コンビニ人間

36歳独身女性、恋愛経験なし職業コンビニアルバイトの恵子。大学1年の時からコンビニでバイト、今は週5日9時から17時までアルバイトをしています。そんな彼女が周りの人から「結婚しないの?」や「なんでアルバイトなの?」と聞かれまくる年齢になり息苦しさを感じます。自分ではこれで満足で特に不満はないのに周りから見ると自分は普通ではなくちょっと外れた存在に見えるみたい・・・あまりにも周りの声がうるさいので自分は変わる必要があるのだろうか?と悩みます。

同じく35歳独身男性職歴なしの白羽さんが同じコンビニに入ってきて、コンビニという職業を下に見ている感じ。それでいて男は外に狩りに行って(働いて)子孫を残してもっと働くというのが縄文時代から何も変わっていない。女性は男性に寄生して何もしなくても結婚さえすれば何も言われないが男性は結婚して子供を作り外でバリバリ働かないとムラ(社会)から爪弾きにあうと社会に不満を言う男性。とりあえず、結婚して女性に稼いでもらいそのお金で起業しようと考えています。

お互い好きなわけではありませんが、恵子は周りの人からあれこれ言われるのを回避するために、白羽さんは女性に寄生するために同棲し始めます。恵子は18年間コンビニで働いているだけあってコンビニの声(どうしたら店の運営がうまくいくか)を熟知しています。何度か他の仕事にも就こうと思いましたが全て失敗しました。ところがコンビニは全てマニュアルがあってきちっとそこを押さえておけば良いので恵子はとても働きやすかったのです。

30代になると女性なら結婚しているか結婚していないならバリバリ正社員として働いているのが普通。男性なら正社員で働いているのが普通。それ以外の人はとても居心地が悪い社会を生きているというのです。コンビニ描写がリアルで色々なことが多様化している時代でも何故か普通ではない路線を生きると周りの人の目が厳しい世の中なんだということがまざまざと書かれています。普通ってなんなの?と考えずにはいられない本でした。

カラヴェル深紅色の少女

ご存知2018年の本屋大賞受賞作品です。翻訳小説部門で第1位を取りました。威圧的な権力者である父に育てられた姉妹の冒険ファンタジー小説です。父から逃げるように船乗りのジュリアンの手助けでカラヴァルに向かうスカーレットとテラ、そこでテラとはぐれてしまい、ジュリアンとスカーレットはカラヴェルを実行しながらテラを探します。カラヴェルとはレジェンドの島で行われる夢のイベントで、何が真実で何が偽りかわからない魔法に満ちたゲームで5夜に渡って繰り広げられるものです。優勝者には願い事を叶える権利が与えられます。

ハリーポッターシリーズに似たような謎と魔法に満ちた本でした。ワクワクするようなそれでいて怖いような不思議な感覚。表現のすべてにどうなっているんだ?と想像することができます。ディズニーランドにいるようなUFJにいるようなそれに怖さと魔法をプラスしたようなそんな本でした。

奥手なスカーレットは野蛮なジュリアンと一緒に過ごすうちにそこに好意も生まれてきたりして恋に冒険に満ちた本でした。頭の中で色彩豊かな世界観が広がる感じです。日本人が書く本とはなんか異質な感じがします。不思議な世界に満ち溢れる本でした。

かがみの孤城

ゴールデンウィークに読み終えました。2017年本屋大賞受賞作品です。私は本屋大賞には一目置いています。直木賞や芥川賞のように読んで落ち込んだり考え込んだりする本がないからです。様々な理由で同じ中学校に行けなくなった子供たち(いわゆる引籠りの子もいます)7人が自宅の鏡に引き込まれお城にやってきます。そこには自分の個室がありそれぞれが自由な空間。通常なら学校に行っている日本時間の朝9時から夕方5時までこの不思議な城に入れます。来年の3月までに願いの部屋に入る鍵を探して願いを1つ、1人だけ叶えることができるという特権があります。願いが叶った時点でこのお城は閉鎖されますが、鍵が見つからなくても来年の3月30日に閉鎖されます。

