デジタルトランスフォーメーション(DX)

コロナ禍になり、この3年で随分とデジタル化が進んだと思います。会計事務所もコロナ前は通勤が当たり前でしたが、知り合いの税理士事務所を含め、今は在宅勤務と事務所勤務の併用が当たり前になってきています。店舗販売の会社や大きな機械で物を作る製造業、医療機関などテレワークが難しい業態もありますが、無店舗経営に移行する。機械に設備投資するなど人がやらなくてもできる仕事はできるだけ機械やソフトにやらせるという方向性に進むことが今後の経営の肝となると思います。

士業は特にDX化が遅れていて、他の業種と比べても遅れているなぁと感じる事が多々あります。今後はどの業界でもDX化は必須でそれに向けた経営方針の転換を図らなければ10年後は生き残っていけないと思います。確かに今の状態を変えるのはもの凄い労力を要するし、エネルギーも必要です。でもそこで面倒臭がっていたら後手に回ります。自分の事務所の事も顧客の事業の事も真剣に考える時期になりました。確定申告が終わり3月決算が終わったらちゃんと考えます。私の夏の課題にします。よろしくどうぞ。

オンライン資格確認導入の経過措置

オンライン資格確認の導入が4月から原則義務化されます。準備が間に合わない医療機関へ救済措置が設けられました。3月末日時点でやむを得ない事情がある場合、救済措置がありますが、やむを得ない事情とは具体的にはどのような事でしょうか。

例えばシステム契約はしたけれどシステム整備が間に合わない場合、システム整備の完了まで(R5.9末が限度)。設備が古かったりへき地で必要な光回線ネットワーク環境に無い場合は環境が整備されてから6カ月後まで。医療機関を改装中だったり、臨時施設で運営している場合は改装工事の完了または臨時施設の終了まで。訪問診療専門の医療機関については来年の4月までの救済措置となります。他の理由でも猶予が認められるケースもあるので、猶予を希望する場合は、完了予定月などを地方厚生局に事前に届出が必要です。

医療機関だけではなく個人にも影響するのが4月からの保険証の利用です。今までと同じ保険証を医療機関に提出して受診した場合、患者の負担が増えることになります。マイナンバー保険証を使用した場合には安くなります。例えばマイナンバーなしで通常保険証だけで受診した場合、マイナンバー保険証に比べ、初診料で60円、調剤管理料で40円、再診料・外来診療料で20円高くなります。

湯道

最近仕事がバタバタしていたのであまり疲れない映画を観たいと思い、温泉好きな事から「湯道」を観に行きました。街の少なくなった銭湯のお話でした。温泉ではありませんが、そこには人々が湯を求めやってきます。それぞれ湯を通してのドラマがあり人生があります。銭湯を営んでいた父が亡くなり、それを継ぐ次男と長男との考え方の相違。銭湯に来る人々の銭湯への思いなどが絡み合って、それでも最後にはお風呂は最高!と思ってしまう映画でした。

銭湯の看板は開店している時は「わ」閉店したら「ぬ」の木札がかけられます。これどういう意味?と思いながら見ていましたら、映画の中で解説があり、「わ」は湯が沸く。「ぬ」は湯を抜くという意味でした。ほー納得!シリアスな部分(銭湯の今後の経営)とほっこりする部分(母と子が女湯と男湯に分かれて上を向いて歩こうをコーラスするシーン)とコミカルな部分(外国人の夫候補と義理父の掛け合い)など、が散りばめられていました。大きな事件とかはありませんが様々な小さな感情が沸き上がる映画でした。

よくがんばりました

幼少期にお酒ばかり飲んであまり働かない父から逃げるように、母と二人で暮らして育った50代の中学教師の男性の元に警察から父が亡くなったという知らせが届きます。もう関係ないからと突っぱねますが他に親族もいないので面倒ながら故郷の愛知県に戻ります。時期的にだんじり祭り(西条祭り)の最中で、否応なしに子供の頃のだんじり祭りを思い出します。父との忘れていた記憶まで思いだします。父に愛された記憶がないという幼少期でしたが、自分が中年になって愛されなかったのではなく父が不器用だったのだと知ります。

父は、昔住んでいた時のままボロボロの家に住み、人が住んでいたとは思えないくらい物が少なく整頓された家の中、あの頃と同じ貸本屋を今も続けていたという現実。父が必要とされる人にある本を受け継いていたこと。自分が知らなかった父の姿を知る事になります。昔の嫌な思い出ばかりの幼少期ですが、だんじり祭りの時だけワクワクして気持ちも高まった事も思いだします。豪快なだんじり祭りの描写にはお祭りが持つパワーのようなものを本を通じて伝わってきました。父が唯一残しただんじりの法被(はっぴ)。そして思い出の本。

主人公は人に迷惑をかけてはダメだと思って生きてきましたが、迷惑をかけたくないと思っていても、家族はそんなことはできなくお互い様で迷惑をかけながら共に生きていくのが家族です。家族とは迷惑をかけるものなのだという言葉にとても深いものを感じました。人にはそれぞれの人生があり、それぞれが頑張って生きています。よくがんばりました。と言って貰えるような生き方がしたいと思いました。

