ご存じ直木賞を受賞した作品です。
私は年に何十冊か本を読んで、すぐにその本の中に入っていけるのですが、この本はなかなか入り込むことができませんでした。なんと言ったらいいのか分かりませんが、日常に溢れている暴力的な描写に目を背けたかったのかもしれません。何となく怖かったのかも・・・なかなか馴染めないまま読み進めた本です。

主人公の少年の祖父が何者かに殺されました。祖父は内紛や戦争で多くの人を殺した人物です。少年は祖父が大好きでした。少年は祖父が殺された事が心の片隅に残されたまま大人になります。少年は暴力的な少年期を経て、それなりに甘く切ない恋愛をして失恋もして、大人になり結婚をして子供ももうけます。それでも祖父は誰に殺されたのか?という疑問が常に付いて回ります。

ある写真をきっかけに犯人は分かるのですが、それは少年のよく知る人物でした。それには脈々と受け継がれる血というものを感じずにはいられませんでした。ネタバレするので言いませんが、台湾を舞台にしていますので、台湾から見た日本との関わり合いのような側面も垣間見れます。

全然関係ないですが先日テレビで、少年時代に両親を目の前で殺されその少年は捕虜として囚われて少年兵として地雷を敵地に埋め込む作業をさせられます。その少年が大人になり、自由の身になったとき、地雷除去の作業をボランティアでやっていました。自分が埋め込んだ地雷で何人もの命が失われた。 だから自分で地雷を除去しなければいけない。と言っていました。そして彼は言いました。「目の前で両親を殺されてその殺した犯人の顔を今でもはっきり覚えている。犯人を憎いと思う気持ちはある。でも、犯人を自分が殺したら、犯人の子供が僕を殺しにくるだろう。そして殺害は繰り返される。それなら、自分がそれを止めて地雷の除去をすることに決めた。」と言っていました。この言葉を聞いた時なぜか「流」を思い出しました。