相続税

国税庁から令和4年分の相続税申告実績が発表されました。それによると令和4年1月1日から令和4年12月31日までに亡くなった人は1,569,050人で前年より129,194人増え過去最高となったようです。また相続税の課税対象となった被相続人も前年より16,583人増えて150,858人となり、これも過去最高となりました。計算すると亡くなった人の9.6%が相続税の申告をしているということになります。東京局管内だけでみると課税割合は15%になるそうです。大阪局管内は9.7%(全国平均に近い)ですが、名古屋局管内は12.2%となっています。

一方相続税の税務調査をみると税務調査をしたうちの85.8%が追徴税額を取られていて相続税の調査=追徴税額の図ができそうで怖い感じです。一番多い指摘事項は申告漏れで現金預金の申告漏れが一番多いそうです。次に土地、そして有価証券だそうです。土地とかの申告漏れはちょっと?ですが、現金預金や有価証券は遺族も知らず亡くなった被相続人だけが知っていてあとで税務署に見つかるというケースも多く、これは逆に見つけてもらって良かったのかもしれません。

申告者も申告漏れも納税額も過去最高となり、ますます気を付けなければならない相続税となりました。特に都心に住む人で住宅を持っているだけで相続税の対象になるケースがほとんどです。日頃から自分が亡くなった時に遺族が困らないように資産管理しておく必要があります。何か心配なことがありましたら税理士吉田久子事務所までご相談下さい。当事務所では資産形成のご相談(CFP/1級FP在中)から成年後見人制度の手続きまで(こちらはリライアンス東京行政書士事務所で行います)幅広く対応していますので、よろしくお願い申し上げます。

定額減税

最近お客様から、給付金・定額減税についてよく聞かれます。夏に電気代等が高騰し、岸田内閣が国民に補填すると発表しましたが、ちょっと難しくて良くわからない。結局低額所得者のみに給付されて私たちは関係ないの?という質問です。いやいや関係ありますよ。でも何段階にもなっているので複雑で分かりにくいだけです。順を追って説明します。

定額減税図解
図解を見ながら読んでほしいのですが、①まず、今年の2月~3月を目途に、低所得の子育て世帯に18歳未満一人につき5万円を加算します。
②住民税均等割りのみ課税世帯には1世帯10万円を給付します。
③そして住民税非課税世帯には1世帯7万円(自治体でも3万円を夏以降支援)を先行して給付します。
④①~③は令和6年度の住民税情報(令和5年の所得をベースにしている)を基に決定しているので、実際に令和6年に住民税非課税もしくは住民税均等割りのみ課税となる世帯には1世帯10万円を給付します。
とここまでは給付の話。これから減税の話になります。

住民税非課税や均等割りのみ課税の世帯以外の世帯は給付ではなく減税になります。給与所得者は、高額所得者(合計所得金額1805万円、給与収入だと2,000万円超)は減税の対象外になります。それ以外の方は今年の6月から給与の源泉所得税から減税されます。(給与の所得税の天引きが少なくなる)金額は、納税者及び配偶者を含めた扶養家族一人に付き3万円です。住民税は1万円になります。つまり、所得税などを払っている人は所得税3万円と住民税1万円の合計4万円が減税となります。扶養配偶者と子供2人がいれば、本人含めて4人なので4万円×4人の16万円が減税になります。6月の給与の天引きから考慮されますが、6月分の給与で充当できなかった場合は7月、8月、9月と繰り越して、12月まででも充当できなければ年末調整で考慮されます。ここまでが給与所得者の場合です。

次に、給与所得者ではなく、不動産所得者や事業所得者の場合は、予定納税対象者については第1回予定納税額から減税ですが、予定納税額がない場合等は確定申告で減税になります。減税額は給与所得者と同じです。(@一人4万円)

年金受給者はどうでしょう。年金受給者についても6月の年金から控除される源泉徴収税額から控除されます。6月に充当できない時は次回の8月(年金は2カ月に1度なので)に充当されます。年金受給者で源泉所得税がかからない人もいるかと思いますが、その場合は住民税非課税世帯もしくは住民税均等割りのみ課税世帯だと考えられるので前半にお話しした給付になります。

