戦略の本質

この本面白いです。ビジネススクールでは学べない絶対負けない戦略論と謳っているだけあって、ビジネススクールでは聞いたことのない事が書いてありました。というよりビジネススクールで聞いたことに一歩踏み込んでいると言った方が正確な気がします。マイケルポーター氏の「競争の戦略」。野中郁次郎氏の「失敗の本質」にも触れ、はいはいその辺まではビジネススクールで学びました。と思っていたところで、IDAサイクルというのが出てきます。

これは一般的に有名なPDCAサイクルではなく、自衛隊で実際に重要視しているI(information情報)D(Decision決心)A(Action実行)が重要だと言います。つまり情報は敵、地域に関する情報や自分の部隊の状況や処理されていない情報資料も含んだ幅広いものを示し、その中で指導官として的確な指示(決心)を時間的制限があるなかで実行しなければならない。というものです。確かに未曽有の災害などはいかに情報を得て的確に判断するかが大事ですね。しかも現在は昔と違って時の流れが速い。1年前の最新はあっという間に陳腐化します。

それと日本人特有の「集合的無意識」についても触れていました。日本人は最もハイコンテクスト文化な国民だそうです。これはコンテクスト(文脈)の共有性が高い文化のことで意味を伝えるための努力をせずとも相手の意図を察し合い、なんとなく意思疎通が図られてしまう環境を差します。とりわけ日本は先進国のなかでももっともハイコンテクストの傾向が強いそうです。いわゆる言葉なくとも場を読む能力ですね。対する欧米に多いローコンテクスト文化ではコンテクストに頼ることなく言語によってコミュニケーションを図ろうとします。ですから海外では遠慮や優しさが相手の好意を引き寄せるという日本人的な美徳がまったく通用しないことになります。

日本人と米国の奥さん数人に「熊が突進してきたとき、あなたは子供をどのようにして守りますか」と聞いた時、その返答は日米で正反対だったといいます。アメリカ人の奥さんは全員、子供をはねのけて相手に直面し、両手を広げて仁王立ちになる。それに対して日本人の奥さんは全員、子供の身体を自分のほうに向けて胸に抱きしめ、熊には尻を向けうずくまる防御姿勢を取ると答えました。防御姿勢では、襲ってくる相手の姿が目に入らないため攻撃者の攻撃に対してどのように対抗し、こちらから相手を威嚇して撃退するかという方法論の組み立てが成立しません。己の身を犠牲にしてどう子供を守るか、あるいは運よく見逃してくれるのを待つという手段しか取れないのです。それが集団的無意識です。なかなか深いことが書いてある本でした。