虚ろな十字架


皆さんは死刑についてどう考えますか?
人を殺したら死刑にすべきですか?
それとも死刑は廃止すべきと考えますか?

「人を殺すことは法律で禁止されている。死刑という制度は国家が人を殺すということだ。だが、国家を運営しているのは人である。だから死刑制度は矛盾している。しかも、冤罪で人を死刑にしてしまう可能性もある。」というとそうかもしれない。と思います。しかし「遺族にとって、もし犯人が生きていれば、なぜ生きているのか?生きる権利が与えられているのか?という疑問が遺族たちの心を蝕む。それは遺族にとって死ぬほど苦しいのだ。しかも、その犯人が出所後に再び殺人を犯したら、あの時死刑にしておけば良かったということにならないだろうか。」というとそれも、そうかもしれない。と思いませんか?死刑制度を完全に廃止してしまったら、人を何人も殺しても自分は死なないからと猟奇的な殺人犯が現れるかもしれません。

ある夫婦の一人娘が留守中に入った強盗に殺されます。その強盗は過去に殺人を犯し仮出所中にお金がなくて強盗に入り、そこにたまたま一人で留守番をしていた子供に出くわし、顔を見られたという理由で殺しました。夫婦は極刑を望みます。もし、かなわなかったら抗議の為二人で焼身自殺をするつもりでした。裁判の結果は死刑です。夫婦は自殺せずにすみました。でも、お互いの顔を見るのが辛くなり離婚しました。

それから数年経ち妻が殺されました。老人が出頭してきました。。なぜ、老人は妻を殺したのか?なにかしっくりこない殺人です。妻と老人は面識すらありません。それから、謎が徐々に明らかになってきます。ここからはネタバレすると面白くないのでお話ししませんが・・・

同じ殺人を犯しても、捕まっても何も反省しない虚ろな十字架を背負った人もいれば、捕まらなかったとしてもその事で重い十字架を背負って生きている人も居ます。全体の2/3についてが、死刑という社会問題に焦点を当てていて、得意のミステリーは最後残りの1/3くらいで明らかになります。死刑という重いテーマに焦点を当てたことで単なるミステリーではなく、様々な問題を提起する本でした。