社会保険診療報酬80%基準改正

社会医療法人・特定医療法人は社会保険診療報酬(国保や社保など)が全収入の80%を超えるという要件があります。自費は80%の算定に入れることができませんが、この80%の範囲はその組織が社会医療法人なのか?特定医療法人なのか?によって差異がありました。(詳しくは2017.7.20のブログ「社会医療法人と特定医療法人と認定医療法人」を読んでください。特定医療法人が一番範囲が狭い設定です。

この度平成30年税制改正により、特定医療法人でも、予防接種の収入、助産に係る収入、介護保険の収入でも80%算定の基礎に入れてよいことになりました。これで産婦人科でも特定医療法人になれます。でも、今は認定医療法人というお得な制度が昨年10月から始まっていますので、わざわざ大変な特定医療法人に移行せずに、特定医療法人や社会医療法人よりも移行がスムーズな認定医療法人制度を活用する医療法人が増えそうです。

診療報酬改定H30.4

診療報酬改定は2年に一度あり、介護報酬改定は3年に一度ありますが、平成30年は同時改定の年となります。前回オンライン診療が解禁となった旨はお伝えしたので、それ以外の点をお話します。新設されたものとしては、かかりつけ医機能を有する場合の初診機能の評価です。これは大病院の外来の専門化や診療所の外来・訪問診療を強化するためのものです。そして全診療所を対象にして外来の妊婦加算もあります。

在宅診療としては在宅療養支援診療所以外の一般診療所の役割が重要視され24時間体制や在宅医療ニースへの対応に新評価が加わりました。

また、看取り推進のためにガイドラインを踏まえた評価や、特養入居者への訪問診療・訪問看護の評価を適正化するとともに強化しています。

歯科診療所においては初診料・再診料を引上げ、施設基準を新設し、外来環(歯科外来診療循環体制加算)を算定している場合、平成30年10月1日以後は実質+1点となりますが、新施設基準が見届けの施設においては、点数は大幅に下がることになります。ですから歯科診療所は今から10月までの間に新施設基準を見直し新施設基準を満たす旨の届出書を提出する必要があります。

オンライン診療が保険の対象になります

遠隔医療はこれまでは自費で行われ保険は適用されませんでしたが、平成30年度診療報酬改定で保険対象となりました。ただ、初めからオンラインではなく、初診は対面診療が必要です。医療法20条に無診療治療の禁止が謳われていますが、最低限遵守すべき事項を遵守していればオンライン診療は医療法違反になりません。

生活習慣病等の慢性疾患の定期的な診療は毎月1回診療を受け「何か変わったことはありませんか?特に何もないようなら同じ薬1カ月出しておきますね」の様に1か月分の薬を受け取るのがオーソドックスな診療方法ですが、このような診療は医師及び患者の利便性の向上を図ることから今後はオンライン診療に代替することが望ましいとされています。

オンライン診療はリアルタイムでのコミュニケーションが可能な例えばビデオ通話などの方法で行うことを必要としていますので医療法人側もそれに備えて情報通信機器の整備などをしなければなりません。これらの設備の導入はIT導入補助金の対象となりますので早速検討してみて下さい

詳しい資料はこちらから→オンライン診療の適切な実施に関する指針

医療法改正ホームページが広告規制の対象に

昨年の医療法改正で、いままで広告規制の対象外となっていた医療機関のホームページですが、平成30年6月以降はホームページも広告となり、規制や罰則の対象に加わります。

罰則付きの規制対象としては、比較広告(〇〇がんでは日本有数の実績などや著名人も当院で治療を受けましたなど他と比較してうちは優秀だとアピールする広告)や誇大広告(〇〇学会認定医→活動実績内団体の認定などや比較的安全な手術ですや〇〇手術は効果が高くおすすめですなど)や公序良俗に反する内容の広告、患者の主観による体験談の広告、治療の効果についてのビフォーアフターの写真等の広告などです。これらの内容を見るとちょっとまずいかもというホームページも世の中多いような気がします。

ただし、患者等が適切な医療機関を選ぶために自ら情報を求めて検索等をした結果ホームページやメルマガ(スポンサー広告は除く)や表示された情報について患者等が照会できるよう電話番号やメールアドレスなどの問い合わせ先が明示されている場合などは提供できる情報範囲が広がります。今年6月からの広告規制に備えて今からホームページも見直す準備をする必要がありそうですね。

診療報酬・介護報酬同時改定

診療報酬は2年に1度、介護報酬は3年に1度改定が行われています。平成30年(2018年度)は診療報酬と介護報酬の同時改定になります。

まず、診療報酬ですが、0.55%のプラス改定(医科プラス0.63%、歯科プラス0.69%、調剤プラス0.19%)で薬価等は▲1.65%のマイナス改定(実勢価等改定▲1.36%、薬価制度抜本改革▲0.29%)材料価額は▲0.09%となっています。

次に介護報酬ですが、0.54%のプラス改定となっています。つまり診療報酬は薬価等を含むとマイナス改定で介護報酬はプラス改定です。介護系は多くの事業所が採算が合わなく、または人が集められなくて撤退するのが後を絶ちません。新規事業所も多いですが、撤退事業所も多いのが特徴です。報酬だけてはなく人の問題も大きいですね。

