民王ーシベリアの陰謀ー

池井戸潤氏の作品は熱い中小企業の話や銀行の話が多いのですが、こちらは異色の政治物です。政治物ですが、硬すぎず、むしろこれまでの池井戸氏の作品に見られないようなコミカルな部分もある作品でした。地球温暖化の影響により未知たるウィルスがシベリアの冷凍マンモスが溶けて古代ウィルスが蘇る。感染者が出て日本としてどう対策を取るか総理大臣の描写が現在日本で起きているコロナウィルスと重なってリアルです。また、反対派やネットで溢れる陰謀説など現実でも行われるような描写が多々あり考えさせられます。政治家の中にも日本の国のために精一杯頑張っている人もいれば保身だけに動く人、支持率だけに動く人、様々でこれも現実に近いのかなと思ってしまいました。

未知たるウィルスの対応をどうするか?ネットに広がる噂や嘘の情報の拡散。政治家の利権問題。ある企業が儲かるためだけの工作。研究成果の伝達など、様々な現代問題にも類似する問題が山積みな作品ですが、一部の人の発言のコミカルさが事の重要さを緩和する作用がある作品です。人間の愚かさ。判断の難しさなど。個人的にも考えなくてはいけないことが沢山ある作品です。この作品は小説として今でしょ!と思えるほど今読んでみたい小説です。個人個人が様々な問題に対して混沌とした時代を生き、正しい判断をするために自分はどう生きるかという事を考えさせてくれる作品でもありました。