総則6項

相続税の申告は基本的に相続税評価額をもって金額を算定します。でも財産評価基本通達の総則の第6項(いわゆる総則6項)というものもあって、これは取扱通達(法律ではありません)ですが、「相続税評価額で評価することが著しく不適当である場合には、国税庁長官の指示を受けて評価する」というものです。総則6項は伝家の宝刀の規定なのです。

タワーマンション節税対策で有名になりました判例があります。2008年当時90歳だった被相続人が信託銀行に相談して相続対策として2棟のマンションを14億円で購入して信託銀行から10億円借りました。このマンションの相続税評価額は2棟で3億円、つまり、相続税の課税価格は3億円なのに債務控除が14億円できるという節税対策を信託銀行がやったのです。それをこの評価は適当ではないとして3億円の追徴課税を行なったというのが流れです。

この判例は信託銀行が作成した稟議書に相続税対策のためと書かれていたり、節税対策だけのためにやっているというのが明らかだったため負けましたが、全てのタワーマンションでこんなことが行われるわけではありません。通達によって評価するのが著しく不適当かどうかというのは書くのは簡単ですが、判断はとても難しいです。課税の公平性を著しく害することが明らかなどの特別な事情が必要だとされていて、今回の争点となりました。つまり税逃れの意図が強く出る行き過ぎた節税対策が危険だということになります。

私がこの申告をする税理士だとしたらどうしたかというと、やはり相続税基本通達の3億円で評価していたと思います。行き過ぎた節税だと思っても自ら14億円では評価しないです。税理士は皆そうだと思います。ですから総則6項は税理士泣かせの規定でもあります。伝家の宝刀が行き過ぎないように私たち税理士も行き過ぎ総則6項には、反論しなければなりませんし、節税だけの金融機関のアドバイスにも厳しい目を向けなければなりません。