医療法人は株式会社と違い特有の税務があります。平成25年1月29日に遅ばせながら、平成25年度税制改正の大綱が閣議決定しました。気になっていた医療法人関連税制ですが、事業承継税制(一定の事業承継をした場合、相続税評価の80%を納税猶予するという制度です)について、適用範囲が広がりましたが、医療法人は相変わらず対象法人ではありませんでした。従って、持分の定めのある社団医療法人は今後も相続税対策を強化しなくてはいけません。
税制改正大綱は3部で構成されています。第一で基本的考え方を示し、第二で具体的内容を説明し、第三で検討事項を示しています。税制改正のセミナーなどは第二の具体的内容を掻い摘んだものですが、実はこの第三の検討事項を読みこなせれば今後の税務の行方も分かってきます。検討事項15項目のうち何と2つも医療法人系の内容が書かれていました。
「5医療にかかる税制のあり方については、消費税が10%に引きあげられることが予定される中、医療機関の仕入れ税額の負担及び患者等の負担に十分に考慮し、関係者の負担の公平性、透明性を確保しつつ適切な措置を講ずることができるよう、医療保険制度における手当のあり方の検討等と併せて、医療関係者、保険者等の意見も踏まえ、総合的に検討し、結論を得る。」
こちらについては医師会の努力が実ったのか消費税10%引き上げ時に医療法人の損税問題を検討してもらえることになりました。ただ、このまま非課税なのか、課税なのか、免税なのか、全く見えていません。
「14事業税における社会保険診療報酬に係る実質的非課税措置及び医療法人に対する軽減税率については、税負担の公平性を図る観点や、地域医療の確保を図る観点から、そのあり方について検討する。」
こちらは社会保険診療報酬について事業税の非課税項目から外そうとする動きです。ただ、個人的意見ですが、そこまでする必要があるのかということです。現在、東京都内ではクリニック経営はできても病院経営は赤字で経営できない状態です。それは、日本中収入は社会保険診療報酬で決まっているのに、人件費や土地使用料が高いからです。つまり、都内で病院を経営すると、経費がかさむのです。今、東京都内で繁盛している病院は大学病院や公的病院など税金を払っていない病院ばかりです。無税病院が競合となっている医療法人にこれ以上の税負担をさせるのは酷ではないでしょうか?病院は地域医療のために必要なものなのです。