同志少女よ、敵を撃て

今年の本屋大賞を受賞した作品です。1943年前後のドイツ(ヒトラー時代)・ソ連(スターリン時代)戦争が舞台です。一家皆殺しにされたソ連の少女が狙撃兵になるまでと、なった後の事が書かれています。女性ばかりの狙撃兵のチームですが、狙撃兵になるまでの訓練期間の訓練内容がリアルです。また、実際に狙撃兵になってからの戦闘シーンは手に汗握る描写と息つく暇のない判断の繰り返しでとても臨場感があり本の中の世界に引き込まれて行きます。

戦争は女性の世界ではなく、どちらかというと男性主体で動きます。その中で女性として戦っている彼女らを見て同じ女性としてとても共感する部分も多く、また、普通の女の子だった彼女たちが逞しくなっていく(ならざるを得なかった)状況、選択の余地のない状況、それでも彼女たちは何故戦うのかという問いを自らに課して戦うのです。全ての女性のためにという女の子の決意からは並々ならぬ心情を感じ、敵味方関係なく女性を守るシーンでは心が揺さぶられました。

戦争が終わった30年後もエピローグで書かれるのですが、100人以上の敵を狙撃した彼女らは英雄でもあり魔女でもありという扱いです。田舎の町で静かに暮らしますが、戦争が終わり、静かな世の中になっても彼女たちからは戦争の記憶は無くなることなく、最後の最後で、戦争って何なんだろうという虚しさで目頭が熱くなりました。いやぁ、この本は戦争を知らない私たち、そして特に女性にはお勧めしたい本です。