ロスジェネの逆襲



これは大ヒットドラマ「半沢直樹」の続編の小説です。何となく俗っぽい気がして購入していなかったのですが、職場でこの本を貸してくれた受験生がいたので読んでみました。今月は出張で何度も飛行機に乗ったので、本をたくさん読めました。

一言でいうと期待以上に面白かったです。池井戸潤氏の作品は、企業本が多いのですが、仕事の面白さとそれから湧き上がる情熱のバランスがうまく取れていて、下町ロケットを読んでから、ずーっとファンです。

今回のテーマは企業買収(敵対的買収)です。ビジネススクールでM&Aの勉強をして興味がある分野だっただけに楽しく読むことができました。半沢直樹の属する証券会社は当初、敵対的買収を仕掛けた企業(A)のアドバイザーでしたが親銀行に横取りされます。そして敵対的買収を仕掛けられた企業(B)のアドバイザーとなります。ホワイトナイトと思われていた企業が実は刺客だったり、敵対的買収を仕掛けられて企業(B)のアドバイザーに立候補していた他の証券会社が実は銀行とグルだったりして、大変なことになっています。

一番興味を持ったのは、Bはベンチャーで3人の友人で起業し大きくしますが、3人の経営方針が分裂して代表取締役である瀬名さんと他の友人2人の間に亀裂が入り、他の2人は市場外取引で自分たちの株をA社に売ってしまうのです。A社はこれでB社の約30%の株式を取得したことになり、50%超を目指し公開買付をします。

B社だったらどうするであろうか。勿論自分が大きくした会社を乗っ取られたくありません。買収防衛策を考えなくてはいけません。
1.新株を発行して株式総額を多くすることによって社Aが50%超を取得することを阻止する。そのためには新株を引き受けてくれる協力会社(ホワイトナイト)の存在が必要
2.B社の株価を引き上げて(引き上げる要因を作り出して)そもそもA社が高くて購入困難な状況にする
などがあります。ここで豆知識。新株の発行が会社支配の維持を目的にする場合は商法に違反する可能性があるということ。そして、上位10社による合計出資比率が全体の8割を超えると1年間の猶予後に上場廃止、さらに9割を超えると即時上場廃止になる。

そこで逆にホワイトナイトを逆買収する方向に動くのです。ここまで聞いたら読みたくなりますよね。

この本のタイトルになっているロスジェネですが、いわゆる就職氷河期に就職した人々です。就職氷河期だったロスジェネ世代は簡単に就職できたバブル世代を疎ましく思っています。そのバブル世代の代表ともいえる半沢直樹が今回一緒に仕事をしたロスジェネ世代の森山にこう語ります。

「嘆くのは簡単だ」
「世の中を儚み、文句をいったり腐してみたりする。でもそんなことは誰にもできる。いつの世にも世の中に文句ばっかり言ってる奴は大勢いるんだ。だけど、果たしてそれになんの意味がある。お前たちには社会に対する疑問や反感という、我々の世代にはないフィルターがあり根強い問題意識があるはずだ。世の中を変えていけるとすれば、お前たちの世代なんだよ。ロスジェネの逆襲がこれからはじまるとオレは期待している。だが、世の中に受け入れられるためには批判だけじゃだめだ。誰もが納得する答えが要る」

どうですか?「誰もが納得する答えが要る」深い言葉です。ロスジェネ世代にエールを送る本でもあるんです。