アキラとあきら

御存じ池井戸潤氏の小説を映画化したものです。池井戸氏の作品は企業ドラマものが多く私も好きな作品だらけです。この小説は珍しく読んでいなったのですが、映画だけ観ました。感想は一言でいえば相変わらず面白かったです。銀行と企業の駆け引きのような部分も感じましたが、こんなに親身になってくれる銀行員もいるのか?いるなら会いたいとさえ思いました。物語の解決方法も高額なコンサルタントファームがやりそうな手法で銀行がここまでしてくれるのならコンサル会社は必要ないなと思うような解決方法でした。

映画の最初の方で新人研修で優秀な2チームが銀行側(貸すか貸さないかを判断)と企業側(借りられる書類を作る)に分かれて、対決するのですが、企業側が粉飾決算を行い、銀行側が見事それを見破るという展開でした。この粉飾決算に使われた手法が棚卸資産の割増し(他社所有の金型を自己所有棚卸として計上)と現金の過大計上でした。この結果だけ聞くと会計を知らない人は何が何だか分からないと思いますので説明すると、棚卸資産は多いほど売上原価が少なくなります。売上原価の計算は(期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高)なので、本当は期首棚卸100億円+当期仕入高1,000億円-80億円だったとしたら、売上原価(費用)は1,020億円になります。でも期末の棚卸を多くして120億円と架空計上したとしたら、100億円+1,000億円-120億円で980億円になります。売上原価は費用項目ですから棚卸を架空計上するだけで利益が40億円増えることになります。利益が沢山出ているからお金貸してねと言うのです。

会計をちょっと知ってる人ならすぐ分かりますが、最後の物語の解決方法も会計を知っていれば、そうか!その手があったかーを唸るような手法でした。勿論会計を知らなくても、粉飾決算だったのかとかは分かるので充分楽しめます。でも会計を知っていればより深く楽しめるそんな映画でした。