借り物です。結論から言うと読んで良かったと思います。多分本屋で出会っても、手にしない本だと思います。気が合わないというか発するパワーが違うというか。でもそれがとても新鮮で斬新で刺激的でした。面白いとさえ思いました。
著者は大学卒業して2か月社会で働くも嫌になって辞め、それ以来何の職業にもつかなかったのですが、お金が欲しいと思い、治験をやってみたら案外お金になるので治験のプロとして何件もの治験をやっているということでした。
治験って知っていますか?そう、世の中に薬が出回る前の人体に悪影響がないか。とか、本当にその薬がその病気に効果的なのかどうか。といういわば人体実験の事です。
治験には4段階あって、第一相治験と言う1段階目はそもそも健康な人体に悪影響がないかどうかを調べるというもの。第二相治験は、少数のこれから開発しようとする薬の対象となる患者に対して行われるもの。第三相治験は、大人数の患者に対して行われ、このステージで良いデータが出れば、厚生労働省に提出できる資料となり認可となります。第四相治験は、市販された薬に行われるもので飲み合わせなどのデータも取るらしい。
著者はこの中の第一段階の治験である第一相治験をやっています。治験年収約160万円7年以上治験一本で喰っているプロ治験者です。
年間労働日ゼロ。好きな事を好きなだけやっている。十分に働ける五体満足の体だが、ただ「働きたくない」ため治験という職業を選んだということです。この本を読んで知ったことは第一相治験というのは、男性しかできなくて、しかも20歳から35歳の健康な方。MBI=19.0~24.5以内の方というのが多いらしい。20泊21日の入院治験についても書かれていて、3食昼寝付きというか検査以外の時間は自由。(と言っても外出はできませんが)53万円のお礼金です。このお金が振り込まれた時、もう止められないと思ったそうです。
著者の先輩プロ治験者は28歳で治験をやり始め15年間治験プロとしてやってきたのだが、最近スクーリングでも落ちてきて参加できる治験が激減してきたという。それを見て、このままじゃいけない。ちゃんと就職しようと思い面接するも今までどこで何をしていたのですか?と聞かれ、不採用メールを何通もいただいたが、やっとのことでビルの清掃会社に就職しようとした時にまた、治験の話があり結局治験を受けることにしてしまいます。
最後に著者がこう言っています。「そう、私はまともな人生よりも、楽な人生を選ぶ決心をした。楽といっても、期間限定の楽で年老いた後の事は知らない。」「高いところから低いところに流るる水。自然科学的に分子ひとつまでこの法則に従う。その逆は決してない。莫大なエネルギーが要る。」「だからやっぱり楽はやめられない。行けるところまで行ってみよう。この体がぼろぼろになるまで。」
いろいろ考えさせられました。いろいろと参考になりました。ありがとうございました。