僕には鳥の言葉がわかる

ゴールデンウィークの課題図書として読みました。読み始めてすぐ、軽井沢の森に入り、木々を見ながら「この木には虫が集まるから、この鳥が来るだろう」「この木には実がなるから、こういう鳥が来るだろう」と語る場面があります。その瞬間、「この著者は、底知れない愛情を持って鳥と向き合っているのだ」と感じ、これは心して読まなければならない本だと思いました。読み進めると、鳥がどのような状況でどのような鳴き声を出すのかという“鳴き声の研究”が非常に興味深く描かれています。鳥の種類ごとに鳴き声が異なるのは当然ですが、どうやら異種同士でも互いの鳴き声をある程度理解し、協力し合っている節があるというのです。さらに、鳴き声には文法のような構造まで存在するのではないかという研究も行われています。長い年月をかけて積み重ねられた研究には脱帽するとともに、大きな感動を覚えました。

本書では、軽井沢の森を舞台に主にシジュウカラの鳴き声を研究しています。シジュウカラは町中でも見かける身近な鳥ですが、著者は実家の庭に巣箱を設置し、実際に住み着かせてもいます。そして、シジュウカラの生態や鳴き声の違いを両親にも教えているのですが、そのエピソードがまた微笑ましいのです。母親は猫などが近づくと、シジュウカラ語の“警戒音”を真似して鳴き、父親はほうきを持って追い払う。さらには、巣箱に雨漏りが見つかれば修理までしてしまう。その結果、軽井沢の森よりも実家の庭のほうが、卵からヒナが巣立つまでの生存率が高くなってしまったという話には思わず笑ってしまいました。長年にわたる研究の積み重ねと、鳥たちへの深い愛情に満ちた一冊で、読後には「とても良いものを読ませてもらった」と感じました。ぜひ多くの方に読んでほしい本です。

イン・ザ・メガチャージ

2026年本屋大賞の大賞受賞作品です。テーマは「推し活」。これまであまり縁がなく、普段であれば手に取らなかったと思いますが、本屋大賞の大賞ということで「これは読まないと」と使命感を持って読みました。歴代本屋大賞受賞作である『成瀬は天下を取りにいく』や『同志少女よ、敵を撃て』のように、冒頭から一気に引き込まれるタイプではなく、じわじわと沼に足を取られていくような読後感の作品でした。

これまで不思議に思っていたのが、推し活で、推しのためにアルバムを100枚買うといった話を聞きますが、一体どういう心理なのか理解できませんでしたが、本作を通して、推し活にもさまざまな段階があることが描かれます。比較的ライトに楽しむ人もいれば、周囲が見えなくなるほど深く没入する人もいる。そして、そのごく一部の“深くハマる人”を逃さず、さらに没入させるためのマーケティングが存在することが明らかになり、読み進めるうちに少し怖さも感じました。

ゲームやアイドルに課金しすぎてしまう人の話はよく聞きますが、そうした人たちは日常生活に何らかの不満や物足りなさを抱えており、心がときめく対象を求めて推し活に入っていくようです。対象がゲームやアイドルであるかどうかに関わらず、「何かに没入したい」という欲求は誰もが持っているものであり、方向が違えば自分も同じようにこの“沼”に入り込む可能性があるのだと感じました。

ラストも印象的で、ややダークな余韻を残します。没入を仕掛ける企業側の担当者である父親が、推し活に夢中になっている女子大生が自分の娘だと気づく直前で物語は終わります。「ここで終わるのか」と思わず声が出るような幕切れで、その後の展開をさまざまに想像せずにはいられません。読後に空想が広がる、不思議な魅力を持った一冊でした。

成瀬は都を駆け抜ける

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会いたかったよ。あかりちゃんという気持ちで読み始めました。成瀬シリーズ第3弾目でこれが完結編らしいですが、読み終わった後も続編が読みたいと思いました。社会人になった成瀬も見てみたいと思ったのです。今回の内容は成瀬が京都大学に通って様々な出来事に対応している話です。さすが京都大学。変わった天才が多いので今までより成瀬がマイルドに見えます。それだけ個性が強い人が沢山いました。相変わらずの成瀬ですが、常に進化をしている感じです。

