激には進まないと予測されますが、今後どんな世の中になるのでしょうか?デジタル化の波が押し寄せています。

ポイント値引きと消費税

ポイント制度を利用する店舗は多く、ECサイトビジネスなどでもポイント制度を利用する業者が多くなっています。一部ポイントを利用して支払った場合、消費税の扱いはどうなるのでしょうか?ポイントを値引きとしているか。ポイントを現金等価物と捉えるかによって経理のやり方が違います。

例を見てください。左は値引きとしている場合ですが、この場合、消耗品費(お茶)530円(8%)と事務用品費(文房具)539円(10%)/現金 1,069円となります。次にポイントを現金等価物として扱っている場合は、消耗品費(お茶)540円(8%)と事務用品費(文房具)550円/現金 1,069円と雑収入(消費税不課税取引)21円となります。

面倒なのは、購入先によってどちらの方法を採用しているのか見なければならない点です。購入側がつまり経理担当者が1件1件確認しなければならず、例示のようにレシートを貰える場合はまだ良いですが、ECサイトなどで購入した場合、それを判断するのが大変な事例もあるかと思います。来年10月からインボイス制度が始まりますが、ますます面倒になると思います。

事例は購入側の処理ですが、売上側はもっと重大な問題を抱えています。この場合、値引きと捉える場合と現金等価物と捉える場合では、預かり消費税が変わってきます。同じような取引なのに経理処理の仕方で消費税が変わるというのはどうなんでしょう?と思います。システム的にも消費税が安くなる値引きタイプを構築する方が難しいかと思います。そうするとシステム構築にお金をかけられる企業は消費税が安くなって、値引きタイプのシステムを構築できない企業は消費税が高くなります。課税の公平の見地からもそんな税制で良いのか?と思います。電子化=簡単で便利になると良いのですが、電子化=面倒な作業が増えるというのでは電子化も進まないし、時代に逆行しているような気がします。