注意点としては住宅ローン控除がある人は住宅ローン税額控除後の所得税から減税を実施します。また年末までに扶養親族等の情報に異動があった場合には、年末調整や確定申告で調整します。こちらの制度は様々な層の国民に丁寧に対応しながら、物価高に対応し、可処分所得を増やすことを目的としています。簡素・迅速・適切のバランスを考慮しているということですが、全然簡素じゃないですね。専門家でも複雑で説明が面倒なくらいです。今回給付と減税で対応が違うので複雑なのですね。本音を言えば6月から給与計算が大変になるな。給与ソフトはちゃんと対応してくれるのだろうか。と思っています。

金の価格高騰

金の価格が高騰しています。5年前には1gあたり5100円程度でしたが、とうとう1万円を超えました。5年間で倍になっています。昔は金よりプラチナの方が高かったですが、今のプラチナは1g5000円しないのでプラチナとの価格も倍以上となります。最近、昔から持っている金の地金を売ろうと思うのだが税金はどうなるのですか?と数人から聞かれるようになりました。例えば金を100g売ったら、100万円を超えます。1g=10,000円と仮定して計算してみます。

100g買ったのが6年前で購入価格が1g5000円だったとします。そして、売却のための手数料も必要です。手数料は16,500円とします。(田中貴金属工業HP参照)
100万円(売った値段)-〔50万円(買った値段)+16,500円(手数料)〕=483,500円これは5年以上保有していたので長期譲渡所得になります。長期譲渡所得は50万円の特別控除があるので、483,500円-500,000円≦0円となり、税金はかかりません。この50万円の特別控除は5年以上保有していないと使えません。そして毎回使えるのではなく、年間通して50万円です。

ポイントは、①金は5年以上保有してから売却する。⓶1年で100g程度の売却をする(金価格がg1万円程度の場合)③毎年分けて売る。これらを上手く活用すれば、税金を払わずに済むかもしれません。ただし、この計算はg5千円程度で買った時の計算ですので、場合によってはもっと売れる可能性もあります。よく考えながら売ってみて下さい。なお、売却業者は売却価格(業者からすると購入価格)が200万円を超えると税務署に支払調書を提出するので、必ずバレますので申告して下さい。

消費税2割特例

税務署からのお知らせ

税務署からこんなお知らせがあります。顧問先様はこれを見ても何のことか分からないと思います。これはインボイス制度を機に新たに免税事業者からインボイス発行事業者となった法人の方でインボイス発行事業者の登録申請書と消費税課税事業者選択届出書の両方を出した方が対象者になります。そして何がどうなるのかというと、消費税課税事業者選択届出書を提出した者(強制的に課税事業者となる届け出)は2割特例(売上に係る消費税の2割だけ納付すれば良いよという制度)が使えないという事です。その場合、簡易課税選択不適用届出書を提出しなければならないというものです。

実際、自分の事業所が提出した方が良いのか否かの判断は、消費税見込み額が還付になる場合(輸出免税売上額が多い場合や設備投資に係る消費税額が多額になる場合等)には課税事業者選択不適用届出書を提出してはいけません。何でもかんでも提出すればよいというものではなく、事業の消費税見積額を出したうえで売上に係る消費税の2割以上の納付額になりそうな時は提出して下さい。自分で判断できない時は顧問税理士にご相談下さい。

科目内訳書と消費税還付申告明細書

え~!!これが発表された時、また新たなる衝撃が走りました。来年の3月決算法人から科目内訳書に事業者登録番号を記載する欄が追加されます。詳しくはこちら↓
R6.3~科目内訳書
またまた決算業務が増えます。何てことでしょう。

そして、消費税還付申告明細書については来年の3月からではなく、今年の10月決算から消費税申告書のフォーマットが変わります。詳しくはこちら↓
消費税付表2-1
⑪と⑫の欄を分けて(つまり消費税の登録事業者と免税事業者を分ける)記載するということですね。まぁこれは仕方ないといえば仕方ないですね。また、会計ソフトを使っていて入力時点で正しく入力できていれば自動転記されるものと予想されます。

