小さいおうち

ベルリン国際映画祭で主演の黒木華さんが最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞した作品です。今月は仕事がバタバタしてこの映画1本しか観れなそうです。

映画が開始した瞬間、あれ、これどこかで観たことあるなと思いました。1人のおばあちゃんが亡くなってその親族がお葬式に参列するという「永遠の0」と同じ感じのオープニングです。そして登場人物が、ほぼ映画「東京家族」の出演者ということも観たことがあると錯覚する原因でした。

孫世代がおばあちゃん世代の若かりし頃を回想していくという作りも「永遠の0」と同じです。その回想の内容は違いますが・・・次第におばあちゃんが奉公していた時代にクローズアップされます。おばあちゃんが住み込みでお手伝いさんとして働いていた家は近所でも評判の可愛い赤い屋根の小さいおうちです。そこでの出来事をお手伝いさんである主人公タキの目を通じて描かれています。

終盤になるとおばあちゃんがたった一つ自分のやった(というかやらなかった)事柄について心に引っ掛かったまま亡くなっていったのだと想像するに至ります。「私のした事は正しかったんだろうか」と答えのない問いかけを引きずって生きてきたんだろうと想像できます。おばあちゃんの気持ちははっきりと描かれていません。だからこそ、映画を観ている私達の想像が膨らみます。もしかしたら、小説には描かれているのかもしれませんが、私は小説は読んでいないので、ますます想像力は増大し、あの時、手紙を渡していて2人を会わせてあげていたら少なくとも、大好きな奥様は幸せだったのではないか。とか、でも坊ちゃんや旦那様の事を考えるとこれで良かったんだとか・・・

観ているものの解釈や想像力によっていかようにも取れる不思議な力がある映画でした。

最近このような映画が多くなったような気がします。映画の中ではっきりと表現せずに、あえて観ているものの判断に任せるといった作りです。