クスノキの番人

東野東吾氏の作品ですが、殺人事件などはありません。人生やや投げやりになっている青年(玲斗)が警察に捕まったところ、亡くなった母の腹違いの姉(千舟)がクスノキの番人をやるという条件で助けてくれます。特にやる事がなかった玲斗はその条件を受けます。クスノキの番人というのが何なのか分からないまま・・・

伯母の千舟はクスノキの番人をやっていましたが、高齢な事と自分に子供がいないので後継ぎがいません。唯一血が繋がっている玲斗を後継者としたかったのです。神社の裏に大きなクスノキがあってその幹に大きな穴が空いています。そこで満月と新月の夜に予約制で祈念が行われるのです。その番人です。祈念が何か分からず千舟に聞いてもそのうち分かるとしか言われながらも祈念に来る人と接していきます。

それは血のつながったもの通しでしか経験できない不思議なクスノキのパワーです。念を預ける行為を祈念、受け取る行為を受念といいます。これは良くも悪くも全ての念が伝わります。文章では表現しきれない微妙な感情まで伝わります。音でさえ伝わります。この本を読み終えたとき、こんな木が日本のどこかにあるような気がしてしまいました。ほっこりする東野ワールドがそこにありました。