本を読み進めているとあれ?これいつの時代の話?とか時間の感覚とかあれ?と思うことも描かれています。でも当初の設定が設定なので気にせず読み進めていると最後の章でビックリするような展開になります。そうか。あの不思議な感覚はそういうことだったのか・・・そんなことならもっと注意深く読めば良かったと後悔します。そんな本です。終わり方も現実の世界での次の展開が想像できるような良い終わり方です。不登校になる理由は人それぞれ、それを理解している大人ってあまりいません。唯一ズバリ理解していたあの人が実は〇〇さんだった。知り合う前から知り合いだったという温かい気持ちで読み終えます。流石本屋大賞!という作品です。

行動経済学入門

この本は2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラ-教授の本です。経済学とは本来は最も合理的で利潤が最大値になる方法を選択するものですが、現実は違います。何故でしょう?それは心理学と密接に関係があってそれが行動として現れます。それがよく分かる本です。例えば1つの物を自分が持っていてそれを第三者に売る場合の希望売却値段と、同じものを第3者から買う場合の希望購入値段では、同じ人が査定しても2倍以上の価格差になるそうです。(売る希望の方が買う希望よりおおよそ2倍高くなる)それは一度手にしたものは愛着が生まれ手放すのに勇気が入り価格差が出るそうです。そういえばオークションサイトなどでなんでこれがこんな高いの?と思うものって結構ありますね。

そんな身近な話から始まって株価の変動方式、ロトシックスなどの当選倍率が上がる方法など様々なことが書かれています。途中難しい算式まで現れとても専門的な分野にまで及びます。さすがノーベル経済学賞を受賞した教授だという感じ、一度読んでみると経済学は心理学(行動)と密接につながりがあることが分かります。そういえば、明治大学MBAでマーケティングの教授も、関係性マーケティングの事をおっしゃっていました。やはり人間は感情の動物。関係性を築きたいかどうかで行動も違ってきます。経済学もマーケティングもそういう意味では心理学(行動)が大きく関わってくるのですね。

身近な人が亡くなった時の相続手続きと届出のすべて

今月は本を読む時間がないほど忙しかったからではないのですが、出版物の紹介です。相続手続きの本を出版しました。皆様はお父様やお母様はご存命でしょうか?相続税は国民の約8%くらいしか課税されませんが、相続はこれから経験する確率が非常に高いですね。やったことないことは誰でも苦手です。そういう意味では私の父も母もまだ元気なので親族としての経験はないのですが、税理士や相続診断士としての経験はあります。

死亡届は7日以内に市区町村に提出しなければいけませんし、相続放棄するなら3カ月以内、所得税の申告は4カ月以内に済ませる必要があるし、相続税が発生する人は10カ月以内に申告しなければいけません。公的年金や遺族年金の手続き。寡婦年金・死亡一時金の手続き。健康保険の資格喪失手続き。手続きをすれば必ず貰える葬祭費や埋葬料もあります。銀行やクレジットカードの解約もあるし・・・どこまでやったら良いのか?何をどのようにどこでやれば良いのか?など初めての体験ですと見当もつかないと思います。

そんな時に役立つ本です。手元に1冊あると便利です。是非ご活用下さい。アマゾンでも本日より販売開始、書店では3月19日から販売開始です。

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷は2017年本屋大賞と直木賞をダブル受賞した作品です。これを読まないわけにはいかないでしょ。ということで早速読んでみました。様々な背景を持つピアニスト達がピアノコンクールに臨む姿が描かれています。読み始めはなんとなく退屈な感じがしましたが、読んでいるうちにハマってしまい、夜中の2時まで読んでしまってしまった!早く寝なきゃという日もあった本です。ピアニスト達が奏でるメロディーがなんか頭の中でイメージできてワクワクするような感じ・・・この前、生のオーケストラを聞いた時のような感動が本なのに感じられました。

