マシュマロ・テスト

先月読んだ本の中からもう1つ実験を紹介します。スタンフォード大学の心理学者ウォルター・ミシェルは、4歳の子供たちにマシュマロをすぐに1個もらうか、15分待って2個もらうかを選ばせました。実験の説明をすると、子供の目の前にマシュマロ1個とベルを置いて部屋を出ていき、子供を一人にします。15分待てたら子供はマシュマロを2個もらえます。もし、待てなければベルを鳴らして食べてよいというルールです。

この実験では、待てなかった子供はマシュマロをじーっと見つめ、どんな味がするのかと想像していました。待てた子供は、マシュマロを見ないようにしていました。待てば2倍得するのに、つまり頭では理解しているのに目の前に報酬が置かれるとつい手を出してしまうというのは、人間の本能のようで、私たちの合理性には限界があるということです。これを限定合理性といいます。そして肝心なときに意志力が働かなくなるのです。これを限定意志力といいます。

このテストはこれだけではありません。この4歳児たちの10年後まで調査したのです。一番長く待てた子供たちは、10年後人気が高くて成績もよく、ストレスにもうまく対処しており、学力検査のスコアも高く、前頭前皮質の機能を測定する神経心理学のテストでも良い成績を収めたということです。

つまり、不愉快なことをいっとき我慢して、長期的な目標を達成することができるかどうかということ。この個人差によって、子供の時であれ、大人になってからであれ、人生が大きく左右されるということでした。