ルフィの仲間力



漫画「ONE PIECE(ワンピース)」の読者はもはや少年少女の枠を超え今では老若男女を問わず広くファンを増やしているので知らない人を探すほうが難しいかもしれません。そのONE PIECEの主人公であるルフィの人間的魅力や組織を統括する力を分析的思考も加えながら関西大学の教授が書いた本です。ONE PIECEの本としての魅力も分析しながら組織力についても書いてあるので面白くあっという間に読めます。

ドラゴンボールとの比較も考察しながら何故ONE PIECEにここまでファンがついたのかなども述べています。まず、ドラゴンボールは家族という集合体があります。ONE PIECEは家族がバラバラです。父親のドラゴンは革命家で子供をほったらかしでどこに居るのかも分かりません。義兄のエースは血が繋がってこそいませんが小さい時から兄弟として暮らし実の兄弟以上の契りを交わしています。家族という集合体から仲間という集合体に変わったというのが新しく、以前の日本も父親を中心とした家(家族)という集合体中心の生活でしたが、今は個を中心として家族から飛び出して自分の夢をかなえることが生き方のメインストーリーになっています。

ドラゴンボールの主人公である孫悟空は人格的にも能力的にもほぼ完璧です。それに比してルフィはルックス的にも普通ですし、戦闘能力が高く、行動力がありポジティブという長所もありますが、無謀という欠点もあります。でもその無謀という欠点はナミの思慮深さやウソップの用心深さやロビンの頭脳明晰さが補っています。

組織の構造にもふれていて、①階級構造・・・これはONE PIECEでいうと海軍、世の中でいうと一昔前の日本企業が典型的で縦社会のことです。上司の命令は絶対というやつです。②疑似家族構造・・・これはONE PIECEでいうと白ひげ家族団、世の中でいうと中小企業にみられる家族経営が典型的です。父親(社長)を中心とした家族のような緩やかな上下関係はあります。③フラット構造・・・これはONE PIECEでいうと麦わらの一族、ルフィたちの集団です。船長はルフィですが、そこに上下関係という概念はありません。あくまでも長所を尊重しお互いの欠点をカバーしあう仲間なのです。

私は独立して1年半経ちます。今まで個を伸ばす努力ばかりしてきました。長所は勿論のこと短所も人並みにできるように頑張ってきました。でもこの本を読んで学んだことは、自分の弱さを見せることが大事だと気付いた点。人は個で頑張るには限界があるのです。ルフィの組織(仲間)はたった9人の小さい組織で個々が大きな長所と変えられない短所があります。その短所は仲間が補います。だから場面場面でリーダーが変わります。得意な人がリーダーをすればいいのです。ただ、チームは一つの信念が必要です。それさえ、ぶれなければいい。

器用で優しいだけでは、仲間はできないとも言っています。ルフィの魅力は自分の弱さを素直に認める強さです。ルフィは10巻第90話で「おれは助けてもらわねぇと生きていけねぇ自信がある」と言っています。この言葉を聞いた仲間はどう思うでしょう?私がいなければ・・・俺が助けなければ・・・ときっと思うはず。この言葉を聞いた仲間に沸き起こる力、弱さを見せた人には全力で応える。それがルフィの仲間力の源泉となっています。だから仲間の短所を決して否定しません。からかうことはあっても、人格を否定することはありません。仲間の欠点や短所も認めたうえでお互い助け合う関係が築きあげることができれば、仲間力は確実に向上しますね。