ザリガニの鳴くところ

本屋大賞受賞作品です。アメリカの作家が書いた作品の日本語訳の本を読みました。日本人が書いていない本というのは独自の世界観があり、これもそういった本でした。(ザリガニが暮らすような)湿地で暮らす少女の一生を書いています。父親から家族の皆が暴行を受け、母が蒸発し、兄弟も次々と家を出ます。最後に主人公のカイアだけが残りますが、父もいつの間にか家を出てしまいます。幼い子供が生きていくために、沼地で貝を取り、売って何とか生きていきます。少女の逞しさを感じずにはいられない本でした。少女も年頃になり、恋をしたり、恋愛トラブルが起こったりします。学校にも行かないので字も読めませんでしたが、兄の友人であったテイトに読み書きを習い、計算も習います。元々研究家だった素質もあり、湿地の植物や生き物の本を出版します。人との関係を避けてきた生き方をしてきた少女がどう生きたか?ページをめくる度成長を感じます。

町の男性の遺体があがり、事故なのか事件なのか警察も動きます。その過程でカイアも疑われます。腕の立つ人権派弁護士がカイアの弁護人になると言ってくれ、何とか無罪を勝ち取ります。弁護士の弁護の様子が細かく記述されていますが、弁護士がカイヤに偏見をもった陪審員に対して、湿地の娘に対しての偏見を捨てて審判してほしいという呼びかけはとても心を打たれます。時は過ぎテイトとカイヤは共に過ごしてカイヤは年を取り小舟の中で眠るように亡くなります。その後テイトが遺品を整理していてあることに気が付きます。それがとても衝撃的で最後の最後でビックリしてしまう。そんな本でした。湿地の情景の描写も夏にぴったりの本でした。