インボイス制度注意点その3

前回(2023年5月2日のブログ参照)インボイス制度注意点その2で請求書作成の際の端数処理の仕方についてお話しました。今回自己システムを利用している消費税原則課税の顧問先から質問が着て、ハッとしたことがございます。前回の添付資料をご覧ください。請求書を発行する側は、8%と10%に分けた合計額に消費税を加算するやり方で請求書を発行することは前回述べた通りです。でも請求書を受け取る側はどう会計処理をするのでしょうか?

例えば添付書類を例に取ると、同じ10%消費税に花と肥料があります。花が交際費で肥料が雑費の場合、どういった会計処理をするのか?この場合、交際費(税込)4,827円(消費税438円)と雑費(税込)26,145円(消費税2,376円)と仕訳するしかないと思います。この仕訳の消費税の合計額は、インボイス請求書の消費税の合計額2,815円と1円の差が出てしまいます。インボイスはそもそも売り手と買い手の消費税額の一致を目指しているはずなのに勘定科目が違うと別に入力しなければならず、結局一致しなくなります。

その顧問先の優秀な経理担当者が国税庁に聞いても、ソフト会社に聞いてもその点ははっきりしない回答だったそうです。ソフト会社はどちらでも良いと答えたそうです。なんじゃそりゃ!だから紙でのインボイスは無理があるのです。ちゃんとやりたくてもちゃんと出来なくなっています。結局手作業のインボイスはどこかで不都合が生じます。デジタルインボイスに移行するしかないのではないでしょうか。

インボイス制度注意点その2

インボイス制度が始まるに当たって早めに解決すべき注意点として下記が挙げられます。パソコン作成や手書きの請求書を出すところなら早急に対応できますが、スーパーなどのシステムを使っている場合は、改修等も必要になってくることから早めに対策する必要があります。下部の添付資料をご覧ください↓
インボイス端数処理
今現在は区分記載請求書方式なので、添付資料の左側のようなシステムを使っている事業者も多いと思います。これは個体の取引ごとに消費税の端数処理をして、その合算額が一番下の合計額に反映されています。ところがインボイス請求書ですと、添付資料の右側のように個体の取引ごとではなく、税率別に合算して端数処理します。ですから個別で端数処理する(左側)のと合計額で端数処理する(右側)では自ずと消費税額が違ってきます。

スーパーなどでは左側のシステムが多いと聞いたことがあります。自社のシステムを確認し早急に対応しなければなりません。インボイスをする事によって事務作業が増えるのは情報社会にとって時代に逆行しています。税理士業界では未だインボイス制度そのものに反対する税理士も多いですが、デジタル化は国際的にみても避けられないので、もっと税理士が積極的にこの制度に関わり使いやすいデジタルインボイス制度にしていくしかないと思います。インボイスといい、電子帳簿保存法といい、中途半端なデジタル化がかえって現場を混乱させて事務手数を増やしているという現実に向き合う必要があると思うのです。

インボイス制度注意点その1

とうとうインボイス制度開始まで半年となりました。インボイスを発行できる事業者を適格請求書発行事業者といいますが、10月1日スタートで開始するためには当初R5.3.31までに申し込みすれば良いとのことですが、税制改正によりR5.9.30までということで期限延長になりました。そこで迷っていた事業者様はもう少し考えられるということでホッとしていた事と思います。でも注意点があります。

2月末時点での適格請求書発行事業者は240万件でこれは消費税課税事業者の75%に当たります。適格請求書発行事業者になるか否かで迷うのは免税事業者か消費税課税事業者でも売上が1,000万円を前後して課税になったり免税になったりする事業者様だと思われます。9月まで延びたから安心と考えるのは安易で、今、適格請求書発行事業者の登録番号が与えられる登録通知書の発行に約3ヶ月かかっています。

法人の場合、法人番号にTが付くだけなので登録通知書が届かなくても登録番号は把握できますが、個人事業の場合はマイナンバーと違う登録番号が別に与えられます。従って3ヶ月もかかるのでしたら遅くとも6月くらいまでには申請をしていないと10月1日の請求書に登録番号を付すことができなくなります。ですから個人事業者の場合は特に前倒しで検討することが必要です。

