判例 養老保険契約の満期保険金にかかる税務

この判例は平成24年1月13日最高裁(平成21年(行ヒ)404号)(一部破棄自判)(一部破棄差戻し)Z888-1625

養老保険契約の契約者はB個人が役員をするA法人、保険料支払者はA法人とB個人で半々(1/2ずつ)で満期保険料はB個人が受け取った。B個人は確定申告でこの満期保険金について一時所得で申告した。一時所得の収入金額は満期保険金、そこから収入を得るために支出した金額を控除するのであるが、その金額をA法人とB個人が支払った保険料の合計額としたところ、収入を得るために支出した金額はB個人が負担した金額のみであると指摘を受けた。裁判の結果、納税者敗訴であったという判例です。

この判例をみれば当たり前じゃないかと思うと思います。私もそう思います。納税者の主張は、所得税法34条2項の条文では一時所得から控除できる金額はその収入を得るために支出した金額の合計額としている点。そして基本通達34-4では保険料又は掛金の総額には、その一時金又は満期返戻金等の支払を受ける者以外の者が負担した保険料又は掛金の額としている点を主張している。つまり、税法の欠陥部分をついた合法的なやり方であった。ただ、今回は税法の欠陥部分の合法的なやり方は負け、常識が勝訴しました。法が欠陥な場合は常識が勝つというのがよく分かった判例です。この判例がでて、所得税法基本通達34-4そのものも改正になりました。

(一時所得)第34条
 一時所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。
2 一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。

所得税法基本通達34-4(旧)
必要経費にできる「保険料又は掛金の総額には、その一時金又は満期返戻金等の支払を受ける者以外の者が負担した保険料又は掛金の額(かっこ内略)も含まれる」

所得税法基本通達34-4(新)
34-4 令第183条第2項第2号又は第184条第2項第2号に規定する保険料又は掛金の総額(令第183条第4項又は第184条第3項の規定の適用後のもの。)には、以下の保険料又は掛金の額が含まれる。(平11課所4-1、平24課個2-11、課審4-8改正)
(1) その一時金又は満期返戻金等の支払を受ける者が自ら支出した保険料又は掛金
(2) 当該支払を受ける者以外の者が支出した保険料又は掛金であって、当該支払を受ける者が自ら負担して支出したものと認められるもの
(注) 1 使用者が支出した保険料又は掛金で36―32により給与等として課税されなかったものの額は、上記(2)に含まれる。
 2 相続税法の規定により相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなされる一時金又は満期返戻金等に係る部分の金額は、上記(2)に含まれない。