風に立つライオン

大学病院に勤務する医師の航一郎が、ケニアの研究施設に派遣されていた時に、1ヶ月間、戦場である現地の赤十字病院の派遣要請を受け戦場で負傷した人たちの手当や手術に追われます。戦場では、子供が怯えて戦場から逃げ出さないように麻薬を打たれ戦士として戦わされています。派遣先から戻った後も、その1ヶ月のことが忘れられず、転籍を希望して自ら戦地の医師となります。

日本には、同じ医師である貴子という恋人がいます。ケニアに行く際に貴子も一緒に来てくれないか。と誘います。貴子も一緒についていこうとしますが、貴子の家はもともと小さな町で診療所を営んでいて医師であるお父さんが体調を崩した時だったので、貴子は日本に残ることを選択します。結局この二人は結ばれません。お互いに好きなのに、かけがえのない人と思っているのに環境とかタイミングとかそういうものが合わないのです。切ない気持ちになりました。

先月観た映画「アメリカン・スナイパー」のクリスもそうでしたが、航一郎も再び戦場に戻ります。自分が戦場で役に立つことを知っているのです。クリスと航一郎も結局亡くなってしまいます。

印象に残ったシーンを2つ紹介します。1つ目は予告編などにも流れているので有名ですが、心も身体も傷ついた少年兵が航一郎に言います。「僕は医者になれるか?」「なれるさ」「僕が医者になることなんでできるはずがない。だって僕は人を9人も殺したんだ」この時点で少年は泣いています。航一郎は言います。「だったら、一生かけて10人の命を救うんだ。その為に未来はあるんだよ。」

航一郎は夜中や早朝に外で空に向かって「頑張れー。頑張れー。頑張れー。」と叫んでいることがあります。何人かの人はこの声を聞いています。戦場の派遣先からケニアの研究所に戻る日に和歌子(現地で働く日本人看護師)が言います。「私には頑張れって言ってくれないんですか?」航一郎は言います。「頑張れは他人に言う言葉じゃない。自分に言っているんだ。」この言葉には衝撃を覚えました。本当に頑張っている人は周りの人に頑張れなんて言わないのです。ただ、自分が折れそうになった時、迷いが生じそうになった時、自分に頑張れって言うんですね。