総則6項

相続税の申告は基本的に相続税評価額をもって金額を算定します。でも財産評価基本通達の総則の第6項(いわゆる総則6項)というものもあって、これは取扱通達(法律ではありません)ですが、「相続税評価額で評価することが著しく不適当である場合には、国税庁長官の指示を受けて評価する」というものです。総則6項は伝家の宝刀の規定なのです。

タワーマンション節税対策で有名になりました判例があります。2008年当時90歳だった被相続人が信託銀行に相談して相続対策として2棟のマンションを14億円で購入して信託銀行から10億円借りました。このマンションの相続税評価額は2棟で3億円、つまり、相続税の課税価格は3億円なのに債務控除が14億円できるという節税対策を信託銀行がやったのです。それをこの評価は適当ではないとして3億円の追徴課税を行なったというのが流れです。

この判例は信託銀行が作成した稟議書に相続税対策のためと書かれていたり、節税対策だけのためにやっているというのが明らかだったため負けましたが、全てのタワーマンションでこんなことが行われるわけではありません。通達によって評価するのが著しく不適当かどうかというのは書くのは簡単ですが、判断はとても難しいです。課税の公平性を著しく害することが明らかなどの特別な事情が必要だとされていて、今回の争点となりました。つまり税逃れの意図が強く出る行き過ぎた節税対策が危険だということになります。

私がこの申告をする税理士だとしたらどうしたかというと、やはり相続税基本通達の3億円で評価していたと思います。行き過ぎた節税だと思っても自ら14億円では評価しないです。税理士は皆そうだと思います。ですから総則6項は税理士泣かせの規定でもあります。伝家の宝刀が行き過ぎないように私たち税理士も行き過ぎ総則6項には、反論しなければなりませんし、節税だけの金融機関のアドバイスにも厳しい目を向けなければなりません。

ふるさと納税って税金かかる?

先日顧客から問い合わせが着ました。「ふるさと納税ってやり過ぎると税金がかかるって聞いたのだけれど・・・」という質問です。50万円以上だと一時所得がかかるとか。その方は80万円位ふるさと納税をやっていたので焦っていました。寄付をした金額が50万円以上ではなく、返礼品(貰ったもの)が50万円以上です。貰ったものって物なのでいくらなのかよく分かりません。そのような時どうしたら良いかです。

ふるさと納税の返礼品は寄付した金額の30%までと制度で決まっています。地方自治体から見ると10,000円の寄附をもらったら3,000円までの返礼品しか送ることができません。ですから、寄付した金額の30%が貰った金額として試算すると良いと思います。これを逆算する166万円位までの寄附ならギリギリいけそうです。でも注意しなければならないことがあります。これは一時所得がふるさと納税だけだった場合です。

一時所得はふるさと納税だけではないので、それを合わせて50万円以下にする必要があります。大きな金額として影響してくるのは保険の解約返戻金です。保険の解約返戻金は一時所得になるので大きな保険を解約すると単体でも税金がかかるケースが多いです。ですから保険を解約する年は特に注意しなければなりません。その他としては、細かいですが、全国旅行支援も得した分の金額は一時所得です。イベント割で割引かれた金額も一時所得。最近の事例としてはマイナンバーカードに保険証や銀行口座を紐づけると貰えるマイナカードのポイント分も一時所得です。住まい給付金や地域振興券も一時所得です。こう見ると一時所得はふるさと納税だけではなく色々該当するのが分かります。

なお、一時所得ではなく非課税なものもあります。失業保険や生活保護手当、児童手当、被災者生活再建支援金、臨時福祉給付金、子育て世帯臨時特例給付金、年金生活者等支援臨時福祉給付金、東京都認証保育所の保育料助成金などは非課税です。生活困窮者や生活支援にかかるものは非課税ですが、その他に得してしまったものは一時所得となる可能性が高いので、そのようなものと合わせて50万円を超えないようにしなければ追徴課税の可能性が出てきます。ご用心を・・・

