10月からの消費税負担(病院)

病院の主たる収入は社会保険診療報酬なので消費税はかかりません。それに比して経費は人件費以外は消費税がかかるものばかりなので、経費の負担は大きくなります。政府はそれを考慮して社会保険診療報酬を消費税分だけ増やしたと言っていましたが、本当にそうなったのか当事務所の顧問先で確認しました。

7月分の収入をベースに10月以降になったらどのくらい社会保険診療報酬が増えるかという計算をしてもらいました。その結果約18万円ほど増えることが判明しました。では、消費税の支払の方の負担はどのくらい増えるのかという計算を私の方でしました。その法人は1カ月当たり約3500万円の課税仕入れをしているので、1カ月当たり64万円位の消費税負担が多くなるというのが分かりました。

1カ月当たり約46万円支払いが多くなることになります。これは直接キャッシュフローに結び付き、年間にすると550万円もキャッシュフローが減る事になります。診療科によっても違いそうですが、早めに把握してキャッシュフロー対策をする必要がありますね。

医療にかかる消費税

医療法人の自費収入は10月1日以降消費税を8%→10%に変更すれば事は足ります(ただし老人ホーム等の場合は注意:詳しくは2019年6月18日のブログ参照)ただし、仕入については注意しなければなりません。窓口で売っているマスクや歯ブラシ等の物品は仕入れについても10%です。薬品費の内、医薬品、医薬部外品、再生医療等製品は10%ですが、経口補水液や服薬ゼリーなどは8%となります。

栄養ドリンクについては医薬品・医薬部外品でないものについては8%です。医薬品・医薬部外品に該当しないのど飴、サプリメント、健康食品、特定保健用食品、栄養機能食品、デンタルガムなどの口腔衛生用食品も8%です。

10月1日以降は軽減税率対象のある場合には、レシート(領収書)などを見て税率ごとに分けて会計入力する必要もあります。仕訳でいうと、
借方 薬品費(8%) 10,800円  貸方 現金 21,800円
借方 薬品費(10%)11,000円
このような仕訳になります。このように経理は混合仕訳を入力しなければならなくなります。手間ばかりかかりますね。

特定医療法人と認定医療法人の温度差

今、認定医療法人の申請をしているのですが、どうも気になって仕方ないのは、厚生労働省の甘さです。何だか甘々なんだよなぁという感じです。特定医療法人も認定医療法人も「特別な利益供与」という判断があるのですが、特定医療法人はそりゃあそりゃあ厳しかったのに、認定医療法人は甘々でこれで本当に大丈夫?という感じなのです。

特定医療法人の管轄は財務省ですから税務や特別な利益供与という部分では詳しく、私は特定医療法人の申請もしていたものですから、どうも財務省に鍛えられてしまっていて、判断が財務省ベースですが、厚生労働省は税務に詳しくないからか、認定医療法人を増やしたいからか、どうも判定が甘々で拍子抜けしてしまいます。

特定医療法人は通常の医療法人より法人税率が低いですから、それを認めるというのは、国税が足りなくなるわけですから、余程公共的な医療法人でないと認可しません。でも、厚生労働省の目的は持分なし医療法人を増やす事ですし、税務にも疎いですからその辺が甘くなるのでしょうか?本来、特定も認定も特別な利益供与という判断は同じはずです。でもその温度差を感じてしまう今日この頃です。

老人ホーム等の食事代は10月以降も8%?

10月に消費税が10%になりますが、軽減税率(8%)の対象として有料老人ホーム等での食事の提供が挙げられています。軽減税率の対象となる施設は、「有料老人ホーム」と「サービス付き高齢者向け住宅」です。対象者はその施設に入居している①60歳以上の者②60歳未満で要介護認定又は要支援認定をうけている者③上記①と②の配偶者(実質婚含む)が軽減税率の対象者となります。

金額基準もあって1食当たり税抜きで640円以下、1日当たり税抜きで1,920円以下という限度額が設定されています。合計して1,920円を引けば良いのではなく、食事単位で課税か非課税かに区分されます。例えば、朝食550円、昼食550円、おやつ300円、夕食640円の施設があったとします。1食当たり640円以下の基準にはなっていますね。でも合計すると2,040円になります。この場合1,920円が8%で120円が10%とはなりません。このような場合は朝食550円、昼食550円、夕食640円の合計1740円のみを8%で設定しおやつの300円は始めから軽減税率の対象とならない旨告知して、おやつ代は330円(税込)にする必要があります。

