ボクたちは、みんな大人になれなかった

何だかね懐かしい感じの小説です。43歳の主人公の男性がフェイスブックで昔の恋人を見つけ、間違って友人リクエストを送ってしまい、昔の事をあれこれ回想するお話です。その彼女との出会いが若い頃アルバイトをやっていたときに求人誌に文通コーナーがあってそこの自己紹介を見てピンときて会ったのが最初です。ラフォーレ原宿で最初のデートをしたとか、Hot-DogPRESSを見てデートの仕方を学んだりとか、うる星やつらだの1999年恐怖の大王だの、懐かしいフレースが色々出てきます。これらフレーズを聞くだけでそういえばそんな時代だったなとこの作者と同世代の人であれば感じると思います。現在に戻るときはLINEが出てきたり・・・

小説ってその時代で、出てくるアイテムが違うからそのアイテムが出てきた瞬間、特にいつと言わなくても大体の時代背景は分かるものなのですね。そんなアイテム使いが上手な小説でした。若い頃は貧乏で、どの道に行くか迷いながらそれでも今とは比べ物にならないくらいブラックな環境で齷齪働いて、それでも彼女と過ごした日々はそれを救うだけの価値がありました。中年になってから若い頃を思い出すとみんな多少内容は違くてもそんな感じ。そんな風な思い出になるもので、現在はある程度社会的にも自立していて、幸せじゃないわけでもないけど、何故か若い頃の貧乏でそれでいて充実していた日々を懐かしく思う感じの小説です。そして甘く切ない余韻をも残す小説でした。