この本の不思議なところは、主人公がいないこと。というか数人がそれぞれ主人公なところです。通常の小説では誰か1人が主人公でその人の目線で物語が綴られていきますが、この本は数人の主人公がその場面になると主観的に描かれるところです。主人公がコロコロ変わるので初めは感情移入しづらく読みづらかったのですが、読んでいるうちにその人の個性を深く知ることができ、人によってこんなにも感情というのは変わるのだなぁと思えました。そして深みにハマっていく。そんな本でした。

それと天才ピアニストと呼ばれる人達の共通して持っている才能はとにかく耳が良いことみたいです。そういえば、実在する盲目のピアニスト辻井伸行氏も楽譜が見えなくても耳だけで音を覚えるらしいです。そのことを思い出しました。この本は音がページから溢れてくるような本です。

人工知能と経済の未来

最近、人工知能(AI)の技術が発達し、10年後に無くなる職業などがインターネットなどでも話題になっていますね。そこで新年早々未来を少し覗いてみようと思い、こちらの本を読みました。

すでに10年後には私の仕事に関係のある会計入力業務などは仕事がなくなると言われていますが、この本は2030年の予測、つまり、12年後の予測をしています。私の予想では、この仕事は残ってこの仕事は無くなるみたいな内容だと思っていましたが、全く違うことが書いてありました。この本によると人間がやっている殆どの仕事9割位が無くなるそうです。人間に残る仕事は新しい技術の研究や新商品を開発するようなクリエイティブな仕事。マネージメントやホスピタリィに関わる仕事も残される可能性があるそうです。

第四次産業革命は、生産活動が純粋に機械化され、労働の必要がなくなりAIやロボットなどの機械のみが直接的な生産活動を担うそうです。これは2030年ころから進展し、2045年くらいにはおよその純粋機械化経済の形を作り上げるようになるそうです。この本を読む前は税理士業はそもそも存続するのかどうかが気になっていましたが、この本に書かれていることはそんなレベルの話ではなく、殆どの仕事が無くなると予言しているのですから本当にびっくりしました。

9割の仕事がなくなった場合の収入源はどうなるのか?クーポン型市場社会主義の可能性があると言っています。今の生活保護のようにある基準を満たした場合のみ国庫から金銭が配布されるのではなく、1人に定額の金品、例えばはじめに政府がすべての成年市民に一定数のクーポンなりバウチャーなりを配布してそれを正規の通貨ではなくクーポンで価格表示されている企業の株式の購入に用います。そこから配当をもらい生活するというもの・・・つまり、全国民がどこかのロボット企業の株を得ることになります。つまり資本家を撲滅させるのではなく国民全員が強制的に資本家(株主)になり資本家をやめることはできず、死亡時にクーポン株式は国庫に返還されるというもの。

想像以上にインパクトのある内容でした。そうすると、私の仕事も短くて12年、長くても27年ですね。生涯現役を目指している私としては、あと12年というと短いような気がしますが、産業は50年くらいで歴史的にも変化しているので仕方ないといえば仕方ないですね。

陸王

今テレビでも放映されているご存じ「陸王」です。埼玉県行田市の老舗の4代目足袋屋が、業績先細りの業界で新たな業界に参入しようと画策します。それは、足袋の良い点を生かしたランニングシューズ。名前も陸王です。人間本来の走り方に着目し、フィット感であったり、軽さであったり、足袋の良さを生かして、怪我の少ない走り方を助けるシューズです。

最近のシューズは踵が少し高くなっているものが多く、そうすると着地するときどうしても踵から着地してしまいます。踵から着地すると膝や関節や筋肉に負担になり怪我が多くなるそうです。人間の本来の走り方はミッドフィット着地、つまり踵からではなく足裏全体で着地して走ること。それを助けるシューズの開発です。その辺の記述がテレビより小説の方がより細かく書かれています。