ちょっと複雑過ぎはしませんか?私は法対策部の部員として税務署にこの実務の煩雑さをどうするか?という問いかけをしましたが、回答は面倒でもやるしかないということでした。現場は相当混乱しそうです。有料老人ホーム等については、もうそろそろ消費税について検討する必要があります。有料老人ホーム等であっても現場で食事を作らない場合は軽減税率の対象外になるということも知っておかなければなりません。詳しくは下記を参考にして下さい。特にP24の問60と問63は有料老人ホームについて書かれています。P.25の問62は病院食についてです。
国税庁軽減税率Q&A

外国人に対する診療

只今日本では観光立国を目指し、インバウンドによる対応が叫ばれています。外国人旅行者も年々増加し国内で体調を崩したり病院に運ばれることも多くなってきました。そこで厚生労働省は「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」を実施し、その結果を発表しました。
その結果が以下の通り
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000173230_00001.html

ポイントとしては、外国人旅行者は保険が使えませんから自由診療です。その価格設定をどうするかという問題があります。多くの医療機関が1点当たり10円と回答しました。これは通常の診療請求では1点10円なのでそうしているのかと思われます。しかし、外国人患者受け入れの多い病院では、1点当たり10円と回答をしたのは61%でした。そして27%が1点当たり20円以上を請求しています。

外国人旅行者の受入は言語の対応や文化風習への配慮など手間と時間を要します。医療通訳費用は自由診療で請求可能です。(社会保険診療においても請求可能なのです)でも、それを知らず請求していないという医療機関が多いのが現実です。また、外国人旅行者の診療に伴う旅行者保険に関する事務を行った場合にも患者へ請求することができます。

外国人患者を受け入れた病院のうち18.9%が外国人患者による未収を経験していています。そのことからも未収にならないような取り組みも必要です。厚生労働省では「社会医療法人等における訪日外国人診療に際しての経費の請求について(通知)」を出しています。ご参考までに
訪日外国人診療に際しての経費の請求について

個人版事業承継税制

株式会社には株式会社の事業承継税制があります。医療法人にも医療法人の事業承継税制(認定医療法人制度)があります。でも、個人開業クリニックは医療法人ではないので事業承継税制がありませんでした。ところが今回の税制改正で個人版事業承継税制ができました。

今まで個人クリニックの院長が亡くなると、クリニックの敷地や建物、医療機器や車両など財産全てのものが相続税の課税対象資産として課税されていました。院長が自宅以外は全てクリニックに財産を費やしてきたらどうでしょう?クリニックの敷地は自宅用地より広い場合も多いので、多くの相続税が発生し、場合によってはその土地を処分しないと相続税が支払えないということにもなるかもしれません。それらの資産について事業承継税制ができたのです。

つまりクリニックの用に供していた資産については相続税(贈与税も)を100%納税猶予するというものです。納税猶予とは、要件を満たさなくならない限り税金はかからないということです。ただし、この制度は2019年1月1日~2028年12月31日までの制度で、その間に死亡すれば相続の納税猶予を使えますし、亡くならないとしても贈与税の納税猶予が使えます。ただし、これは事業承継するのが前提なのでその事業を承継する相続人は2019年度~2023年度の5年間に都道府県に「承継計画」に後継者である旨の記載をし、かつ、経営承継円滑法に基づく認定をあらかじめ受ける必要があります。

注意点としては、認定をあらかじめ受ける事の他に、相続税の小規模宅地の特例(80%評価減)が使えなくなることと、継いた後に事業を止めてしまったり、事業承継税制の対象となった資産(特定事業用資産といいます)を売ってしまった場合には、納税猶予が無くなり、その税金を支払うことになります。注意点は多いものの活用できる場合には活用した方が良い制度ではないでしょうか。

GW10連休の扱い

今年のゴールデンウィークは10連休ですね。ということで、医療法人の顧問先から医療機関は10連休もできない。もし職員を出勤させた場合、休日出勤手当を払わないといけないのか?という質問を受けます。昨年までのやり方であればGW前半とGW後半という形で、4月30日~5月2日までは出勤扱いであった法人も多いと思います。ちなみに当事務所もそうでした。では今年は?

