29歳の誕生日、あと1年で死のうと決めた。


人間死ぬ気になったらなんでもできる。というけれど、私はいいのか悪いのか、悲しんだり落ち込んだりすることはあるけれど、死のうと思ったことは過去に1度もない。この作品がノンフェクションということと、自分の意思であと1年しか生きないと決めた人の生き方や考え方を知りたくて本屋で手にした本です。

彼女は明治大学を卒業し正社員で就職しました。正社員は1年で辞め、その後契約社員、派遣社員となりました。彼女は25歳で学生時代から付き合っていた東大卒の彼と結婚する人生プランを描いていた。その彼に25歳の時、振られます。それからは、父親が脳梗塞で倒れたり、ストレスが食欲となって53キロだった体重が20キロも増えたり、手取り17万円でボーナスなしの生活で1Kのアパートの電気代ですら払えない月がある。親しい友人もいない。趣味もない。そして、29歳の誕生日に1Kのアパートで苺のショートケーキを前に1人で「ハッピ―バースデートゥミー」を歌います。昨年も一昨年もその前も1人で誕生日を過ごした彼女は、29歳の誕生日に「何の取り得がなくても、いままでは若さで何とかやってこられた。30代になれば就職はもっと厳しくなる。今だって何百社も受け続け、断われ続けているのに、資格も何もない私など、もうどこも雇ってくれないのではないか」「ただでさえ、70キロ以上もある醜い容姿の自分など、誰が相手にするだろう。30代になってしまったら、存在すら無視されてしまうのではないか。」と人生は下がる一方だと考え、あと1年で、そう30歳の誕生日の日に死のうと決めるのです。

1年で死のうと決めた彼女は29歳最後の日にラスベガスのカジノで大金を使い死のうと決意するのですが、お金が全くありません。そこで、昼間は派遣の仕事で働き、夜は銀座のクラブで働き、週末はヌードモデルで働いて、1年で150万円を貯めて、ラスベガスでカジノをするというお話です。

銀座のクラブで働くといっても、彼女はどこもお断りで働けません。やっとのことで、新しい人が入るまでという条件で働くことができますが、73キロある彼女は他の人より20%安い賃金で働かせてもらえ20キロ痩せたら元の賃金にしてくれもらえるという条件で働きます。

夜銀座で働くため、派遣会社の仕事が激務なときも何とか定時に帰れるように一心不乱で働き、銀座のクラブでの名前はアマリちゃん(余りものだから)と名付け、酒も1滴も飲めない。特に気のきいた話もできない彼女は聞き上手に徹していきます。そして、週末は絵画のヌードモデル。ヌードモデルはスタイルの良さではない。そういえばヨーロッパの方の裸婦の肖像画はどちらかというとポッチャリ系ばかりだということで、ヌードモデルとしても引っ張りだことなります。

それらの経験を経て多くのことを学びます。1年後に彼女がどうなったか。それは本を読んで下さい。どん底から這い上がる人ほど強いものはない。人生死ぬ気になったら何でもできる。元気を与えてくれる本でした。