巡礼の家

プロローグを読んだ時、え?これは絵はついていないけど絵本の内容のような童話?と思いました。サギが出てきました。神の遣いとしての鷺です。そのサギが四国巡礼の道後温泉にある宿「さぎのや」の初代女将に姿を変え、代々お遍路で行き場を失った人々を受け入れる宿となります。

プロローグが終わり小説が始まりました。両親が水害により行方不明となり、兄と二人きりになった小学生の雛歩が主人公です。孤独と絶望の中で雛歩はさぎのやの女将に助けられます。雛歩の身体が回復して心も回復するまでの物語です。さぎのやで働く人は皆、優しい。他人でもまるで身内のように、いや身内以上に人々に接します。最後の方ではうるっとくる内容になります。

さぎのやで働く人達は何故みな親切なのか?雛歩が不思議がります。それは普通の事のようです。さぎのやの普通が世の中の普通になればどんなに住みやすく生きやすい世の中になるか。自分が親切にすることで周りも親切にしてくれる。だから生きやすくなる。自分が困っていても必ず誰かが助けてくれる。だから誰かが困っていたら自分が助けるという良い循環が生まれます。とても心が暖かくなるお話でした。

自宅でできるライザップ

今、東京オリンピック最中なので体を動かしたくなって、こんな本を読んでみました。コロナ太りになった人も多いようなので、私もじっくり読みました。ダイエットの基本は食事と運動です。食事の3つのポイントは、①主食を抜く。②1日3食をしっかりとる。③タンパク質のおかずをメインにとる。です。これは有名な話なので皆さんご存知かと思います。

そして生活の3つのポイントは①筋トレをする。②水分を取る。③体内時計をリセットする。です。①の筋トレをする。はライザップらしいと言えばライザップらしいですが、やはり体を動かすことは重要みたいです。筋トレが難しくても1日1万歩以上歩くとかでも対応することは可能です。③体内時計をリセットするは、抽象的で分かりづらいですが、要は朝起きて太陽の光を浴びて朝食をとることらしいです。余談ですが、朝日を浴びるのは痴呆防止だったり、鬱予防だったりもします。実践編も載っていて、カロリー計算の仕方や摂取カロリーの計算方法その他多くのページを割いているのはダイエット料理方法です。具体的なレシピが沢山載っています。

カラーで写真も多く読みやすい本です。運動しているのに痩せない方はこの本を読めばバッチリです。私の経験上、ダイエットは運動と食事の両方を管理しないと達成できないような気がします。自炊する機会が増えたと思いますのでこちらに載っているレシピに挑戦するのも良いのではないでしょうか。

ボクたちは、みんな大人になれなかった

何だかね懐かしい感じの小説です。43歳の主人公の男性がフェイスブックで昔の恋人を見つけ、間違って友人リクエストを送ってしまい、昔の事をあれこれ回想するお話です。その彼女との出会いが若い頃アルバイトをやっていたときに求人誌に文通コーナーがあってそこの自己紹介を見てピンときて会ったのが最初です。ラフォーレ原宿で最初のデートをしたとか、Hot-DogPRESSを見てデートの仕方を学んだりとか、うる星やつらだの1999年恐怖の大王だの、懐かしいフレースが色々出てきます。これらフレーズを聞くだけでそういえばそんな時代だったなとこの作者と同世代の人であれば感じると思います。現在に戻るときはLINEが出てきたり・・・

小説ってその時代で、出てくるアイテムが違うからそのアイテムが出てきた瞬間、特にいつと言わなくても大体の時代背景は分かるものなのですね。そんなアイテム使いが上手な小説でした。若い頃は貧乏で、どの道に行くか迷いながらそれでも今とは比べ物にならないくらいブラックな環境で齷齪働いて、それでも彼女と過ごした日々はそれを救うだけの価値がありました。中年になってから若い頃を思い出すとみんな多少内容は違くてもそんな感じ。そんな風な思い出になるもので、現在はある程度社会的にも自立していて、幸せじゃないわけでもないけど、何故か若い頃の貧乏でそれでいて充実していた日々を懐かしく思う感じの小説です。そして甘く切ない余韻をも残す小説でした。

経営者の条件

ご存知マネジメントの神様ドラッカーの本です。私はマネジメント系のゼミに居たので、明治大学ビジネススクールに通っていた頃はこのような種類の本ばかり読み漁っていましたが、最近では小説ばかり読んでいます。小説は小説でそれぞれの世界があり良いのですが、たまには夢中で勉強していた頃の本を読みたくなり読んでみました。流石ドラッカー、今読んでも古臭くなくごく当たり前で納得できることばかり書いてあります。この本を読むと襟を正して真摯に生きていこうとさえ思います。

この本の主たるテーマは成果です。成果をあげるということをあらゆる場面から事例も踏まえて書かれています。特に共感したのは、「成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。時間が何にとられているかを明らかにすることからスタートする。次に時間を管理すべく、時間に対する非生産的な要求を退ける。そして最後にそうして得られた自由になる時間を大きくまとめる」という文章です。

