よくがんばりました

幼少期にお酒ばかり飲んであまり働かない父から逃げるように、母と二人で暮らして育った50代の中学教師の男性の元に警察から父が亡くなったという知らせが届きます。もう関係ないからと突っぱねますが他に親族もいないので面倒ながら故郷の愛知県に戻ります。時期的にだんじり祭り(西条祭り)の最中で、否応なしに子供の頃のだんじり祭りを思い出します。父との忘れていた記憶まで思いだします。父に愛された記憶がないという幼少期でしたが、自分が中年になって愛されなかったのではなく父が不器用だったのだと知ります。

父は、昔住んでいた時のままボロボロの家に住み、人が住んでいたとは思えないくらい物が少なく整頓された家の中、あの頃と同じ貸本屋を今も続けていたという現実。父が必要とされる人にある本を受け継いていたこと。自分が知らなかった父の姿を知る事になります。昔の嫌な思い出ばかりの幼少期ですが、だんじり祭りの時だけワクワクして気持ちも高まった事も思いだします。豪快なだんじり祭りの描写にはお祭りが持つパワーのようなものを本を通じて伝わってきました。父が唯一残しただんじりの法被(はっぴ)。そして思い出の本。

主人公は人に迷惑をかけてはダメだと思って生きてきましたが、迷惑をかけたくないと思っていても、家族はそんなことはできなくお互い様で迷惑をかけながら共に生きていくのが家族です。家族とは迷惑をかけるものなのだという言葉にとても深いものを感じました。人にはそれぞれの人生があり、それぞれが頑張って生きています。よくがんばりました。と言って貰えるような生き方がしたいと思いました。