問題は還付申告の場合の消費税の還付申告に関する明細書です。記載例はこちら↓
消費税還付申告記載例
2枚目をご覧ください。(2)と(3)には取得業者を記載するのですが、取引先の登録番号の記載も必要です。これは税理士にとって面倒な仕事になりますが、消費税の還付申告で不正事案が後を絶たないことを考慮すれば仕方ないのかなとも思います。

科目内訳書は勘弁してくれ~これが本音です。

温度差

今回のテーマは温度差ですが、気温のことではありません。これは税務署と税理士との感覚の温度差のお話です。先日、税理士会豊島支部の幹部と豊島税務署との意見交換会が行われました。豊島税務署側の説明では、法人税の電子申告はとうとう82%になりました。これは多くの税理士が電子申告を進めることによって寄与されたものであるとの事でした。でも電子納付は13%です。税務署は令和7年までに40%のキャッシュレス納付を目指していて、e-taxで申告した納税者にはプレプリント納付書を令和6年5月から送らなくなるということでした。税務署側は電子申告ができるのだから、あとは国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書を提出して、電子納付をしてくれというのが希望のようです。

ちょっと待って!私も思いましたが、多くの税理士がこれに反対しています。税務申告は税理士の特権ですが、電子納付まで税理士が手続きをするのですか?という話です。税務署側はそれは税理士がやっても納税者がやっても構わないというでしょうが、納税者がやるわけないので結局税理士がやることになります。税理士の中では申告は税理士で、納税は納税者という意識があります。それが税理士がやってしまうと税理士はまるで税務署の下請けのような立場になり、嫌なのです。なぜ、税理士が税務署に代わって納税のことまでやらなきゃいけないのだ。多くの税理士にはそんな意識があります。

100歩譲って、確定申告のみ電子納付の手続きをするとします。決算報告はするのでその時にいくら口座振替されますので口座にお金を用意しておいてくださいと言ったとします。でも予定納税はどうでしょうか?予定納税は決算から半年後に来ます。それをいちいち税理士がすべて覚えておいて管理して、わざわざ納税のためにe-tax処理をする。これはいくら何でも違うんじゃないかと思います。今は予定納税の納付書が納税者に郵送されるから納税者も気が付くという顧問先もあります。もし、納税を忘れてしまったら誰の責任なのでしょうか?納税の管理まで税理士に押し付けるのはちょっとというか、かなり見当違いな話になります。その点を国側も理解してほしいです。

インボイス制度注意点その5

インボイス制度については底なし沼のように問題点が出てきて、もう実務家としてどうしたら良いものかと悩むようにまでなっています。実務にはインボイス交付を受ける事が困難な取引があります。次のような場合には、インボイス交付ではなく、帳簿の保存で良いとされています。それは下記の取引です。
①税込価額3万円未満の公共交通機関(船舶、バス、鉄道)による旅客の運送
②税込価額3万円未満の自動販売機又は自動サービス機による商品の販売等
③郵便切手を対価とする郵便サービス(ポストに投函されたもの)
④簡易インボイスの必要事項が記載された入場券等が、その使用の際に回収されてしまう取引
⑤古物営業、質屋営業又は宅地建物取引業を営む事業者が、適格請求書発行事業者でない者から、古物、質物又は建物を棚卸資産として取得する取引
⑥事業者が、適格請求書発行事業者でない者から、再生資源又は再生部品を棚卸資産として購入する取引
⑦従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当等及び通勤手当

帳簿の記載方法ですが、例えば①に該当する時は「3万円未満の鉄道料金」、②に該当する場合には「〇〇市 自販機」、「××銀行△△支店ATM」などと記載します。④に該当する場合には、「入場券等」などと記載します。⑤の取引のうち古物台帳などについては相手方の氏名及び住所を記載します。⑥の取引を事業者から購入する場合、その事業者名を記載します。書いて説明しているだけでクラクラきます。こちらは全ての事業者が対象となります。

そてとは別に基準期間(2年前)における課税売上高が1億円以下又は特例期間(前期6カ月)における課税売上高が5,000万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に行った課税仕入れについて、その課税仕入れが税込み1万円に満たなかった場合は、一定事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められることになります。これは「少額特例」といいますが、小規模事業者だけに認められた制度です。3万円未満切符は全員対象で、1万円未満領収書は小規模事業者のみです。ご注意ください。