税金をPayPayで納付できるようになります

税金の納付の仕方は銀行の窓口や税務署の窓口で直接行うか。口座振替手続きを行うのが主流でした。クレジットカード納付も何年か前にできましたが、クレジット手数料がかかるということで浸透はしていません。令和4年12月1日より国税納付がスマホアプリ納付できるようになりました。決済できるスマホアプリは次の6つです。①PayPay ②d払い ③auPAY ④LINEPay ⑤メルペイ ⑥AmazonPay

注意点としては一度の納付の限度額が30万円以下であることです。それと領収書は発行されません。手続きは、国税庁サイトから「スマホアプリ納付の手続」ページに表示されている「国税スマートフォン決済専用サイト」からアクセスして手続きします。e-taxを利用している場合はメッセージボックスに格納される受信通知からアクセスします。スマホアプリ納付手続き(国税庁)

クレジットカード払いと違って決済手数料が不要な点、口座振替手続きと違って事前の手続きが不要な点、などから今後普及するのではないでしょうか?領収書が発行されない点が唯一の問題かもしれません。令和5年4月1日から給与もデジタル払い(〇〇ペイで支払)が出来るようになります。これは急激には進まないと予測されますが、今後どんな世の中になるのでしょうか?デジタル化の波が押し寄せています。

ポイント値引きと消費税

ポイント制度を利用する店舗は多く、ECサイトビジネスなどでもポイント制度を利用する業者が多くなっています。一部ポイントを利用して支払った場合、消費税の扱いはどうなるのでしょうか?ポイントを値引きとしているか。ポイントを現金等価物と捉えるかによって経理のやり方が違います。

例を見てください。左は値引きとしている場合ですが、この場合、消耗品費(お茶)530円(8%)と事務用品費(文房具)539円(10%)/現金 1,069円となります。次にポイントを現金等価物として扱っている場合は、消耗品費(お茶)540円(8%)と事務用品費(文房具)550円/現金 1,069円と雑収入(消費税不課税取引)21円となります。

面倒なのは、購入先によってどちらの方法を採用しているのか見なければならない点です。購入側がつまり経理担当者が1件1件確認しなければならず、例示のようにレシートを貰える場合はまだ良いですが、ECサイトなどで購入した場合、それを判断するのが大変な事例もあるかと思います。来年10月からインボイス制度が始まりますが、ますます面倒になると思います。

事例は購入側の処理ですが、売上側はもっと重大な問題を抱えています。この場合、値引きと捉える場合と現金等価物と捉える場合では、預かり消費税が変わってきます。同じような取引なのに経理処理の仕方で消費税が変わるというのはどうなんでしょう?と思います。システム的にも消費税が安くなる値引きタイプを構築する方が難しいかと思います。そうするとシステム構築にお金をかけられる企業は消費税が安くなって、値引きタイプのシステムを構築できない企業は消費税が高くなります。課税の公平の見地からもそんな税制で良いのか?と思います。電子化=簡単で便利になると良いのですが、電子化=面倒な作業が増えるというのでは電子化も進まないし、時代に逆行しているような気がします。

Web-TAX-TV

何と国税庁が面白い動画を発信しています。それが「Web-TAX-TV」です。年末調整の仕方とか確定申告の仕方とか一般の人に役に立つ動画もありますが、その中でも国税庁の取組紹介の動画が面白いです。「国際的租税回避行為への対応」とか「外国財産を追いかけろ」とかドラマ仕立てになっていて、かつ20分程度にまとめられているので見やすいです。時間がある時に見てみると良いかと思います。国税庁の取組紹介の動画はこちら⇒
https://www.nta.go.jp/publication/webtaxtv/work.html

