ご存知、今年の本屋大賞の大賞作品です。凪良ゆう氏の作品は、流浪の月を読んだ時、固定観念に囚われない家族の在り方などを考えさせられましたが、この作品もさらにバージョンアップして家族の在り方、夫婦の在り方などを考えさせられる作品でした。物語の核となるのは、田舎に住んでいるそれぞれ家庭に問題がある17歳の高校生男女の15年間の歳月です。それぞれが変わらず想い合っているのに、男女の考え方の相違や個の歩んできた考えの違いなど1つの事柄を違う角度から見た場合の感性の違いなど見事に描かれています。
周りにいる大人も様々でそれぞれが個性があり、ここに登場する人物の誰に一番共感するかでその人の感性がある程度分かるのではないかと思うほど、人物の作りが細やかでそれぞれが生きています。完璧な人物はいなく、それぞれが魅力と欠陥を抱えているところが人間臭く泥臭く生きているという感じがします。私個人的には瞳子さんと北原先生が好きですが、この作品を読んでそう答えるのは多数派ではないような気もします。
北原先生が提案した互助会の会員としての夫婦というのは何とも斬新で、でもとても建設的でお互いがピンチの時は全力で応援します。男女絡みの件でも100%味方です。普通の夫婦では有り得ないですが、始めから普通の夫婦としてのスタートではなく、互助会としての夫婦なのでできるのでしょう。個人的にはそうした夫婦の在り方も有りかなと思います。家族・夫婦の固定概念を考えさせられる物語でした。普通ではない場合、異質と捉われて世間から冷たい目で見られたりします。他人に迷惑をかけているわけではないのでいいじゃないか。私だけでもそういう考え方を支持したいと改めて思う物語でした。