親とのエピソードも出てきて成瀬があまりにも小学生の時変わっていたので、家庭訪問時に担任から注意されましたが、親はそれを否定せず「そういう子なのです」と対応しました。成瀬が成瀬らしくいられるのもこの両親に育てられたからだと思いました。成瀬は京都を満喫していて以前よりも多くの人たちと交流していました。一日にスケジュール埋め込みすぎだろと思うシーンもありましたが成瀬が元気そうで良かったです。成瀬あかりのファンとしては続編も要望します。成瀬シリーズを読むと元気がでます。私も頑張ろうと思えます。そんな本でした。

花屋が言うことには

地政学の本3連ちゃんですっかり心を病んでしまったので、ぱっと癒しの小説を読みたい、能天気な小説で中和したいと思って読み始めました。はじめはありふれた日常に平和だなという感じで読んでいましたが、植物及び花好きな私は特にこの本にハマってしまいました。日本の節句は5つあって、1月7日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日です。皆さん何個知っていましたか?3月は桃の節句でしょ。5月は端午の節句。7月は七夕の節句。1月は七草の節句(七草かゆを食べますよね)です。では9月9日は?知らない人も多いと思います。重陽の節句(菊の節句)です。この本では重陽の節句のことについて事細やかに書かれています。主人公がきくこ(紀久子)という菊に関する名前というのも相まって良い話でした。

その他にも私が今育てているクリスマスローズの話もあり、クリスマスローズの花と思われている部分は実はがくであり、だから花が散ってもがくが存在するから花がいつまでも咲いているように見えるとか、3月8日はミモザの日(これは知っていましたが、国際女性デーです)だったり、5月1日はスズランの日(これは知らなかった)など、花に関する情報も盛り沢山で地政学ですっかり沈んでしまった心を癒してくれる最高の本でした。癒されたい+花の知識を得たい人に最高の良本です。

暦の上では今日は立春です。まだまだ寒い日が続きますが、これから少しずつ小さな春を感じながら過ごせて行けたらと思っています。

経済で読み解く地政学

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お正月は、湊かなえ氏の暁星を読んだのでその感想を書こうと思っていましたが続けて、同じく湊かなえ氏の未来を読みましたら、両方とも子供2人が主人公で全員親に問題があるパターンで頭が混乱しました。その次に読んだのは地政学3連ちゃんです。経済で読み解く地政学・日本の地政学・佐藤裕の地政学入門とこちらも続けて読みました。同じテーマの本を読むのは小説は特に内容が似ていると混乱しますが、地政学のようなテーマのものはむしろ理解が深まります。

金融学と地政学は以前から学ぶべき学問だと思っていて、なぜ学校では教えないのだろう(最近では教えているようですが・・・)と思っていたところです。義務教育で教えるべきものが金融学と地政学だと思っています。著者の中には体を張って書いている人もいて、こんなこと書いて大丈夫?と身の安全を心配していまうものもありましたし、実際に訴えられたり誹謗されたりしても書いてくれています。読んでみて損はないかと思います。ランドパワーとシーパワーくらいは聞いた事あるかと思いますが、地政学を学べばなぜあの国はこんなことをするのだろう?と日本人が不思議に思える事柄も分かります。

中国やロシアそれと最近のアメリカも理解に苦しむ世界の情勢ですが、地政学の本を沢山読むと今の状態がいかに危うく危険かを実感していまいます。恐怖が心を占めてしまって悪夢まで見るようになったのでしばらく読まない事にします。しかもドンパチするだけが戦争ではなく、今は静かな戦争が常にある状態です。スパイだったり、気密情報取られたり、間違った情報を拡散させ混乱させたり、もうすでに戦中なのだとも思います。自分が誤った情報に流されないように注意しながら常に正しいことを考えていかないといけないと強く感じました。