時間は普遍的な制約条件であるし、皆に平等に与えられた権利です。それをどう使うかは自分次第だし、私の仕事のように物を仕入れて売る仕事では無い場合、いかに時間管理が大事かということを常に実感しています。収入に合った時間コストを常に考えないと貧乏暇なしになるからです。士業には実はこの手の悩みを抱えた人が沢山います。何故か収入の割に忙しく時間がいくらあっても足りないという言葉をよく聞きます。それは時間管理ができていないから。そして仕事が欲しいばかりに時間がかかるのに安請負するからです。この本を読んで改めてモヤっとしていたものがはっきり見えた感じです。たまにはこのような本もいいですね。

オール・ユー・ニード・イズ・ラブ

この本は2020.12.9にブログを書いた「フロム・ミー・トウ・ユー」の続編のような物語です。このシリーズを読んだ時、生まれて初めて大家族っていいなと思ったのです。4世代が暮らす堀田家ですが、それぞれが曲者で味のある人々。それでいて家族全員認め合っています。助け合っていると言っても良いかもしれません。

堀田家の日常を描いた本ですが、前回はそれぞれの登場人物が章ごとに主人公になっていました。いわば自己紹介のような作品でした。今回は主人公は1世代目の東京バンドワゴン(古本屋)3代目店主、勘一の妻サチです。サチは6年前に亡くなっていますが、魂はここにあるようでその魂の言葉で描かれています。それから今回は前回の作品よりも堀田家以外の外部者も多く登場します。それなので一番初めのページに例の登場人物相関図が書かれています。相関図だけでも44人登場しています。

ハードカバーですので1日で読むことはなく何日もかけて読むことになるので途中でこれ誰だっけ?という時にこの相関図は役に立ちました。ちょっとした事件や日常を書いた作品ですが、何故かとても心が温まります。ゴールデンウィークが昨日より始まりましたが、ゴールデンウィークこそ、こんな家族の繋がりを大事にする本を読むのが良いのかもしれません。ちなみにこの本の題名であるオールユーニードイズラブもビートルズの曲ですが、日本語訳は“愛こそ全て”です。

デンジャラス

華やかな本の表紙に魅せられて読むことにしました。春の花と本の題名に、現在小説でしかもテンポの早い少しミステリー要素も含んだ作品だと思っていましたが、全く違いました。この本を書いたのは桐野夏生氏ですが、内容は小説家谷崎潤一郎氏(1886年生~1965年没)の周辺で起こった事を題材にしています。物語は谷崎潤一郎氏の3番目の妻松子の妹の重子の目線で書かれています。谷崎氏の出生から書かれているわけではなく、3番目の松子と結婚した後から79歳で亡くなるまでの期間についてです。

谷崎氏は自分の小説に身近な人をモデルにしてそれに装飾を加えて作品を生み出します。それによって周りの人がどのように影響されてきたのかが分かります。また、戦前からの事も書かれていて日本という国がいかに男性社会だったのかが分かります。女性が働くと職業婦人と言われ女性が働かないとやっていけない家庭(低俗)とされていました。また、専業主婦の妻だけではなく他にも女中が何人かいる。それが家族でした。その大家族を一家の大黒柱の谷崎潤一郎が支えている。そんな世界でした。

谷崎潤一郎という小説家について主人公を妻の妹という第三者の視点で描き、全体として桐野夏生氏という現在の小説家が書いています。この手法は「銀河鉄道の父」で宮沢賢治氏の事を書いた門井慶喜氏の手法に似ています(2018年11月26日のブログ参照)小説家の事はその小説の作品を読んでしか分かりません。でも小説家そのものを知りたいなら、「デンジャラス」や「銀河鉄道の父」のような本を読むことによりその小説家そのものに触れ、作品を読むにもより深く読めるものです。題名の印象と本の中身がこれほどかけ離れた作品は珍しいですが、強いて言えば谷崎潤一郎という作家の生き方自体がデンジャラスでした。そう考えるとこの本の題名も全く違うというものでもないのかもしれません。

生かさず、殺さず

この本のタイトルを見た時、ちょっと嫌な気持ちになりました。なんとなく、週刊誌の表紙を見ているような気分になったのです。でもパラパラめくっていると痴呆症で、かつ、疾病を抱える病棟の専属の医師の物語だったので読むことにしました。長寿社会の日本では痴呆を抱えた人は年々増加しています。私の周りにはまだ認知症はいなく実際に認知症を見た事もないので認知症というのがどのようなものなのか。また、それに携わる医師や看護師はどのように接するのかを知りたくて読みました。