雑所得改正2

雑所得改正1(2022年9月6日ブログ参照)でお話しましたが、雑所得改正についてはパブリックコメント(この改正について国民から意見を頂戴する行い)を募集していて私も、単に金額基準だけで判断すべきではない。と意見したところですが、パブコメの意見は全国で7059通もの意見があり、パブコメの意見により通達が変更されました。それがこちらです。→雑所得改正(修正版)修正前が見たければ、雑所得改正1のブログに添付してありますのでご覧ください。また、それが載っている国税庁のHPはこちらです→https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/221007/index.htm

ちょっと感動しました。パブコメによって国税庁もちゃんと修正してくれるんだ!という思いです。要は、最初(パブリックコメント募集前)は特に反証が無い限り300万円を超えない場合には業務に係る雑所得として取り扱って差し支えないという。なんとも金額基準で判断するような書き方でした。私は反証を考えて対抗するつもりでしたが、それでもトラブルが起こりやすい例示だと思っていました。

それがパブコメ後には、取引を記録した帳簿書類の保存がない場合には業務に係る雑所得に該当する。となったのです。これを別な読み方をすると、300万円以下であってもちゃんと取引記録を帳簿書類として保存している場合には事業所得として申告しても良いよということです。事業所得として計上するからにはちゃんと取引記録を帳簿書類として保存しているでしょ。とも読めます。私だけではなく多くの税理士や国民が同じような意見をしていたから反映されたのだと思います。個々の力は微力でもみんなで団結すれば何とかなるものですね。

雑所得改正1

雑所得の改正が行われそうです。「事業所得」と「業務に係る雑所得」は違いが不明瞭だからです。でも税務上の差異ははっきりしていて、事業所得の場合、損益通算ができます。つまり、給与所得がある人が事業所得もあって、事業所得が赤字の場合、給与所得から事業所得の赤字を控除して税金の計算ができます。その他事業所得で青色申告の場合、更に様々な税金特典があります。業務に係る雑所得は令和2年の確定申告から雑所得の区分に新たに加えられた区分で令和元年までの確定申告書には雑所得の区分は①公的年金等と②その他しかありませんでした。それが令和2年から雑所得の区分は①公的年金等②業務③その他になりました。

税法上取扱にかなりの差異がある事業所得と業務に係る雑所得ですが、同じような所得でも事業所得とすれば税務上かなり特になり、業務に係る雑所得とすれば赤字でも損益通算できないという大きな違いがあります。規模も大きくない副業を事業所得として申告して給与所得として損益通算するという事例も多くなってきたようで、改正が行われそうです。改正案の内容は下記の通り→雑所得改正これで問題になるのは、フリマアプリでのプレミアム販売、フリマアプリを使った反復同製品の販売や、給与所得がある人の副業のような事業所得ではないでしょうか。

まず、フリマアプリでの販売は通常家庭にあった不用品の売却が主なものなので購入価格よりかなり低い価格で売買されています。これは問題ないかと思います。ところが買った価格よりもかなり高い価格での販売(いわゆるプレミアム商品)の売買は要注意です。生活に通常必要な資産の譲渡は非課税ですが、その非課税から除外されそうです。また、フリマアプリですが、実際には決まったものをどこからか仕入れて複数販売している事例もあります。これは元々課税対象ですが、実際には申告をしていない人も多いのではないでしょうか。

次に、会社員が副業するのも多くなってきました。節税対策として副業分を事業所得として申告し赤字にして本業の給与所得と損益通算するというのが危険になるということです。ただ、ここでの改正で危険だと思うのが300万円判定です。収入が300万円ないと反証のない限り業務にかかる雑所得と取り扱って差し支えないとあります。そこで300万円以上でないから雑所得にしなければならないと考えるの早計です。年間300万円なくてもそれが副業でなく細々とやっている事業なら事業所得として扱えますし、例え給与所得があったとしても退職後の事業のために会社員時代から起業するのもあり得るからです。ですから単に300万円判定とするのではなく、実情を加味して事業所得として申告することもできるのでその辺は要注意です。今回、改正案について意見を言える機会(パブリックコメント募集)が与えられたので、金額判定(300万円基準)で単に判定するのは断固として反対!の意思を伝えました。