インボイス制度注意点その4

免税事業者が適格請求書発行事業者となったことにより課税事業者になった場合には、課税売上にかかる消費税から控除する金額を売上税額の8割とすることができる(2割特例)というものがありますが、事前の届出が不要です。ここで注意したいのは、この「2割特例」は、その適用期間(令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間)において、課税期間ごとにその適用の有無を判断しなければならないという点です。

例えば、9月決算法人で本来免税事業者なのに、適格請求書発行事業者になったとします。令和5年10月1日~令和6年9月30日までの申告は売上は1,000万円を超えていましたが基準期間の課税売上高が950万円であったため、2割特例を使って80%仕入税額控除をしました。令和6年10月1日~令和7年9月30日は基準期間(2年前)の課税売上高が980万円であったため、再び2割特例を使いました。令和7年10月1日~令和8年9月30日はまだ適用期間ですが、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円を超えていたため2割特例は使えません。

ここ、間違えそうですよね。まだ2割特例適用期間だし、2年連続2割特例使ってきているので、使えると思い込んでいると大きな誤りになります。2割特例はあくまでも、もし、適格請求書発行事業者じゃなかったら免税事業者である。ということを前提としています。毎年使ってきていても、適用期間内であっても毎年、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下かどうかを確認する必要があります。

インボイス制度注意点その3

前回(2023年5月2日のブログ参照)インボイス制度注意点その2で請求書作成の際の端数処理の仕方についてお話しました。今回自己システムを利用している消費税原則課税の顧問先から質問が着て、ハッとしたことがございます。前回の添付資料をご覧ください。請求書を発行する側は、8%と10%に分けた合計額に消費税を加算するやり方で請求書を発行することは前回述べた通りです。でも請求書を受け取る側はどう会計処理をするのでしょうか?

例えば添付書類を例に取ると、同じ10%消費税に花と肥料があります。花が交際費で肥料が雑費の場合、どういった会計処理をするのか?この場合、交際費(税込)4,827円(消費税438円)と雑費(税込)26,145円(消費税2,376円)と仕訳するしかないと思います。この仕訳の消費税の合計額は、インボイス請求書の消費税の合計額2,815円と1円の差が出てしまいます。インボイスはそもそも売り手と買い手の消費税額の一致を目指しているはずなのに勘定科目が違うと別に入力しなければならず、結局一致しなくなります。

その顧問先の優秀な経理担当者が国税庁に聞いても、ソフト会社に聞いてもその点ははっきりしない回答だったそうです。ソフト会社はどちらでも良いと答えたそうです。なんじゃそりゃ!だから紙でのインボイスは無理があるのです。ちゃんとやりたくてもちゃんと出来なくなっています。結局手作業のインボイスはどこかで不都合が生じます。デジタルインボイスに移行するしかないのではないでしょうか。

インボイス制度注意点その2

インボイス制度が始まるに当たって早めに解決すべき注意点として下記が挙げられます。パソコン作成や手書きの請求書を出すところなら早急に対応できますが、スーパーなどのシステムを使っている場合は、改修等も必要になってくることから早めに対策する必要があります。下部の添付資料をご覧ください↓
インボイス端数処理
今現在は区分記載請求書方式なので、添付資料の左側のようなシステムを使っている事業者も多いと思います。これは個体の取引ごとに消費税の端数処理をして、その合算額が一番下の合計額に反映されています。ところがインボイス請求書ですと、添付資料の右側のように個体の取引ごとではなく、税率別に合算して端数処理します。ですから個別で端数処理する(左側)のと合計額で端数処理する(右側)では自ずと消費税額が違ってきます。

スーパーなどでは左側のシステムが多いと聞いたことがあります。自社のシステムを確認し早急に対応しなければなりません。インボイスをする事によって事務作業が増えるのは情報社会にとって時代に逆行しています。税理士業界では未だインボイス制度そのものに反対する税理士も多いですが、デジタル化は国際的にみても避けられないので、もっと税理士が積極的にこの制度に関わり使いやすいデジタルインボイス制度にしていくしかないと思います。インボイスといい、電子帳簿保存法といい、中途半端なデジタル化がかえって現場を混乱させて事務手数を増やしているという現実に向き合う必要があると思うのです。