犬がいた季節

何だろうこの感覚。特に感動的なことが書かれているわけではないのに静かにジーンとくる感覚。至るところで目頭がなぜか熱くなる。そんな小説でした。子犬の時に捨てられ、高校の一角で飼い主が見つかるまでという条件で飼うことになった犬の一生と、それぞれの年の学生のお話が書かれています。結局飼い主は見つからず、高校で飼うことになります。高校が舞台なので毎年入学する学生がいて、卒業する学生もいます。1988年から12年間と2019年の再会が書かれています。

感受性は高いがうまく表現できない子供から大人になる途中経過の感情が見事な表現で描かれています。ちょっと懐かしいような、不器用だった自分を振り返っているような不思議な本でした。時代背景に触れるアイテムも沢山出てきて多くの人が懐かしさと温かい気持ちに触れることができる本だと思います。かなり完成度の高い本です。この本を読めば自分が忘れかけていた何かを思い出すきっかけになるかもしれません。最近ジーンという経験をしていない人は心の栄養がもらえます。お勧めです。