かばん屋の相続



池井戸潤氏の作品は「下町ロケット」を読んですっかりファンになってしまいました。そこでこの本も読んでみました。池井戸氏の作品中に出てくる借入金や経理内部の処理に関する描写は実務を経験しないと分からない細かい描写が多々あるので、調べてみたところやはり元銀行員でした。なぜしっくりくるのかが分かりました。

かばん屋の相続は、6点(十年目のクリスマス、セールス・トーク、手形の行方、芥のごとく、妻の元カレ、かばん屋の相続)の短編小説から構成されています。主人公は全員違う人ですが、全員男性で銀行員です。短編小説なので下町ロケットほどの深みはありませんが、銀行員の心の葛藤などが描かれていて一気に読むことができました。銀行の内部組織などのハード面と感情などのソフト面の描写のバランスが良く、硬すぎず甘すぎずさらっと読める感じです。

この本の題名にもなったかばん屋の相続ですが、お父様はかばん屋を営んでいて、長男はこの仕事を嫌って銀行員になり、二男が後を継ぎました。遺言書が出てきて、かばん屋の株は全部長男に相続するというものでした。なぜ??誰もがそう思います。深いトリックはありませんが、そういうことか・・・という結末があります。短編小説なので少しずつ読むこともできますね