この本では、事業の戦略は上質をとるか手軽を取るかしかないと言っています。両方を取ろうとすると、たちまち不毛地帯へ突入します。
上質とは、経験とオーラと個性で成り立っていて、この3つの足し算によって上質度は決まるのだそう。手軽とは、入手しやすさと安さで成り立っていて、上質か手軽かのどちらかを追求することによって、事業が発展するといいます。簡単にいうと上質とは愛されることで、手軽とは必要とされることだといいます。
どちらも兼ね備えるのがいいのでは?と思いがちですが、兼ね備えることはできず、それは幻影だと言い切っています。どちらも兼ね備えようとした事例も挙げていて、かつてCOACHやティファニーはラグジュアリーブランドであったが、COACHは2004年くらいから店舗やアウトレットを多店舗新規オープンし価格も落としてた。ティファニーも以前は世界のラグジュアリーブランドの中でもひときわ高級感があったが、1990年代の終わりに顧客層を拡大することに戦略を移しシルバーのブレスレットチャームを110ドルで売り出した。その結果どうなったか?一時的にCOACHとティファニーは売り上げを伸ばし大成功したように見えた。しかし、その後今まで買ってくれていた上級顧客は誰でも買えるようになったCOACHとティファニーからは購入しなくなったという。これらの事例を挙げて上質と手軽は共存しないと言っている。どっちつかずのその戦略は幻影であり事業を衰退させる戦略であるという。
ですから、上質か手軽かを決めたらそちらを限りなく極めることに尽力することが重要でどちらかを捨てることが大切だと言っています。第13章(最後の章)は「あなた自身の強み」というテーマですが、この考えは事業だけではなく個人レベルにも当てはまり、何でもある程度できる人より、他は何もできないがこれ1つは誰にも負けないという強みを持つ方が絶対的に生きる上で有利だと言っています。そこでも基本的に上質か手軽かを選択しなくてはいけないようです。