2025年 読書感想

昨年より12月の「カテゴリー:本」は、今年読んだ印象に残った良い本BEST3を発表しています。今年はオーディブルで読んだので過去最大の82冊の本を読みました(実務書除く)また、今年自宅を引っ越したのですが、今までの下り通勤が、上り通勤になり、もう満員電車は乗れないということで、各駅停車の始発駅から乗って本を読みながら(聴きながら)通勤したのも大きかったです。家でも掃除などをするときは聴きながらやっていました。やはり本は良いと実感した1年でした。それでは発表します。

1位:神の子(上・下)
薬丸岳氏の作品です。この感想は2025年8月29日のブログで述べています。薬丸氏の作品の舞台は池袋をはじめ私の知っている場所ばかりなので、てっきり近所に住んでいると思っていましたが兵庫県明石市の出身でした。その他にも薬丸氏の作品であるブレークニュース、最後の祈りも読みました。やはり私の縄張り内の舞台が多くとても親近感をもって読めました。ただ、小説の内容は重く、社会問題になっているようなことがテーマです。多くの闇に一筋の光のような小説が多かったです。

2位:これは経費で落ちません1~12
主人公の森若沙名子に共感する物語で1巻から12巻まで読んでしまいました。お仕事本ですが、プライベートの事も書かれていていつの間にか森若さんの応援団になっていた本です。森若さんは会社の経理課に所属しているので森若さんの仕事が忙しいときなどは分かるよ!分かるよ!と心の中で叫んでいました。登場人物が多く、それぞれ実現する人のような個性があるのでとてもリアリティがあり面白い小説でした。

3位:国宝(上・下)
ご存じ爆発的なヒットとなった映画国宝の小説版です。小説の感想は2025年7月4日に、映画の感想は2025年7月9日にブログに書いています。小説と映画とどちらが良かったかと聞かれたら小説です。人の一生が書かれているので主人公の喜久雄だけではなくその周りの人たちについても1つの小説になりそうなくらいの人生があります。小さな本に壮大な物語が詰め込んである本でした。

こんなに本を読んだ年はなかったので多くの本を読むことについての弊害も述べておきます。今回選んだ1位~3位はすべて物語である小説ですが、小説は読んだ後に心の中に滞在する時間が長いです。ですから小説を立て続けに読むと続き物の場合は良いのですが、似たような違う本を読むと中身が混乱することが分かりました。ですから続き物以外の小説を読むときは小説と小説の間に違うジャンルの本を入れないと内容が混乱しやすいのです。だから小説でない本も多く読んだのですが、やはり心に残るのは小説ですね。来年も通勤時間や移動時間を中心に本を読みたいと思います。

金環日蝕

近所のおばあさんがひったくりに合い、一緒に犯人を追いかけた2人(大学生の春風と高校生の錬)の物語と、母子家庭の子供で母が病気で働けなくなり一家を助けるために特殊詐欺に加担してしまう大学生理緒とそのボスである加賀谷に恋心を抱いている物語。その2つの物語が同時並行で描かれています。それが1つになるとき、様々な謎が解かれていきます。

この本を読んで思ったのは、悪人と善人はきっちり二分化されているものではなく、その人の中にも悪人と善人の部分があって全体的にもグラデーションのかかったものなのだということ。人はちょっとしたきっかけですぐ悪人と呼ばれる行為に及んでしまう危うさがあるのだと知りました。人は守りたい人がいると知らないうちにそちらに足を踏み入れてしまう。それが悪の道だと薄々気付いていても、守るという事を言い訳にして・・・本当に簡単に起こりそうな事でぞっとしました。

善人だと思っていた人が善人とは言えない裏の顔を持っていたり、底抜けに明るく何も悩みがないような子が陰の部分を持っていたり、人間の底知れぬ人格がそれでもこうありたいと願う感情など色々感じることができる面白い本でした。秋の夜長に最適な本です。

