人類と気候の10万年史

とても興味深いテーマの本でした。地質学の研究者である著者が自ら行った地質研究から過去の気候の変化を見つけて未来を予測するという壮大なテーマの本です。人間の寿命は約80年長くても100年です。それを何万年前の気候の状態を地道な研究によって明らかにしていきます。これは間違いなく読んでおいた方が良い本です。

過去の気候は何万年前ベースで見ると、寒冷期と温暖期を繰り返していて、寒冷期に多くの生物が命を失っています。寒冷期の直前、つまり温暖期の最後には激しい気候変動が起こっているという事実。それらを導く研究は福井県の水月湖という湖の土(年縞)を掘削し、毎年0.7㎜づつ溜まる土を分析して、その中の花粉の量などからその時代が杉の花粉が多かったら温暖期、ブナの花粉が多かったら寒冷期などと分析します。花粉は何にも溶けず何万年も存在する物質ということにもビックリしました。花粉だけではなく堆積物の内容によってその年は雨が多かったとかその内容は様々な要因が存在しその研究結果が多く書かれています。

地球の公転軌道は完全な円ではなく、楕円と円を10万年単位で繰り返すというミランコビッチ理論にも興味がでました。また、日本の水月湖は世界基準になるくらいの過去の良質な年縞が採取できます。例えば生き物が多く存在する海だとか、流れがある川などは綺麗な年縞が採取できません。湖だったら良いのかというとそうでもなく、良質な年縞を採取するには様々な条件があり、それをクリアしたのが水月湖です。そんな世界基準な湖が日本にあるというのも誇りですし、いつかその近くの博物館にも行ってみたいと思いました。