認知症は病気ではないと知っていましたし、治るものでもないというところまで知っていました。でも同じ認知症でも色々と種類があり、特に疾病を抱えている状態だと治療説明しても理解されなかったり、治療選択をするのも大変で、家族がどう考えるかにより治療内容も変わっているというのがよく分かりました。実際に触れ合う話を読むことにより、しかも医学的な見地からも考察できてとても為になったというのが感想です。

最後の方でこの本のタイトルである生かさず、殺さずについて触れていますが、本来の解釈は「百姓は米が足りないと困るから不足のないように、余ると仕事に励まなくなるから余らないように年貢を取る」という意味らしく、これも認知症の患者さんの治療にも当てはまるのではないかと言っていました。認知症の患者を無理に生かそうとするのも無理に死なそうとするのもよくない。その人にとって必要な事を過不足なくするのが、ほどよい医療ということでした。

本日は、お日柄もよく

以前同業者の女性が原田マハさんのファンだというお話を聞いていまして、たまたま書店でこの本を見つけ、お正月っぽいな。めでたそうと思い購入しました。普通のOLが披露宴で聞いたプロのスピーチライターのスピーチに魅了して弟子入りして、自らもスピーチライターになる話です。何故か読んでいる最中何度も目頭が熱くなりました。号泣ではなく、目頭が熱くなる。そんな本です。

自分が持っている熱い想いを人に伝えるにはテクニックが必要だということがよく分かりました。言葉というのは見えないけれど、直接感性に届きます。言葉が持っている魅力や重みが分かる本でした。スピーチライターというのは日本ではあまり知られていない職業ですが、アメリカでは認知されている職業で、政治家などはほとんどスピーチライターが付いているという事です。限られた時間の中(5分程度)で相手にどう伝えるか。相手の心を動かせるか。揺さぶれるか。かなりのテクニックが必要です。

私も講師業をたまにやるのでとても参考になりました。少しだけテクニックを披露します。1.静かになってから話す(ガヤガヤしていてもスポットライトが当たって話始めないと、大抵周りは、え?となって静かになります)2.衝撃的な一言から始める(平凡でない出だしで注目を集める)その他にもたくさんの極意が詰まっています。興味のある人は是非一度読んでみることをお勧めします。

フロム・ミー・トゥ・ユー

東京バンドワゴンという古本屋を代々経営している堀田家の物語です。4世代に渡る大家族の物語です。一番上の世代は勘一さんという今も古本屋で働いている3代目の店主しかいません。二番目の世代も勘一さんの子供である我南人という伝説のロッカーしかいませんが、三番目の世代になると我南人と亡くなった妻秋実の子供が2人、母親が不明な子供が1人います。四番目の世代はまだ子供ですが、それぞれ1人+2人+1人の合計4人が居ます。全部で11人の大家族です。

正妻の子供でない子が普通の兄弟のように暮らして育ったり、3番目の世代の一人は未婚の母を選択したり、何やら騒がしい家族ですが、それを自然に受け入れて生活しています。それぞれが個性があり上の世代になればなるほど熱血系で面白い家族です。一番最初のページに家系図が書いてあるのであぁ今、この人の話なのねと確認しながら読み進める事ができます。

余談ですが、題名の「フロム・ミー・トゥ・ユー」はビートルズの名曲ですが、和訳を見ると正にこの堀田家の家族の想いです。無条件の愛で溢れた家族です。普通でないことも愛があるから受け入れている家族の話です。なんか大家族っていいなぁと思える本でした。

おらおらでひとりいぐも

主人公は74歳の桃子さん。最近脳内で様々な声が聞こえ雑談しています。東北弁丸出しの様々な声が勝手な事を言っています。桃子さんは会った時から印象が良かった周造さんと結婚して一男一女をもうけました。周造さんの好みの女性になろうと必死で頑張ってきました。子育ても終えおだやかでしあわせな日々は周造さんが心筋梗塞であっけなく亡くなってしまって一転します。15年も前の出来事ですが、未だ受け入れられないでいます。でも不思議な事にもう誰かのために生きなくていいという環境におかれ開放感という逆の感情も生まれます。自由という感情・・・

愛する人を失い、子供も2人とも独立し今は一人で暮らしています。たまにもの凄い孤独感と寂しさに押しつぶされそうになりますが、逆に自由な解放感という気持ちにもなりながら生きています。実際にこのような状況にならないと本当のところは分からないけど、でもきっとそうなんだろうなと思います。孤独感と開放感は表裏一体です。その部分の感情の描写が繊細で、多分多くの女性がこの年齢になったら感じる事だろうと思える本でした。それでも子供から連絡あると嬉しいし、孫が遊びに来たら嬉しい。きっとそんなものです。私も自分の親とそんなに頻繁に連絡を取っているわけではありませんが、連絡してみようと思いました。私も母に言われます「子供は親に会いに来るのが役割だから・・・忙しくてもたまには連絡ちょうだいね」この本を読んで反省しました。うちの母もこんな思いしているのかしら?うちの場合はまだ父が元気だから良いけれど、ちゃんと連絡しなきゃなと思いました。