小説が映画やドラマになることって多いですよね。小説→映画(ドラマ)、映画(ドラマ)→小説 という順番で見ることはよくありましたが、今回は同時進行で読んでみたので、小説とドラマの相乗効果が得られて、より楽しむことができました。細かい描写などは小説には敵いませんが、ドラマや映画には視覚からの情報や効果音など五感からの情報をより楽しめます。こうやって同時進行で楽しむというのもより楽しむ方法だと思います。

結局すぐやる人がすべてを手に入れる

行動力がいかに大事かを説いた本です。何かを実行しようとしても思っているだけで実行しないといつまでもモヤモヤすることってありますよね。私も本格的に独立するとき、今までの場所の居心地の良さに本当に完全独立して良いのだろうか?こんなに居心地の良い空間を捨ててまで完全独立すべきだろうか?と悩みましたが、結局行動するまで、つまり、完全独立するまでモヤモヤは続きました。不安は沢山ありましたが、今ではあの不安な気持ちは何だったのだろうと思うくらい完全独立して良かったと思っています。

この本にもこんなことが書いてありました。「考えるだけで行動しないと不安が生じます。」「行動し、自分と環境を変えていくと、すでに不安となっていた状況が変わります。新しい自分と環境においては、新しい課題が現れるので、元の不安は解消されます。新しい課題に対して、行動をしていけば、不安に陥って悩むこともありません。不安の解消には、行動することが一番なのです。」全くその通りだと思いました。大学院で行動力は重要だと教わりましたが、この本を読んでそのことは確信へと変わりました。何かに悩んでいる方はとりあえず、考えすぎず行動することをお勧めします。

羊と鋼の森

ご存じ本屋大賞で大賞を取った作品です。羊と鋼?そして森?謎だらけの題名でしたが、これはピアノの事です。羊の毛からできたフェルトのハンマーで、鋼である弦により音を鳴らすと森の中にいるようなメロディーを奏でることができます。

主人公である少年が高校生の時に体育館にあるピアノの調律をしている場面に出くわし、その森の中にいるような感覚にさせられる音に魅せられて、調律師になりたい。と思います。そこで実際に調律をしていた調律師に弟子入りさせてくれと頼んだところ、調律の専門学校に行くように諭され専門学校に行き、あこがれの調律師がいる会社に入社します。

それぞれ個性のある先輩達に支えられながら調律師として成長していく少年の生き方みたいなものが描かれています。本文の中に彼の覚悟のような文章が書かれています。
僕には才能がない。そう言ってしまうのは、いっそ楽だった。でも、調律師に必要なのは、才能じゃない。少なくとも、今の段階で必要なのは、才能じゃない。そう思う事で自分を励ましてきた。才能という言葉で紛らわせてはいけない。あきらめる口実に使うわけにはいかない。経験や、訓練や、努力や、知恵、機転、根気、そして情熱。才能が足りないなら、そういうもので置き換えよう。もしも、いつか、どうしても置き換えられないものがあると気づいたら、そのときにあきらめればいいではないか。怖いけど。自分の才能のなさを認めるのは、きっととても怖いけど。

そんな彼に先輩が答えます「才能っていうのはさ、ものすごく好きだっていう気持ちなんじゃないか。どんなことがあっても、そこから離れない執念とか、闘志とか、そういうものと似ている何か。俺はそう思うことにしてるよ」

私から言わせれば少年はとても才能があると思います。何故なら高校の体育館で調律を行っていた調律師は世界的にも有名なピアノの奏者に調律の指名を受けるほどの名手です。その音を何の情報も得ずに聞き分けられていたのですから・・・でも少年の自信のなさ、立派な調律師になりたい。という夢は少年をひたむきに努力する行動へ駆り立てました。きっと将来、有能な調律師になるでしょう。とても読み終わった後に余韻が残る本でした。メロディーの描き方も見事で読んでいるのに頭の中に音とイメージがはっきりわかる素敵な本でした。