幸せジャンクション・思いをつなぐハイウェイ

幸せジャンクションは退職金代わりにもらったキャンピングカーで人助けをする良い人の物語。思いをつなぐハイウェイはその続編です。周りに不平不満を言う人がいると心が疲れてくると思います。常に文句を言っている人っていますよね。でもこの主人公は常に良い人です。しかも誰かの役に立つお節介を常に行動に移します。ちょっと自己犠牲の部分もありますのでそこまでやらなくてもと感じることもありますが、様々な人を助けることによってつながりができ、将来自分がピンチになった時に、過去に親切にした人に助けられる。そんな物語です。

その良い人に触発されて心が荒れていた周りの人も少しづつ変わってきます。小説なのでピンチの時に過去に手助けした人が助けてくれるタイミングが絶妙すぎてやはり物語だなと思ってしまいますが、もっと長いスパンで考えると人生はそんなものなのかもしれません。物語のような話は所詮物語だから現実とは違うと思いがちですが、ドジャースVSブルージェイズとの2戦目、3戦目は本当に物語のようでした。ホームラン3回とか、9回連続出塁とか現実では考えられないことが実際に起こっています。そう考えるとこの物語の方がまだ現実味があるような気がします。

やはり、人は安らぐ人、良い人の周りに集まってきます。その場所が居心地が良いからです。読んでいる途中で内容が想像できてしまいますが、多幸感を求めてつい続編まで読んでしまいました。癒しを求める人にお勧めの本です。

夜明けより静かな場所

本を読むというのがいかに素晴らしい事かを再確認できる作品です。リアル生活が整っていなくても本を読むことによって何が正しくて何が正しくないのかが自然に分かってきます。それが本の魅力です。また、同じ本でも人によって感想はそれぞれで自分の感想は過去の経験や出来事、また思考などで変わってきますから、様々な感想を知ることによるメリットもあります。私も本を多く読みますが、色々共感できる部分があり、読んでいて楽しかったです。

正直、期待しないで読み始めた本ですが、どんどんのめり込んでいる自分がいました。改めて本のすばらしさが分かる本でした。読書について今まで深く考えた事ありませんでしたが、この本を読むと小さな本に無限の可能性を秘めていて自分の生活にプラスにしかならないのが本だというのを改めて感じました。本を読まない人はそれだけで人生を損しているとさえ思います。この本を読んで本当に良かったです。

神の子

神の子上下巻を読みました。この本は先月感想を書いたブレイクニュースを書いた薬丸岳氏が著者です。ブレイクニュースの時もそうでしたが、神の子も戸籍のない子供や、捨てられた子供、虐待を受けた子供という社会問題が根柢にあります。そしてブレイクニュース同様に池袋をはじめ私に馴染みのある町が沢山出てくるところからも親近感を持って読むことができました。主人公は戸籍を与えられなかった知能指数が高い子供の半生を描いています。

子供は生まれた場所や環境を選べないですが、なかなか劣悪な環境で育ち14歳にして一人で生きていくことを決めた少年、町田博史。彼は生きるために何でもやってきました。人殺し以外は・・・感情がなく無表情で何を考えているか分からない少年。そんな少年が徐々に人間らしい感情を取り戻していく物語。それでも人はなかなか変われないから表面的には愛想もない冷淡な印象は変わらないまでも彼の芯の部分が徐々に、そう北極から持ち込まれた長い間固まっていた氷が徐々に溶けるようなそんな本でした。

表面的には不愛想で冷淡ですがその中身は周りの人を救おうと奮闘しています。しかも助けようとしている周りの人にばれないように・・・なぜ良心を隠すのか。それは貸しを作りたくないから。彼は芯の部分では善良です。最後の章で半年前まで見ていた夢と今の夢は違うと言っていたのが印象的でした。今まで見ていた夢は悪夢の事で、今の夢は未来を思う夢なのだと思います。そして町田の最後の言葉を聞いた瞬間、涙が出ました。そこで終わるのかよ。ずるいと思いました。良本です。