医療法人の事業承継

世間では中小企業も含め事業承継についての問題が多くなっています。55歳以上の経営者にアンケートをとったところ、95.1%以上の人がこの会社(または医療法人)を誰かに承継したいと考えているのに、実際に決まっているのは44%で半分以上は事業を承継する人さえ決まっていないというのが現状です。特に中小企業においてその傾向が高くこのまま放置しておけば日本の企業はどんどんなくなってしまうということで政府も税制が足枷にならないように、様々な事業承継税制を設けています。

実務で使い勝手が悪い部分はどんどん改正し、かなり使いやすくなりました。医療法人についても昨年10月から改正になった新認定医療法人制度は、まさかここまで政府が譲歩しようとは・・・と専門家の間でも話題になりました。そのくらい太っ腹に政府は日本の企業の事業承継を後押ししています。

でもね。それに敏感に反応する経営者はまだまだ少ないのが現状です。私は専門家として定期的にそのような情報を経営者にお伝えしていますが、経営者の方があまり乗り気じゃないというのも多いです。しかも毎回会うたびに言うと社長や理事長に引退を推奨しているのかとも捉えられかねません。私としてはいつまでも納得するまでやってもらっても構わないのです。ただ、何かあった時のために皆が急に慌てないために準備だけしておいて欲しいのです。情報を小出しにしつつそれに興味ありそうな反応が出たら飛びつく作戦を取っていますが、もうそろそろ違う作戦にした方が良いですかね。

地域医療連携推進法人の議決権

地域医療連携推進法人とは、医療連携推進業務を行う事を主たる目的としています。これはグループ間で共同仕入れしたり、連携医療をしたり、ベッド融通もできますし、金融貸し借りもできます。地域医療連携推進法人はこれらの所謂面倒なことを一括して担う法人ですが、法人形態は一般社団法人で設立しなければなりません。

社員になることができるぶら下がり組織は医療法人のほか、公益法人やNPO法人も可能です。ただし、株式会社は配当ができることから介護認定を受けている株式会社であっても社員になることはできません。個人クリニックの開業医などが社員として参加する場合には、クリニックの組織としてではなく個人開業医が個人として社員になります。

通常の医療法人については1人1票の議決権ですが、地域医療連携推進法人は社員1人1票でなくても構いません。ただし、不当に差別的な取り扱いでないことが必要で、定款にその差異を定める必要があります。定款に定めるときは医療審議会の審議となりますので、そこで差別的な取り扱いがされていないか審議されます。基本的に提供した金銭に応じて異なる取扱いをしたりするのはダメであくまでも収入規模や組織運営上の活動による差異である必要があります。

人口に対する過密状態

厚生労働省が「平成28年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」を発表しました。それによると、人口10万人に対して診療所施設数の多い県ベスト3は、1位和歌山県(人口10万人に対し110.7)、2位島根県(同105.1)、3位長崎県(同101.6)です。施設数の少ない県ベスト3は、1位埼玉県(人口10万人に対し58.0)、2位茨城県(同59.0)、3位千葉県(同60.6)です。過密度が多い県は診療所が多くなったというより、人口が少なくなったので人口割合として多くなったこともあると思われます。

上記は一般診療所の例ですが、歯科診療所になると様子が違ってきます。歯科診療所施設数の多い県ベスト3は、1位東京都(人口10万人に対し78.2)、2位大阪府(同62.9)、3位福岡県(同60.6)で少ない県ベスト3は、1位福井県(人口10万人に対し37.3)、2位滋賀県(同39.5)、3位島根県(同39.6)です。一般診療所と歯科診療所ですと、かなり内訳が変わってきますね。

新・認定医療法人制度がスタートしました

持分の定めのある社団医療法人が持分の定めのない医療法人に移行する際にみなし贈与(贈与税)が課税されない制度(認定医療法人制度)が10月1日からスタートしました。気になる要件ですが、社員総会の議決があり、移行計画が有効かつ適正であること、そして移行計画期間が3年以内であることの他に以下が追加となりました。

〇法人関係者に利益を供与しないこと(特別な利益供与の禁止)
〇役員報酬について不当に高額にならないように定めていること(定めているだけでなく実施すること)
〇社会保険診療報酬に係る収入が全体の80%以上(一定の予防接種にかかる収入も含みます)

そして移行後これらの条件を6年間満たし続ける事です。特定医療法人や社会医療法人の要件である役員・理事の同族1/3以下というのはないので実行しやすくなったことは確かです。

医療整備課

私はたまに東京都医療整備課にお伺いします。東京都庁は以前はフリーで入れましたが、舛添知事の問題があったころに入り口に金属探知機のようなゲートができました。今回はそのゲートはありませんでしたが、上階に行く場合、エレベータの前に警備員が何人もいて入館書を記載しなければなりませんでした。本人の名前、所属先、どこに用があるかなど記載したように記憶しています。それを警備員に渡すと写真の一時通行証を渡されあのエレベータに乗ってくださいと言われます。小池知事になってからでしょうか?都庁もセキュリティに厳しくなってきました。