総則6項

相続税の申告は基本的に相続税評価額をもって金額を算定します。でも財産評価基本通達の総則の第6項(いわゆる総則6項)というものもあって、これは取扱通達(法律ではありません)ですが、「相続税評価額で評価することが著しく不適当である場合には、国税庁長官の指示を受けて評価する」というものです。総則6項は伝家の宝刀の規定なのです。

タワーマンション節税対策で有名になりました判例があります。2008年当時90歳だった被相続人が信託銀行に相談して相続対策として2棟のマンションを14億円で購入して信託銀行から10億円借りました。このマンションの相続税評価額は2棟で3億円、つまり、相続税の課税価格は3億円なのに債務控除が14億円できるという節税対策を信託銀行がやったのです。それをこの評価は適当ではないとして3億円の追徴課税を行なったというのが流れです。

この判例は信託銀行が作成した稟議書に相続税対策のためと書かれていたり、節税対策だけのためにやっているというのが明らかだったため負けましたが、全てのタワーマンションでこんなことが行われるわけではありません。通達によって評価するのが著しく不適当かどうかというのは書くのは簡単ですが、判断はとても難しいです。課税の公平性を著しく害することが明らかなどの特別な事情が必要だとされていて、今回の争点となりました。つまり税逃れの意図が強く出る行き過ぎた節税対策が危険だということになります。

私がこの申告をする税理士だとしたらどうしたかというと、やはり相続税基本通達の3億円で評価していたと思います。行き過ぎた節税だと思っても自ら14億円では評価しないです。税理士は皆そうだと思います。ですから総則6項は税理士泣かせの規定でもあります。伝家の宝刀が行き過ぎないように私たち税理士も行き過ぎ総則6項には、反論しなければなりませんし、節税だけの金融機関のアドバイスにも厳しい目を向けなければなりません。

譲渡所得

確定申告をやっていて感じる事はここ2~3年の土地・建物の譲渡所得は税金が出ているという事です。それより前は、家を買って売る場合、最低でも2~3割安く売るのが普通でした。ところがここ2~3年の土地と建物の譲渡所得は軒並み利益が出て税金が発生しているものばかりです。そう考えると不動産バブルは間違いないです。当事務所のマンションもかなり高騰していて、今売ればお金持ち?と言わんばかりですが、売っても新しいところを買わないといけないので売りませんが・・・

お客様が抱えていた負動産(なかなか売れなかった利用目的のない資産)も売れています。おそらく新築物件が資材の価格急騰でとんでもない価格になっているので、みなさん中古物件に手を出すのだと思いますが、それにしてもすごい勢いです。しかも売却益も何千万円と出ています。一時は人口が減っているから不動産は必要なくなるので大暴落するという説が10年前くらいに叫ばれていました。でも今はこんな状態です。この不動産バブルはいつまで続くのでしょうか?

税法もその時期の政策的背景を考慮して税制改正がされることがあります。それをいち早くキャッチして顧客にお伝えするというのも税理士の使命だと思いました。先日まで寒かったのにいきなり暖かくなり、桜ももうすぐ咲くとか言われています。もうすぐ春ですね。うちのスタッフの花粉症も凄い事になっています。

年金繰り下げ受給

年金制度改正法では昨年4月より繰り下げ受給が従来の70歳から75歳に延長されました。これは原則65歳で受け取れる年金を繰り下げることにより(つまり支給を遅らせることにより)1カ月あたり0.7%が上乗せされるので、3年遅らせて68歳より支給することにすれば0.7%×36ヶ月の25.2%の増額となります。これまでの繰り下げる年齢の上限は70歳だったため42%の増額がマックスでしたが、75歳になったことにより最大で84%の増額となります。

つまり長生きする人は75歳まで繰り下げ受給した方が得しますが、短命な場合、例えば70歳まで繰り下げたが実際には68歳で亡くなったりすると1円も貰えずに亡くなるという事になります。その場合でも増額なしの金額が遺族に一括支給されます(遺族の一時所得になります)最終的に何歳まで生き続ければ繰り下げ受給が得になるのか?については、何と厚生労働省が目安を示しています。65歳で支給するよりも受給総額が多くなるタイミングとして70歳開始なら81歳まで生きれば多くなり、75歳開始なら86歳まで生きれば多くなります。長生き家系の人は考えてみてはどうでしょうか?

それ以外の注意点としては、厚生年金の家族手当と呼ばれる加給年金というものがあります。これは厚生年金に20年以上加入している人が65歳になった時に高校生までの子供がいたり65歳未満の配偶者(扶養されている配偶者のみ)がいると、1人当たり223,800円が支給されます。つまり受給年齢を遅らせて子供が高校を卒業してしまったりしていたら上乗せ支給も受け取れなくなります。ですから働いていない自分より若い妻がいたり、子供が遅い年齢で生まれた人などは計算が複雑になります。相談する士業は社会保険労務士ですが、年金事務所なども相談に乗ってくれます。是非ご活用下さい。