夜明けのすべて

主人公の藤沢さん(女性)はPMSに悩まされながら小さな会社で働いています。山添君もパニック障害を抱えながら同じ会社で勤めています。二人とも大きな会社で働いていましたが、この病気が原因で退職して、今は社長や同僚が理解のある栗田金属で働いています。二人は20代ですが、その他の社員は全員60前後なのに二人にとって居心地の良い会社です。

PMSやパニック障害の名称はよく聞きますがその病気のことはあまり理解していませんでした。でもこの小説を読んでこれらの病気がどういった病気であるのかが少し分かりました。二人は異性としては興味がないもののお互い病気を抱えているということで共通していて、お節介ながらも相手を助けようとします。お互い異性としてみていないので緊張なく自分の負の部分を見られてもこの人ならまぁいいかという感じで生活をしています。

二人とも闇の中にいるような病気の状態ですが、お互いのお節介で少しずつ世界が広がっていきます。そのお節介が異性としてのものでなく、他人には分かりずらい病気を抱えた二人だからこそ成り立つ関係です。お互いどこか放っておけないのでついついお節介をしてしまいます。はじめはそれが煩わしいとさえ感じていたのですが、それがきっかけで自分の知らない自分を発見する機会を得ます。最後には仕事でも自分からやる気になって社長に提案まで出します。病気はすぐには良くなりませんが少しずつ、まるで夜が少しずつ明けていくようなそんな小説でした。読み終わった後心が温かくなる小説です。