個人版事業承継税制

株式会社には株式会社の事業承継税制があります。医療法人にも医療法人の事業承継税制(認定医療法人制度)があります。でも、個人開業クリニックは医療法人ではないので事業承継税制がありませんでした。ところが今回の税制改正で個人版事業承継税制ができました。

今まで個人クリニックの院長が亡くなると、クリニックの敷地や建物、医療機器や車両など財産全てのものが相続税の課税対象資産として課税されていました。院長が自宅以外は全てクリニックに財産を費やしてきたらどうでしょう?クリニックの敷地は自宅用地より広い場合も多いので、多くの相続税が発生し、場合によってはその土地を処分しないと相続税が支払えないということにもなるかもしれません。それらの資産について事業承継税制ができたのです。

つまりクリニックの用に供していた資産については相続税(贈与税も)を100%納税猶予するというものです。納税猶予とは、要件を満たさなくならない限り税金はかからないということです。ただし、この制度は2019年1月1日~2028年12月31日までの制度で、その間に死亡すれば相続の納税猶予を使えますし、亡くならないとしても贈与税の納税猶予が使えます。ただし、これは事業承継するのが前提なのでその事業を承継する相続人は2019年度~2023年度の5年間に都道府県に「承継計画」に後継者である旨の記載をし、かつ、経営承継円滑法に基づく認定をあらかじめ受ける必要があります。

注意点としては、認定をあらかじめ受ける事の他に、相続税の小規模宅地の特例(80%評価減)が使えなくなることと、継いた後に事業を止めてしまったり、事業承継税制の対象となった資産(特定事業用資産といいます)を売ってしまった場合には、納税猶予が無くなり、その税金を支払うことになります。注意点は多いものの活用できる場合には活用した方が良い制度ではないでしょうか。