TPPと医療2

アメリカには通商代表部(USTR)という組織があり「外国貿易障害報告書」というものを作成し、各国に改善を求めています。昨年までは医療に関し、「混合医療の全面解禁」と「株式会社による医療機関経営の参入」を訴えてきました。ところが今年になって、「新薬創出加算の恒久化」と「市場拡大再算定ルールの廃止」に変わったのです。

「新薬創出加算」とは、正式には「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」といいます。簡単に言うと、医薬品会社は薬の開発に多額の試験研究費を投入しています。ですからこの薬の特許が切れるまでの期間で後発医薬品(ジェネリック)が出ていないものについて一定の要件を満たすものは、新薬の価格を維持するというものです。これは医薬品会社の保護に当たり、医療法人にとっては薬価差益はほとんどありません。この加算制度は試験的に行われているもので、それを恒久化してくれというのがアメリカが言う要望です。

「市場拡大再算定ルール」とは、特定の医薬品が当初予定されていた市場規模の2倍以上、かつ150億円超になった時、最大25%薬価を引き下げるというものです。そのルールを廃止せよ。というのがアメリカの要望です。

いかがですか?これは二つとも医薬品会社の保護を求める要求でありますが、それとともに、医療法人の経営および健康保険制度の財源を脅かします。

日本の医療法人制度は頑固たる株式会社参入を拒否しています。その硬い壁を崩すのは医療法などの法律を変える必要があり困難です。それに比べ薬代の価格維持を求めれば、国内医薬品会社の保護を図るという観点からも入りやすいのです。

しかし、この制度は医療法人の経営悪化をジワジワと浸透させ、健康保険の財源も脅かします。兵糧攻め作戦のように感じるのは私だけでしょうか。

強引に参入するのではなく、医療法人の経営が悪化して医療を診れる施設がなくなってきたから、もしくは、健康保険制度の財源が底をつき崩壊するから、(仕方なく)参入する(という建前)に変わっただけではないでしょうか。

4月からの消費税の改正にあたり、薬価差益のほとんどない薬品に消費税が8%もかかって、それが医療収入に転嫁されなかったら、医療法人の経営は相当ダメージを受けます。諸外国の動向も今後は見ていく必要がありますね。