自己株式の取得があった場合の株式の価額

類似業種比準価額の場合
その会社が自己株式を取得した場合は、その会社の法人税の計算上、資本金等の額から取得した自己株式に対応する資本金等の額を控除します。具体的なやり方としては、取得資本金額控除後の資本金等の額より「1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の発行済株式数」を計算し、かつ発行済み株式数の計算上も自己株式数を控除します。つまり資本金額からも取得資本金額(自己株式のこと)を控除しますし、発行済み株式数からも自己株式数を控除するので自己株式取得前後において株価に変動は生じません。

純資産価額の場合
純資産額の計算は、原則として課税時期における仮決算における資産と負債を基に行います。課税時期における資産および負債の金額が明確でない場合において直前期末から課税時期までの間に資産および負債について著しく増減がないため評価額の計算に影響が少ないと認められるときは、直前期の資産および負債の相続税評価額・帳簿価額により計算しても差し支えありません。例えば、取得前相続税評価額が500,000千円帳簿価額が100,000千円の会社で、自己株式を10,000千円(5千円で2000株)取得したとき、現金が10,000千円減少したので資産は相続税評価額も帳簿価額も10,000千円減少して、相続税評価額が490,000千円、帳簿価額が90,000千円となります。1株あたりの純資産価額の計算においては、取得前発行済株式数が20,000株だったとすると取得後は18,000株になります。負債の相続税評価額・帳簿価額が70,000千円だとすると、取得前のの純資産価額は、評価差額に対する法人税額等相当額37%を考慮すると282,000千円になり取得後は272,000千円になります。これをそれぞれ取得前発行済株式数20,000株と取得後株式数18,000株で割ると1株当たり純資産価額は取得前は14,100千円、取得後は15,111円となり、純資産価額の計算では取得前より取得後の方が高くなります。

このように自己株式の取得があった場合には類似業種比準価額では株式の価額に変化がみられませんが、純資産価額の評価では変化するので注意が必要です。