4月30日から5月2日までは同じ休日でも扱いが違います。同じ祝日でも5月1日(即位の日)のみが国民の祝日扱いになります。4月30日と5月2日は休日と休日に挟まれたので休日になるという祝日法第3条第3項に規定する休日となります。ですから、国民の祝日となる5月1日に出勤したときは所定休日出勤になりますので割増し無しの賃金支払いが必要で、4月30日と5月2日については、通常の出勤日として取り扱えるかと考えますが、現実は、就業規則がどうなっているのかによります。厚生労働省は下記のように考えているようです。
10連休
就業規則と照らし合わせて対応する必要がありそうです。なお、内閣府の国民の祝日に対して下記のような見解を取っております。そこにも載っていますが、今年の10月22日は即位礼生殿の儀が行われるため国民の祝日になるようですね。それから来年以降(2020年から)体育の日はスポーツの日になるみたいです。下記のURを参考にして下さい。
https://www8.cao.go.jp/chosei/shukujitsu/gaiyou.html

病院やクリニックを建設するなら3月までに契約を

今年の10月から消費税が10%になるのは御承知かと思います。ただ、請負工事の場合、指定日(今年の4月1日)より前に契約して10月1日以降に完成したものについては8%が適用されることになります。

例えば、3月20日にクリニック建設の請負工事の契約を1億円で行いました。完成は10月20日だったとします。この場合でも契約が指定日(4月1日)より前なので8%になります。ところが同じ工事でも4月に入ってから契約しますと完成が同じ10月20日だとしても10%になります。建物の場合、金額が大きいので3月までに契約していれば完成が10月以降でも800万円の消費税ですが、4月以降の契約で完成が10月以降ですと1,000万円の消費税でその差は200万円にもなります。

つまり4月以降の契約ですと完成が9月まででないと10%になってしまいます。以下その他の事例を示します。
例1:3月31日までの契約で完成が9月末まで→8%
例2:3月31日までの契約で完成が10月以降→8%
例3:4月以降の契約で完成が9月末まで→8%
例4:4月以降の契約で完成が10月以降→10%
例5:契約が3月までであったが追加工事をしてその契約は4月以降で完成は10月以降→本契約部分は8%、追加工事は10%
請負工事の場合、上記のように契約時と完成時の時期によって様々なパターンになります。ただでさえ医療法人は消費税損税問題があるので出来るだけ現金支出を減らすためクリニックの建設を控えている場合は3月までに契約することをお勧めします。

消費税率改定に伴う診療報酬改定

医療法人の消費税損税問題はこのブログでも何回か話題にしましたが、毎年の税制改正でも厚生労働省から改正要望を出しているもののなかなか改正されないというのが実情です。現に今年10月の消費税率10%改正時にも医療法人の消費税損税問題は無視され、診療報酬改定で何とかしてくれという回答でした。

厚生労働省の中医会の消費税分科会で1月9日に行われた会合で消費税改定に伴う診療報酬改定の方針が承認されました。内容は初診・再診料は5.5%の増額改定です。消費税が5%から8%に改定されたときに充分な診療報酬改定が行われなかったため、今回の診療報酬改定は前回(5%→8%)と今回(8%→10%)を考慮して上乗せ率が増額されます。

ですからこの5.5%の上乗せ率は現行の点数への上乗せではなく、2014年改正前の点数への上乗せ率となります。入院基本料・特定入院料の上乗せ率は以下の通りとなる方向です。
分類Ⅰ 急性期一般入院料&特定入院料 4.8%
分類Ⅱ 地域一般入院料&特定入院料 4.0%
分類Ⅲ 精神病棟入院基本料(10対1・13対1)&特定入院料 2.6%
分類Ⅳ 精神病棟入院基本料(15対1以下)&特定入院料 2.2%
詳しくは下記資料をご覧ください。
消費税改正診療報酬

医師の働き方改革

只今、働き方改革が至るところで叫ばれていますが、医師についても例外ではなく、厚生労働省でも「医師の働き方改革に関する検討会」というのが行われています。医師に対するアンケート調査でも、A:医師には、特別の使命があるのだから厳しい勤務環境にあるのはやむを得ないと考えるのと、B:医師不足という現状においても、勤務環境は工夫次第で改善しうるし、改善すべきと考えるとするのと、で意見を求めた結果60歳以上ではAとBはほぼ半々であったのに対し、若くなればなるほどBの意見が多くなり、20歳代では約70%がBの考えに近いと回答しています。

検討会は第1回目は平成29年8月2日に始まり平成30年12月5日に第13回目を終えます。1回1回の細かい資料は厚生労働省のホームページにアップされていますので、興味がある方は覗いてみて下さい。今後は、医師の行うべき業務とそうでない業務の明確化や、女性医師等の両立支援、ICTを活用した勤務環境改善などを行い、2022年には改革を完了する目標を掲げています。

ご存知来年の4月から10日以上の年次有給休暇が付与されている労働者に対し、5日は必ず有休を与えなければならないということになっていますが、医師はどうなのか?いつからか?などが載っている表を添付いたしますので参考にして下さい。
働き方改革(医療機関版)